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2025-08-12

【陸上】広島インターハイ・4×400mRで9年前を彷彿とさせる名勝負 ”リレーの相洋”が従来の高校記録を更新して2位「来年こそ1位を」

4×400mRで従来の高校記録を更新しながらも2位に入り、3年連続で銀メダルを獲得した相洋高(写真/黒崎雅久)

7月25日から5日間、広島広域公園陸上競技場で行われたインターハイ。最終種目の男子4×400mリレーは、洛南高(京都)が3分07秒25の高校新記録で優勝。2位の相洋高(神奈川)も3分07秒40と、従来の高校記録(3分07秒81)を上回る高速レースとなった。

3年連続の銀メダル

3組に分かれて行われたタイムレース決勝で、2組目には洛南高、相洋高ら有力校がそろっていた。相洋高の銭谷満先生は、「前半で遅れては勝負にならない」と、好調の安川潤也(3年)を1走に起用。インターハイ路線では1走の経験しかなかった梶瑛太(2年)を、あえて3走に投入した。

序盤は指揮官の狙いどおりだった。「絶対に上位で渡そうと思っていました」と話す1走の安川が、トップで2走の田島連(3年)へ。田島にすれば、100m3位の安川飛翔(洛南高3年)が前半から飛ばすことは想定内。400m専門の走者らしく、「付いて行って、ラストで出よう」と懸命に食らいついた。「抜け出せなかったのは自分の弱さ」と、先行することはできなかったが、ほぼ並んで3走の梶につないだ。

梶は400m46秒96を持つ洛南高の渡辺敦紀(3年)に離されたものの、3~4mの差でアンカーの村上祥太郎(3年)へ。村上は3位に入賞した110mHの後、リレーの招集に向かうまで30分程度しかなかったが、疲労を感じさせない力走。「バックストレートでもう少し差を縮めていれば」と悔やんだが、終盤には1年生ながら400mHを制した洛南高の後藤大樹を、0秒15差まで追い込んだ。

相洋高は同種目で5度の優勝経験がある女子に対し、男子は優勝したことがない。
「0.15秒か。記録を出しても、勝てないときは勝てませんね」――銭谷先生はため息をついた。インターハイの歴史を紡ぐ縁は、ときに残酷だ。2016年の岡山では、当時高校歴代3位の3分08秒91で走りながら、洛南高に0秒34差の2位にとどまった。インターハイ史に刻まれる名勝負から9年が経ち、同じ相手に、同じようにハイレベルな記録でも優勝に届かず。2位校の歴代最高タイムが、岡山での相洋高の3分08秒91から、今大会の相洋高の3分07秒40に塗り替えられる形となった。

洛南高は相洋高との勝負を見据え、エースの渡辺を3走に置く作戦に出た。銭谷先生は意表を突かれたそうだが、「(今回の結果は)梶のおかげですよ」と、粘り強くバトンをつないだ2年生をたたえた。大願成就とはならず、選手たちは肩を落としたが、中学時代に個人種目で全国入賞の経験がない4人が見せた魂の継走、そして3年連続の銀メダルは“リレーの相洋”の真骨頂である。村上が「銭谷先生には感謝しかありません。後輩たちには1番を目標に、高い意識を持ってほしい」と言えば、チームを引き継ぐ梶は、「来年こそ1位を取りたい」と拳を握りしめた。

文/石井安里 写真/黒崎雅久

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