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2025-09-05

真壁刀義が別角度から語った“プロレスラー”ウルフアロン成功の可能性【週刊プロレス】

「G1クライマックス」中の7月25日、ABCラジオ「兵動大樹のほわ~っとエエ感じ」に出演した真壁刀義

1・4東京ドームで棚橋弘至が引退するのと入れ替わりにデビューするのが東京五輪柔道金メダリストのウルフアロン。

過去に東京ドームでプロレスデビューを果たしたのは北尾光司、鈴木健三(現KENSO)、小川直也といるが、メインイベントだったのは同じ柔道(世界選手権金メダリスト)から転向した小川直也のみ。またデビュー戦がメインイベントだったビッグネームは、力道山、木村政彦を除けば、元横綱の輪島大士しかいない。

ただ、残念ながら前述した“東京ドームデビュー組”3選手がプロレス界で大成功したとは言い難い。日本人として初の五輪金メダリストからの転向組となるウルフアロンがプロレス界でも成功するのか注目されるが、先輩にあたる真壁刀義はリング上と異なる別角度から成功の可能性について語った。(文中敬称略)


「G1クライマックス」開催中の7月25日、真壁刀義はABCラジオ「兵動大樹のほわ~っとエエ感じ」に出演した。その際、ウルフアロンに関して尋ねたところ「純粋にお手並み拝見」と答えた。そして、直接、練習は見ていないといいながら、「彼がどのようなつもりで新日本に入ってきたのか。どこまで狙ってるのか。プロレス界に入って、どこまで夢を見てるのか。まずはそれを感じたい」と続けた。

その一方で、入団発表から半年余りでデビュー戦を迎える点に関して、「時間が短すぎるんじゃないかって気がするね。みっちり教えてあげないとかわいそう。自分の首を絞めることになりかねない。注目度も高いし、周りの期待も大きいだけにね」とも語った。

ほかのスポーツで大きな実績を残して20代後半でプロレスに転向したといえば、元小結の安田忠夫が思い起こされる。安田の場合は私生活に問題があったが、逆にそれがプロレスで成功しなければいけないとの思いにつながり、練習だけでなく雑用も含めて新弟子と同じメニューをこなした。

「安田さんねえ……俺的はいい選手だと思いましたけどねえ。色もあったし。あの当時、新日本にああいうタイプの選手はいなかったですしね。寝たら(グラウンドになったら)ダメですけど、立ってたら最強ですよ。ただ相撲の闘い方は知ってましたけど、総合(格闘技)の闘い方は知らなかった。ただ、総合の練習も始めて。今の総合のレベルだとダメかもしれないですけど、あの当時だとかなりいいものありましたよね。ただでさえ相撲取りを倒すことは難しいのに、タックルを切る技術を覚えたら鬼に金棒ですよ。それに体重も140キロぐらいありましたから。相撲取りだといってもあんこ型じゃなく、割と均整の取れた体に近かったですからね。じゃないとジェロム・レ・バンナに勝てないですよ。頑丈でしたから、多少のパンチを受けても前に出てましたし。殴っても蹴っても前に出てこられたら怖いですよ」とウルフアロンに重ね合わせようとした。

ウルフアロンの入団を一番意識しているのは新世代と呼ばれる選手たち(辻陽太、海野翔太、上村優也、大岩陵平、成田蓮)だろう。それぞれが次世代のトップは自分だと主張してライバル闘争を繰り広げている中で、実力や実績、さらに知名度も十分なウルフアロンが割り込んできただけに意識しない方がおかしい。

実は真壁自身も、同じような境遇に追い込まれている。1996年4月、新日本プロレスに入門したところ、同期でレスリングで五輪出場まであと一歩のところまでいったとんでもない存在、藤田和之がいた。当時を振り返り、「率直にこの人に追いつくしかない、頑張るしかない、それしか思わなかった。試合では毎日、ボロ雑巾のようになって。それでもあきらめなかったし、ふざけんじゃねえって思って口もきかなかった」ほど意識していた。

そんな関係だったが、ある日を境にどちらからともなく「メシ行ませんか?」と言うようになり、距離が一気に縮まった。それでも「勝負は別。先輩からの当たりは相変わらず強かったですし、やるしかないって思ってました」。人間扱いされていないといってもいいほどで、「もう1回あの人生を歩んでみろと言われたら、絶対にイヤです」と言うほどだった。

「“なんでだろう?”って思い続けながらも努力し続けたら、なんかの機会で変わる。でも努力しないでグタグタ思ってても、何も変わらない。努力してたら、なんかのタイミングで変わる。そのタイミングをつかめるかどうか。残酷といえば残酷ですけどね」 

デビュー前に公開練習も設けられるだろうし、巡業にも帯同するだろう。新世代とウルフアロンがどのような関係となるのか。真壁は「ウルフアロンの売り方にもよるが、追う方より追われる方が怖い。追う方の気持ちがウルフアロンにあれば成功すると思うし、成功しないとなればそこが彼に欠損してるんじゃなかと思う」と語った。

新世代勢はこれまでウルフアロンに関してほぼ口を閉ざしている一方、「メチャメチャ意識してます」と漏らしたのがボルチン・オレッグ。レスリング世界選手権5位の実績を残してプロレス転向。柔道とレスリング、競技は異なるものの、ともに世界を舞台に活躍した強豪。両者の出世争いも興味深い。

橋爪哲也

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