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2025-09-16

【相撲編集部が選ぶ秋場所3日目の一番】琴櫻、安青錦は起こせず土。全勝横綱・大関の一角崩れる

安青錦は前傾姿勢を崩すことなく、大関琴櫻を押し出し。今場所好調を思わせた琴櫻は、3日目に土がつくこととなった

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安青錦(押し出し)琴櫻

きのう、このコラムで書いた波乱の予感は、ある程度当たったようだ。3日目は、上位陣が下位の力士を相手に一つ、二つと星を落とし、無傷で来ていた横綱・大関も、その一角が崩れることになった。
 
まず、関脇若隆景が、元気な玉鷲の右からのイナシに崩され、あっけなく押し出されて大関取りへ厳しい2敗目。さらに大関琴櫻が、新小結の安青錦に押し出されて今場所初めての黒星を喫した。
 
琴櫻と安青錦の対戦は、ここまで連勝で来ている琴櫻がどこまで復調しているのかを見るには格好の取組だと言えた。先場所は安青錦に食いつかれ、内無双でヒザをつく形になった琴櫻だが、今場所は初日に久びさに前への圧力を感じさせる相撲で阿炎を押し出しているだけに、安青錦を起こせるだけの圧力が見せられるかどうかが注目された。
 
立ち合い、琴櫻の左足の踏み込みは悪くはなかった。が、差しにいった右は、低く立ってきた安青錦の左おっつけではね返された。左は、突いてきた安青錦の右をあてがうような形になったがあまり効かず。右から少し突き返したが、結果としては、むしろ安青錦のノド輪気味の突きに、自分のほうが上体が立つ形になってしまった。
 
安青錦は、おそらく左でおっつけ、右で突くという形をイメージしてきたのだろう。二度、三度とこの形で大関に圧力を掛ける。

琴櫻はたまらず引き。こうなると、もう今場所見せていた“好調琴櫻”ではなく、先場所までに近い姿。安青錦は前傾姿勢を崩すことなく、大関のおなかのあたりを押して、向正面に押し出した。

「(廻しを)取ってもそこから残り腰があるし、力も強いので、下から下から止まらないように、ということを意識した」と安青錦。まさにイメージどおりの相撲だったであろう。

これで安青錦は琴櫻との対戦成績も2勝1敗と勝ち越し。「大関に勝って自信になったか」と問われ、「(土俵に)上がる前から自信を持っている。そうじゃないと勝てないんで」と、上位相手にも全く気後れはない様子。さらに「対戦相手に研究されていると思うか」の問いにも「研究されるのは当たり前。その中で強いところを出さないと」と、何とも頼もしい答えだ。豊昇龍との対戦はまだ先になるが、先場所に続いてここを食うことができれば、一気に優勝候補の一角に浮上してくる。
 
土がついた琴櫻は「切り替えます」と一言。何とか、この負けで先場所までの琴櫻に戻ってしまうことなく、初日の好感触を信じてまた立て直してほしいところ。まだまだ、1差で両横綱にピッタリついていければチャンスは十分ある。
 
3日目を終わり、全勝は大の里、豊昇龍の両横綱と関脇霧島、平幕の宇良、竜電の5人となった。そのほか、三役では大関琴櫻、小結安青錦が1敗につけている。
 
さて、果たして優勝争いは両横綱のマッチレースに収れんしていくのか、それとも霧島、琴櫻、安青錦あたりが食いついて混戦になるのか。大関取りを狙う若隆景がどう立て直してくるかとともに、場所の様相がはっきりしてくるまでには、まだ数日を要しそうだ。

文=藤本泰祐

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