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2025-09-17

【アメフト】オフェンスに1年生が7人“ヤング立教”躍動「みんなで楽しんでプレーできています」

勝負所でナイスランが光った、鎌倉学園出身のRB阿曾奏人は試合後に胸を張った=撮影:北川直樹

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 アメリカンフットボールの関東大学1部TOP8第2節、立教大学と明治大学の一戦は立教大が24-18で明治大を下し、今季初勝利を挙げた。スターティングオフェンス12人(オフェンス11人+キッカー1人)中7人を1年生、3人を2年生が占める異例の若さで臨んだ“ヤング立教”。QB中川龍之介(立教新座)がパス19回中15回成功で78.9%、239yd、3TD獲得と抜群のパス攻撃を見せ、RB阿曾奏人(鎌倉学園)は14回61ydの好走で、チームを勝利に導いた。ときおり雨が降る中での乱戦を制し、下級生主体の立教が結束力を見せつけた。【写真/文:北川直樹】


1年生QBが序盤から見せた落ち着き

 立教はキックオフリターンから自陣32ydで攻撃開始。中川がWR小寺成への連続パスで相手陣深くに進出し、ゴール前でWR小寺成へのTDパスを成功させて7点を先制した。

 明治も即座に反撃。RB高橋周平(4年=足立学園)が42ydのビッグゲインでハーフラインを越えると、最後は高橋自身がTDランを決めた。しかしPAT失敗により6点に留まり、立教が7-6の1点リードでで第1クオーター(Q)を終えた。

 第2Q、立教は35ydFGで10-6とリードを広げる。すると明治も43ydのFGを成功させ、10-9と1点差に迫った。前半終了間際、明治がRB高橋のランで15-10と逆転したが、ここで中川が真価を発揮した。

 残り43秒、中川はWR平本清耀(2年=佼成学園)への27ydパスを成功させ、ゴール前5ydからの攻撃でWR小林蹴人(1年=佼成学園)へのTDパスを決めて再逆転。17-15で前半を終えた。
約8割のパス成功率で、圧巻のパフォーマンスを見せた立教大QB中川=撮影:北川直樹

流れを決めた第3QのTDパス


 後半開始直後、明治のロングパスを、WRに並走する形でカバーしていた1年生DB平田夢虎(立教新座)がインターセプト。すると、中川は直後のプレーでWR小寺成への64ydTDパスを成功させ、24-15と9点差に広げた。この一撃が試合を決定づけた。小寺は試合を通じて6レシーブ68ydと安定した働きを見せたが、特に前半の先制TD、そして後半最初のこの決定的な64ydTDと、勝負の分かれ目で確実にボールをキャッチする集中力を発揮した。

 第4Q開始直後、明治が28ydFGで24-18と6点差に詰め寄ったが、立教は終盤の重要な場面でRBに阿曾を起用。残り2分を切った敵陣43yd、2ndダウン3の場面で阿曾が18ydのランを決めて敵陣25ydまで進みダウンを更新。この決定的なランで明治に反撃の時間を与えず、そのまま時間を消費して24-18で立教が勝利した。

 試合の序盤から、中川のパス精度は目を見張るものがあった。右腕から放たれるパスは伸びがあり、WRが走り込むポイントに正確に落とすことができる。関東TOP8レベルの守備を相手に、これほど精度の高いロングパスを決められるQBは多くない。今季初戦の東京大学戦(延長タイブレークで敗戦)では途中で負傷退場してしまい、流れに乗り切れなかった中川だったが、この日は万全のコンディションで臨み、結果につなげた。

高校未経験のWR小寺はチームリーダーとなる大活躍で勝利を支えた=撮影:北川直樹

異例中の異例、下級生主体オフェンス

 今回の立教オフェンスで注目すべきは、スターティングメンバーのうち1年生が7人、2年生が3人を占め、キッカーを含めた12人のうち、実に10人が下級生という構成だったことだ。

 OL藤井祥(佼成学園)、青北晋弥(箕面自由)がOLとしてフロントを支え、TE竹山正剛(鎌倉学園)、WR小林蹴人(佼成学園)がパスターゲットとして機能。そしてQB中川、RB阿曾奏人(1年、鎌倉学園)がバックフィールドを担い、K秋山琢飛(1年、立教新座)もキッカーとしてスタメンリスト入りを果たした。

そして2年生は、OL川崎純大(佼成学園)、WR小寺成(立教池袋)、WR平本清耀(佼成学園)らが中核を担った。

 関東大学TOP8で、スタメンのうち10人が下級生という構成は極めて異例だ。しかし立教の若い選手たちはその重責に臆することなく躍動し、見事チームを勝利に導いた。

 試合後、中川は1年生主体のチーム構成についてこう語った。「1年生が多く出ている状況は、今までにないことですし、その中心に自分がいるのは特別な経験です。みんなで楽しんでプレーできています」

 一方で課題も認識している。「今日の課題は、自分が少し守りに入ってしまってもったいないシリーズをつくってしまったこと。もっと思い切りやれば楽に展開できたはずです」

 前戦での準備不足については反省も口にした。「東大戦では暑さもあって足をつってしまい、ケア不足でチームに迷惑をかけたんですけど、今日は対策して臨めました。今日は気温的にも投げやすかったです」

 そして、シーズン中の意識の変化も明かした。「僕は『負けてはいけない』と思うとどうしても気負って硬くなってしまうので、目の前の一瞬一瞬に集中することを心がけています」。そう落ち着いて話す口調通りのゲームを、自らの手で作り上げてみせた。

 自らが投げるWR陣との息もぴったりだ。「小林、小寺、平本、竹山らは絶大な信頼を置いているターゲットです。彼らがルートを全力で走ってくれるので、自分は迷わず思い切って投げるだけでした」と語った。

 試合開始早々の好調なスタートについては「最初のシリーズから準備してきたプレーがしっかり決まって、手応えはありました。相手のカバーもよく見えていたので、今日はこんな感じでオフェンスは問題ないなと思いました」と振り返った。
WR小林は勝負所で存在感を見せるキャッチで貢献した=撮影:北川直樹

鎌倉学園出身のルーキーコンビの絆

 終盤の重要な場面で起用された1年生RB阿曾奏人は、鎌倉学園出身。アスリート選抜入試で立教大に入学した。立教を目指すきっかけについて阿曾は、同じ鎌学出身のTE竹山から「一緒に立教で日本一を目指そう」と誘われたのが決め手だったと振り返る。

 この試合は、ゲームウィーク中にスタメンに起用されることが決まったという。そして重要な局面で抜群の働きを見せた。「試合終盤、ボールを持ち続けたい場面でしっかりファーストダウンを更新できたことが一番の仕事でした。あそこで自分がしっかり走れてホッとしました」と阿曾は振り返る。

 目標とする選手は、関西リーグで活躍する鎌学の先輩だという。「憧れは立命館の横井貴洋(2年)さんです。いつかその背中を追い越したいです」と胸の内を明かす。

 立教に誘ってくれた同期の竹山は、第1Qに25ydキャッチを決めるなど、2レシーブでチームを支えた。2人にとって、この勝利は特別なものになっただろう。

 阿曾は「1年生がたくさん出ているのは大きな励みですし、仲間と一緒に戦えて楽しいです。今日は課題もありましたが、次戦は迷いのないランで勝負します」と意気込みを口にした。
第4Q、試合終了間際にRB阿曾のダウン更新で勝利を決定づけた=撮影:北川直樹

TE竹山は第1Qに勝負強いキャッチでダウン更新。25ydをゲイン=撮影:北川直樹
「本当に1年生様様ですよ」と有澤HC


 有澤玄ヘッドコーチ(HC)は1年生たちの活躍を高く評価した。「今年はたくさん1年生が試合に出ています。オフェンスもそうだし、ディフェンスだったらDBの平田夢虎、DLの六浦煌太(立教新座)らです。平田は大事なとこでインターセプトもあったし、今日は本当に1年生様様ですよ」

 鎌学園出身の阿曾と竹山のコンビについては「2人とも、1年目の秋にこれだけのプレーができるのは素晴らしい」と高く評価した。

 中川に対しては「春からたくさん試合に出てますが、秋になって成長した部分はあります。今日も、最後の方は落ち着いて時間を使って良くやってくれました。リーダーシップももっともっと出してほしいと思います」と更なる飛躍への期待を口にする。

 2TDの活躍を見せたWR小寺には「フットボールを始めて2年目であれだけできるのはすごい。まだ甘いところはいっぱいありますが、ただ、甘やかしちゃいけないです」と愛情のこもった厳しい評価をしていた。

 有澤HCは、現状についても冷静な分析を示した。「初戦で負けて、改めてベースの部分をやっていこうと伝えてきました。フットボールは『急にこうやったから上手くなる』というようなスポーツじゃないですから。ちゃんと基礎に取り組んでいって、その上で相手と勝負していく。今はその過程一つひとつが大事です」

 前節の東大戦については「コーチもそうだし、学生スタッフも含めて総合力で負けたなっていう印象です」と明かす。次戦以降に向けては「どの相手に対しても、持っているものを出せれば。自分たちのものをしっかりと出せるチームを作っていきます」と目標を掲げる。

 今季初勝利を挙げた立教。試合に出る1年生たちが、チームに大きな勢いをもたらしている。“ヤング立教”がリーグ戦でどこまで上位に食い込めるか。大きな期待が膨らんでいる。

DBの平田は明治が勝負で投げ込んだパスを見事にインターセプト。流れをつくった=撮影:北川直樹

今季ヘッドコーチに就任した有澤玄さんは、下級生の活躍に手応えを感じている様子だった=撮影:北川直樹

第2Q、WR小林が守備に競り勝ってTDパスをレシーブ=撮影:北川直樹

WR小寺のナイスキャッチ=撮影:北川直樹

DB保科亮太(3年=立教新座)がハードタックルで明治WRの捕球を阻止=撮影:北川直樹

最後は敵陣ゴール前で中川がニールダウンをして勝利を決めた=撮影:北川直樹

【北川直樹】

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