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2025-09-19

【相撲編集部が選ぶ秋場所6日目の一番】同学年ライバルに何もさせず圧倒。苦手を3日連続撃破し、豊昇龍がノッてきた!

立ち合いで王鵬の突きを完封、モロ差しから下手投げで退けた豊昇龍。ただ一人全勝、相撲内容も日に日によくなってきており、優勝の可能性も加速度的に膨らんできた

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豊昇龍(下手投げ)王鵬

同学年ライバルに、まったく何もさせなかった。幕内ただ一人の全勝力士の豊昇龍が、王鵬を退けて、単独トップを守った。
 
この日の相手の王鵬は、現在の地位こそ横綱と平幕と開いているが、もともと同学年で競い合ってきただけに、気後れなくぶつかってくるので、豊昇龍にとっては油断のできない相手だ。過去の対戦成績も3勝5敗(うち王鵬不戦勝1、ほかに優勝決定戦で豊昇龍が1勝)と負け越しており、5月場所でも立ち合い突き上げられての叩き込みで敗れている。大舞台の結びの一番に強いというデータもあり、波乱の可能性もある程度考えられた。
 
が、結果は一方的だった。
 
豊昇龍は腕は両方とも脇を締めて下から、しっかりと前傾姿勢をつくって当たり、王鵬が突き上げようとするところ、脇の下にあてがうようにして相手の突きの腕を伸ばさせず。そのまま右を浅くのぞかせると、左も深く差し込んでモロ差し、一気に青房方向に運ぶと、最後は東土俵方向に左下手投げで決めた。

「しっかり一日一番大事に集中していってるんで、いいと思います」と豊昇龍。この日の相撲内容については「普通です」と、“横綱ならこれぐらいやって当然”と言いたげな感じだが、きのうの熱海富士戦に続く圧勝で、すっかり本来の相撲を取り戻してきたような印象を受ける。
 
注目したいのは立ち合いだ。前傾姿勢をつくり、腕は相手の出方によって、あてがうこともできれば、差しにいくことも可能、という形にしている。ここからは素人考えの推測になるが、これはある程度、横綱が自分の立ち合いに信頼を置ける状態になってきた証のようにも思う。もし自分の立ち合いにあまり信頼が置けない状態であれば、やはり何らか自分から仕掛けていくような動きをしたくなるのが人間ではないか、と思うからだ。
 
序盤3日間は、玉鷲の叩きに泳ぎ、髙安に一瞬つかまりそうになり、伯桜鵬には立ち合い変化でかわし……と、あまり安定感と余裕が感じられなかった豊昇龍だが、4日目から阿炎、熱海富士、王鵬と苦手力士を3タテ。立ち合いもどんどんよくなって、すっかりノッてきたことが感じられる。
 
自信と余裕が戻ってくれば、ここ一番の勝負強さには定評のある横綱だけに、優勝の可能性も加速度的に膨らんでくることになるだろう。
 
この日は、豊昇龍が全勝を守ったほか、横綱大の里は熱海富士を右差しで一気に攻めて圧倒、大関琴櫻は好調平戸海に攻め込まれたが、小手投げで退けるなど、きのうまで11人いた1敗力士も、うち8人が勝つという好成績。優勝争いの情勢としては、大きな変化は見られなかった。
 
このところの内容からすれば、いずれ両横綱による争いに収れんしていく可能性が高いとは思うが、まだまだ1敗力士の数が多いだけに、他の力士が参入しての争いになる可能性もあるといえる。
 
また、大関取りを目指す若隆景は、豪ノ山を何とかかわして突き落とし3連勝。内容的にはまだもう一つだが、とにかく星の上では4勝2敗と、二ケタのペースに乗せてきた。あすは小結安青錦との対戦。ここで勝って5勝2敗となるか、負けて4勝3敗となるかでは後の展望がかなり変わってくるだけに、大関取りの成否を左右する大事な一番になりそうだ。

文=藤本泰祐

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