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2025-09-22

【相撲編集部が選ぶ秋場所9日目の一番】大の里、一瞬ヒヤリも素早い反応で1敗キープ。勝ち越し決めて豊昇龍を追う

一瞬、若元春に後ろを取られかけた大の里だが、すぐに向き直ると、そのあとはしっかりつかまえて寄り倒し、1敗を守った。このままトップの豊昇龍に食いついていけるか

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大の里(寄り倒し)若元春

クルッと一回転。それでも慌てなかった。
 
横綱大の里が、若元春にうまくイナされて一瞬後ろを取られかけたが、立て直してつかまえ、右四つから寄り倒し。1敗を守って勝ち越しを決めた。
 
大の里はこの日の相手の若元春に対しては、この一年では4勝1敗とまずまず。3月場所に、そこまで成功していたモロ手突きから右差し狙いに立ち合いを変えて組み負け、押し出しに敗れているが、その後は5月場所、7月場所とまた立ち合いをモロ手突きに戻して連勝している。
 
その流れどおり、今場所も大の里の立ち合いはモロ手突き。しかし今場所は若元春も対応してきた。突かれながらも右を相手の左ヒジにあてがって手繰り気味にイナすと、大の里は一瞬横向きに。
 
若元春には大チャンスだったが、しかし今場所の大の里は冷静で、かつ素早かった。相手に後ろを取らせる間もなく向き直ると右差し。とりあえずこの差し手がしっかり入るとひと安心だ。そのあとは、胸を合わせながら、左からおっつけて相手の下手を殺しながら、危なげなく向正面に寄り倒した。

「下半身が伸びていなかった。それがよかった。背中を向けた瞬間は危なかったけど、どっしり構えていたのでよかったです。土俵際も相手の打棄りをこらえて。立ち合い以外はよかった」と大の里。一瞬、ヒヤリとはさせたが、その後の反応の速さと冷静さには、今場所の充実が表れていたと言っていい。
 
これで勝ち越しを決め、全勝の豊昇龍を1差でピタリと追走したまま後半戦に向かうこととなった(この日は1敗組のうち隆の勝が敗れ、1敗は大の里と正代だけになった)。
 
もちろん大の里は追う立場なので、優勝争いに関して現状どちらが有利かと言えば豊昇龍、という話にはなるが、大の里の今場所は、伯桜鵬戦に少し攻めを急いで早く体を預けて負けてしまっただけで、勝った相撲での危ない場面もむしろこの日が初めてと言っていいぐらいの充実度。今後、千秋楽を迎えるまでに星を落とす可能性は、むしろ豊昇龍より低いのではないか、という感じもする。さらに、豊昇龍が小結以下では最大の難敵と言える安青錦戦を残しているのに対し、大の里はすでに初日に終わらせているので、このアドバンテージをプラスすると、今後に関しては、正味1差よりももう少し、差は小さいと考えられるのではないか。

あとは、“もう一つ負けてしまうと、豊昇龍が手の届かないところに行ってしまう可能性がある”という余裕のなさとどう付き合っていくか、というところで、そこさえうまくできれば、まだまだ、逆転優勝の可能性、十分残していると言えるだろう。「追う展開なので深く考えすぎず、チャンスが転がってくるものだと思って、まずは目の前の一番に集中してやります」と言っているので、そのあたりも問題ないような気もするが……。とりあえず、あすは先場所敗れている琴勝峰戦。「(9日目の)立ち合いはいいとは言えないですね」と言っていたので、そこを立て直したうえで落ち着いて戦いたいところだ。
 
この日はこのほか、若隆景が霧島に掬い投げで敗れて4敗目。二ケタ勝利へもあと1敗しか許されなくなり、今場所後の大関取りに関しては、さらに崖っぷちに追い込まれた。あとは終盤戦に横綱・大関をバンバン倒していくしかなくなったが、最低でも来場所につなぐだけの星と内容は残していきたいところだ。

文=藤本泰祐

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