取材・構成/平野貴也
写真/gettyimages、BBM、平野貴也
「ファストブレイクアタック(速攻)」について説明しましょう。ボールを奪ったとき、前がかりになっている相手の背後に生まれているスペースを素早く使い、得点を奪う攻撃です。
速ければ速いほど、相手は対応が難しくなります。しかし、急げばいいわけではありません。状況は変化します。急ぐことに囚われると状況変化に対応できません。相手の守備への戻りが速い場合、ファストブレイクを仕掛ける選手は、スペースの状況や守備者との距離を確認しながら自分とボールの距離感を変えなければいけません。そのときはフィジカル・スピードとボール・スピードのコントロールが必要になります。
理想は、スピードに乗った中でも常にボールを支配下に置いたドリブルです。FCバルセロナのリオネル・メッシは、スピードを上げていても細かいタッチをしていてターンやパスがいつでもできるようにしています。一方、バイエルン・ミュンヘンのアリエン・ロッベンは、ディフェンス・ラインの背後に大きなスペースがある場合はスペースにボールを蹴り込み、自分のスピードを活かして追いつくプレーでチャンスを広げます。このプレーは、スピードを上げられるメリットはありますが、途中でプレーを変えられないデメリットもあるので、状況判断が一層重要になります。
ファストレブレイクアタックでは、「ドリブルでボールをスペースへ運ぶか」、「相手を引きつけてパスを出すか」、という状況判断が重要となり、パスを出す場合も「相手をどこまで引きつけるか」という判断が求められます。相手を十分に引きつけておかなければ、パスを受けた味方がプレッシャーを受けますし、引きつけすぎるとパス・コースを消されてしまいます。
味方をフォローする選手も状況を考えなければいけません。全員がボール保持者を追い越して前に入れば攻撃はノッキングしてしまいます。相手を引きつけて、味方のドリブルやパス・コースをつくり出すフリー・ランニングが有効なケースもあります。
トレーニングでは、まずフィジカルとボールのスピードをコントロールする技術を磨きます。次に、圧倒的優位だけれども、相手が全力で追って来るという状況設定のメニューに移ります。スピードを活かせれば得点できますが、停滞すると相手に囲まれます。そうした状況下でもプレッシャーに負けずスピードを上げても精度を落とさないプレーを目指します。数的優位な状況でスタートするメニューであってもゆっくりと保持してしまう場合は、時間がかかると守備者が増えるルールを設定するといいでしょう。
メニューは、攻守の切り替えを含む連続性のある設定が理想です。ファストブレイクアタックは「相手が整っていない状況を素早く攻める」という定義です。プレーを連続させたほうが整っていない状況をつくりやすくなります。
また、メニューを進めていく中で、課題を見極めて修正しやすいようにメニューを組み立てることが大切です。走りながらのコントロールが苦手な選手が多い場合、後方から配球される形を多くして課題を克服しなければいけません。「2対1」の状況での判断が課題であれば、状況判断以外のポイントは難度を下げた設定にします。例えば、ボールを最初から持っていて、いつでもスピードアップできる状況からスタートさせ、状況判断に集中できる環境をつくるのです。ボールを奪った直後のプレーが悪くて速攻に移れないのであれば、攻守の切り替えからスタートする設定にします。
チームや選手が抱えている課題を見極めて、メニューを調整することで戦術的判断を伴った技術を磨き、速さと精度を兼ね備えたファストブレイクアタックを目指しましょう。今回は2つのメニューを紹介します。
進め方:①縦長のグリッドを設け、両ゴール前に5mのシュート・ラインを設置 ②全員がボールを保持して列に並ぶ。1人目はドリブルでシュート・ラインを越えたらシュート ③シュートした瞬間に逆サイドにいる2人目がドリブルを開始 ④2人目はシュート後、逆サイドにいる3人目に対する守備を開始 ⑤同様に続ける
ポイント: ①ゴールとドリブルのスタート位置を離しておく②ドリブルする選手は、「急げばフリーでシュートを打てるが、後方から相手が追って来るプレッシャーを感じる」状況設定にする。急ぐ中で精度を落とさないことが目的
進め方:①「ファストブレイクアタック(速攻)のトレーニング 1」と同じグリッド ②全員がボールを保持して対角で列に並ぶ。中央にコーチ(壁パス役)を配置 ③1人目が中央のコーチにパスし、リターンを受けてドリブルでシュート・ラインを越え、シュート ④シュートを打った瞬間に逆サイドにいる2人目が攻撃を開始。2人目はシュートを打ったあと、逆サイドにいる3人目に対して守備
ポイント:①パス、ランニング、ドリブル、シュートなどを伴う速攻のトレーニング ②壁パス役をコーチが行なう場合、マッチアップの力量差を考え、パスの出し方を調整 ③壁パス役はパスを受けて出したあとは、次のチームに対する準備をしないといけない
<解説者プロフィール>
中川英治(なかがわ・えいじ)/1974年7月6日生まれ、北海道出身。『クーバー・コーチング』の指導者養成機関である『クーバー・アカデミー・オブ・コーチング』のヘッドマスター。クーバー・コーチング・サッカースクールのスクールマスターなど、育成年代の豊富な指導キャリアを持つ。スクールコーチ時代は、数々のJリーガーや日本代表選手の育成にかかわってきた。現在は、アカデミーで指導者養成を行なっているほか、ブラインドサッカー日本代表のコーチを務め、暁星中学校サッカー部でも指導する。JFA公認A級ジェネラルライセンス保持
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