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2025-10-29

【アメフト】明治大RB高橋周平が関東TOP8初の1000ydラッシャーに

【明治大vs中央大】関東TOP8 としては初の1000ydsラッシャーとなった明治大のRB高橋周平=撮影:北川直樹

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アメリカンフットボールの関東大学1部リーグTOP8第6節で大記録が生まれた。10月25日、明治大学グリフィンズと中央大学ラクーンズの1戦で、明治大のRB高橋周平(4年・足立学園 /171センチ、75キロ)が24回のボールキャリーで289ydを記録し、シーズン通算のラッシングが1108ydに到達。1シーズンにランで1000yd以上を記録する「1000ydラッシャー」となった。


関東大学リーグで通算9人目(10回目)の達成だが、2014年にリーグが1部TOP8とBIG8に分かれて以降、TOP8では初めてとなる。旧1部リーグ時代より高い競争レベルとなったTOP8では、11年間誰も成し遂げることができなかった記録だ。【北川直樹】

これまでの全6試合で120yd以上を記録

リーグ戦第6節終了時点、高橋が記録した詳細は以下の通り。

第1節 vs 慶應義塾大学:15回156yd3TD(最長52yd)、平均10.4yd/キャリー。開幕戦から3TDの活躍で、チームの勝利に貢献。52ydのロングランも記録。

第2節 vs 立教大学:20回131yd2TD(最長42yd)、平均6.6yd/キャリー。最多の20回のキャリーを任された。

第3節 vs 法政大学:26回256yd6TD(最長70yd)、平均9.8yd/キャリー。シーズン最多の6TDは圧巻のパフォーマンス。256ydは当時のシーズンハイで、70ydのロングTDランも決めた。

第4節 vs 早稲田大学:11回156yd2TD(最長75yd)、平均14.2yd/キャリー。少ないキャリー数ながら効率的に156ydを獲得。75ydのビッグランを記録。

第5節 vs 桜美林大学:8回120yd2TD(最長49yd)、平均15.0yd/キャリー。今シーズン最少の8回のランで120ydを記録。効率では今季最高の数値を残した。

第6節 vs 中央大学:24回289yd2TD(最長89yd)、平均12.0yd/キャリー。シーズンハイの289ydで1000yd突破を決定的にした。89ydは今季最長のラン。

全6試合で120yd以上を記録し、100yd未満の試合は一度もなかった。特筆すべき安定感だ。
【明治大vs中央大】関東TOP8 としては初の1000ydsラッシャーとなった明治大のRB高橋周平=撮影:北川直樹

 歴代記録における位置づけ

関東大学リーグ歴代1000ydラッシャー(獲得yd順)は以下の通り。

1位 瀬畑圭介(明治大・4年)1999年/1,260yd/6試合
2位 丸田泰裕(法政大・3年)2005年/1,178yd/6試合
3位 神田龍斗(駒澤大・4年)2014年/1,143yd/7試合/BIG8
4位 岩田信二(慶應大・4年)2006年/1,120yd/7試合
5位 高橋周平(明治大・4年)2025年/1,108yd/6試合終了時点/TOP8初
6位 宮幸崇(中央大・3年)2005年/1,092yd/6試合
7位 宮幸崇(中央大・4年)2006年/1,068yd/7試合/2年連続
8位 末吉智一(早稲田大・3年)2010年/1,061yd/7試合
9位 原卓門(法政大・3年)2008年/1,043yd/7試合
10位 柳沢拓弥(拓殖大・2年)2011年/1,025yd/7試合

明治大学としては1999年の瀬畑圭介以来、26年ぶりの1000ydラッシャーとなった。瀬畑は歴代最高記録を保持しており、明治大学のランナーとしての伝統を高橋が受け継ぐ形となった。
【明治大vs中央大】関東TOP8 としては初の1000ydsラッシャーとなった明治大のRB高橋周平=撮影:北川直樹

 記録で見る高橋の凄さ(6試合終了時点)

◆シーズンスタッツ
総ラッシング:104回 1,108yd 17TD
平均:10.7yd/キャリー
試合平均:184.7yd
1試合平均キャリー:17.3回
TD率:16.3%(6.1回に1回のTD)

◆ずば抜けた1キャリー平均
10yd以上/キャリー:4試合(第1、3、4、5、6節)
15yd/キャリー達成:第5節桜美林戦
最低でも6.6yd/キャリー(第2節立教戦)

◆50yd以上のランを5本記録
89yd(第6節・中央)
75yd(第4節・早稲田)
70yd(第3節・法政)
52yd(第1節・慶應義塾)
49yd(第5節・桜美林)
20yd以上のランは試合平均2.5本以上と推定され、ビッグプレイ能力の高さを示している。

◆ 傑出した決定力
合計17TD(リーグトップ)
複数TD試合:全6試合
1試合最多TD:6(第3節法政戦)
【明治大vs中央大】関東TOP8 としては初の1000ydsラッシャーとなった明治大のRB高橋周平=撮影:北川直樹


リーグ内での圧倒的な優位性

2025年TOP8ラッシングリーダー上位10名(6試合終了時点)

1位 高橋周平(明治大)104回/1,108yd/平均10.7yd/17TD/最長89yd
2位 米田健人(東京大)73回/680yd/平均9.3yd/5TD/最長77yd
3位 安藤慶太郎(早稲田大)93回/629yd/平均6.8yd/7TD/最長62yd
4位 田中昂(東京大)84回/464yd/平均5.5yd/5TD/最長50yd
5位 中川達也(法政大)42回/381yd/平均9.1yd/1TD/最長66yd
6位 阿曽奏人(立教大)69回/328yd/平均4.8yd/1TD/最長28yd
7位 山口典誠(中央大)53回/314yd/平均5.9yd/1TD/最長56yd
8位 小野一真(中央大)40回/225yd/平均5.6yd/2TD/最長34yd
9位 山岡葵竜(慶應大)61回/224yd/平均3.7yd/3TD/最長52yd
10位 上村聖哉(中央大)52回/220yd/平均4.2yd/1TD/最長29yd

高橋は2位の東大 米田を428yd、率にして62.9%上回っている。TD数17は2位の早大 安藤(7TD)の2.4倍。平均10.7yd/キャリーは、40回以上のキャリーを持つ選手の中で最高値となっている。
【明治大vs中央大】関東TOP8 としては初の1000ydsラッシャーとなった明治大のRB高橋周平=撮影:北川直樹

試合展開での貢献度

特筆すべきは高橋のゲームコントロール能力だ。

20回以上のキャリー:3試合(立教、法政、中央)
10回以下のキャリー:2試合(桜美林、早稲田)

多くのキャリーを任された試合では確実にydを積み重ね、キャリーが少ない試合では効率的にビッグプレーを演出した。これまで、試合状況に応じた確実な活躍を見せている。

また、第3節法政戦の256yd6TD、第6節中央戦の289yd2TDなど、重要な試合で爆発的なパフォーマンスを発揮。特に中央戦は、今季最高を記録した。
【明治大vs中央大】関東TOP8 としては初の1000ydsラッシャーとなった明治大のRB高橋周平=撮影:北川直樹

「積み重ねの結果として1000yd」
明治大 高橋輝HCのコメント

1000yd到達を記録した中央大との試合後、高橋輝ヘッドコーチ(HC)は高橋周平のプレースタイルについてこう語った。

「うちのランオフェンスはRBに判断を委ねる部分が多く、ブロックの角度や守備の流れを見て最適なレーンを選ぶようにしています。周平はそういう"見てから走るタイプ"のランナーで、ラインの動きやブロックの変化をよく見ています」

この"見てから走る"スタイル、いわゆるデーライト能力は、ゾーンプレーを多く用いる現代のフットボールにおいて重要なスキルであり、単純なスピードだけでなく、視野の広さと判断力のバランスが要求される。

「細かく刻んでゲインを積み上げながら、試合の後半になっても落ちないタイプ。さらに彼は、セーフティと一対一になった場面でも勝負ができる。スピードやキレだけでなく、当たり負けしない強さがあって、抜けた後も仕留めきれる力を持っています。そういう部分が、今年の明治のランの形を支えてくれています」

高橋HCは現役時代の経験も交えて語った。「私が選手だった頃、2学年上に法政の原卓門さん、同学年には早稲田の末吉智一さんがいて、彼らが1000ydラッシャーになった時のことをよく覚えています。指導者になり、自分もあの領域に届きたいと強く思っていました」

原卓門は2008年に1043yd、末吉智一は2010年に1061ydを記録。高橋HCは彼らと同じフィールドで競い合った経験を持つ。

「だから、今こうして自分がヘッドコーチとして、その数字を出す選手を送り出せたというのは感慨深いですね。今日、その積み重ねの結果として1000ydを超えたのは本当に嬉しいです」

そして、記録の本質について言及した。「もちろんチーム全体の積み重ねがあっての数字ですが、彼自身の取り組みの姿勢や準備の質の高さがあっての結果だと思います。数字そのものよりも、そこまで積み重ねてきたプロセスに価値があると思っています」
【明治大vs中央大】明治大の高橋輝ヘッドコーチ(前列中央左)=撮影:北川直樹

「自分自身が達成したものだとは思っていない」
   高橋周平のコメント


1000ヤード達成について、高橋は「率直に嬉しいです」と喜びを語った。続けて「殆どのプレーが他の選手のブロックやプレーコールで走れているので、特に自分自身が達成したものだとは思っていないです」と、チームへの感謝を口にした。

「僕を信じてランプレーをコールしてくれていたり、最後まで足を掻き続けてブロックしてくれているチームメイト、主将の自分を支えてくれているグリフィンズのメンバー全員に感謝して、責任を持って今後も走りたいと思います」

最終節の相手、東京大学は、4勝2敗で並んでおり、全日本大学選手権への出場権もかかる。東大戦は「生きるか死ぬかの一戦です。死ぬ気でプレーします」と、強い決意を語った。
【明治大vs中央大】関東TOP8 としては初の1000ydsラッシャーとなった明治大のRB高橋周平(左手前から2人目)=撮影:北川直樹

最終節での記録更新の可能性と展望

11月9日に行われる最終節・東京大学戦。高橋が獲得するyd数によって、以下の記録更新が想定される。

【記録更新ライン】
36yd以上:歴代3位(駒澤大 神田龍斗・1143yd)を上回る *
71yd以上:歴代2位(法政大 丸田泰裕・1178yd)を上回る
152yd以上:歴代1位(明治大 瀬畑圭介・1260yd)を上回る
(* 神田は1部下位ブロックBIG8での記録)

明治大はTOP8での順位争いの中で、最終節が重要な一戦となる。関東大学アメリカンフットボールの歴史に新たな1ページが刻まれるか。26年前の先輩・瀬畑圭介が持つ明治大記録、そして歴代記録への挑戦という意味合いで、高橋周平の最終節の走りに注目だ。
【明治大vs中央大】関東TOP8 としては初の1000ydsラッシャーとなった明治大のRB高橋周平(左手前から2人目)=撮影:北川直樹

【北川直樹】

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