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2025-11-17

【相撲編集部が選ぶ九州場所9日目の一番】初挑戦の義ノ富士を土俵に叩きつける。豊昇龍、V戦線に食いつき終盤戦へ

義ノ富士を土俵に叩きつける豊昇龍、横綱のうまさ、速さを見せつけて2敗をキープ。前を行く大の里と安青錦を追う

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豊昇龍(送り投げ)義ノ富士

横綱初挑戦の若武者を、背中から土俵に叩きつけた。
 
豊昇龍が、横綱の速さと力を見せつけた。2敗同士の対戦で、義ノ富士を一蹴だ。
 
義ノ富士にとっては、これが横綱初挑戦。「(雰囲気は)別に。変わらなかったです。やってやろうという気持ちが大きかった」と意気込んできた。
 
立ち合い。豊昇龍は低く、頭から当たった。義ノ富士の右差し狙いを、左からのおっつけと、右の突きで許さず。突き放した。ただ義ノ富士も、そこから逆襲し、むしろ少し押し返した。
 
だが豊昇龍は、押されてはいても、崩されてはいなかった。体の軸をしっかり保ちながら、タイミングよく右からのイナシ。これで義ノ富士の後ろを取ると、そのまま土俵にたたきつけて決着をつけた。決まり手は「送り投げ」。幕内では今年5月場所6日目に安青錦が正代に決めて以来の決まり手だ。

「立ち合いで入りかけたけど、突き放されて距離を保たれ、イナされたって感じですね。慎重にいきすぎた。下からあてがって、ガンガン攻めればよかった。見すぎた」

と義ノ富士。背中から土俵に叩きつけられれば、普通は横綱の強さに舌を巻きそうなものだが、悔しそうに勝気なコメントが口をつくあたり、その意気やよし。あすはまた横綱との取組で大の里戦。一発食って名を上げるチャンスはまだまだ残っている。
 
一方の豊昇龍は、やはり動きの中で機をとらえる機敏さ、スピードではまだ一枚上、というところを見せた格好。時折、楽に勝ちにいこうとするような立ち合いを見せるので、ムラはあるとは言えるが、この日のようにしっかり気が入った立ち合いをしてくるときはやはり横綱、という強さだ。
 
この日は、大の里が少し立ち合い動こうとした欧勝馬を問題にせず押し出し。安青錦も粘る平戸海を降して1敗をキープしつつ勝ち越しを決めた。また、幕内前半戦の土俵では、2敗同士の小兵対決で時疾風が藤ノ川をつかまえて寄り切り。錦富士は翔猿に叩き込まれて3敗に後退し、全勝大の里、1敗に安青錦、2敗に豊昇龍、時疾風と、だいぶ役者が絞られて、あす以降へ向かうことになった。2敗に時疾風がいるものの、まあ実質的には「3強」の争いで終盤に入っていくと言っていいだろう。
 
この3人は、お互いの対戦成績で言うと、大の里が安青錦に強く、安青錦は豊昇龍に強く、豊昇龍は大の里に強い、という、「グー、チョキ、パー」のような関係なので、とりあえず現状星のいい順に有利、ということは間違いがない。直接対決を迎える時点で星勘定がどうなっているかがカギを握るともいえるが、相撲はジャンケンと違って、勝敗がこれまでの関係どおりに出るとは限らない。いやむしろ、誰がより相手を研究し、その関係性を崩すことに成功するかが見もの、という面もある。

「3強」の争いの結末はいかに。役者は絞られてきたが、それはそれで面白くなってきた。

文=藤本泰祐

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