明治大学アメリカンフットボール部は11月9日、関東大学TOP8の最終節で東京大学と対戦し、42-24と勝利を収めた。この試合で最大の注目は、ここまで驚異的な走りを見せてきたRB高橋周平(4年=足立学園)の活躍だ。通算ラッシングは前節までで既に1000ydを超えていたが、歴代記録の更新がかかっていた。高橋は試合前半の時点で歴代最高記録である瀬畑圭介の1260ydを上回り、最終的に通算1401ydを走って新記録を樹立した。293ydのラッシングと4つのTDで試合を支配した。関東2位で確定させた明治は、高橋周平という稀有なランナーを携え、全国トーナメントの舞台へ進む。【北川直樹】 前半で歴代記録を更新、圧巻の走りで東大に勝つ
明治大学は前半から東京大学に対し、圧倒的なラン攻撃を見せつけた。その中心は、高橋周平の鮮烈なラッシングだった。
東大に先制のFGを許した第1Q9分すぎ、明治は自陣31ydからの最初の攻撃を開始。最初のプレーで高橋が中央を突破し、69ydの独走でいきなりTDを決めた。東大ディフェンスの想定を超えた爆発的な走りで、試合の流れを一気に掌握する。明治は東大フロントとの勝負でOLが優位を保ち、ランが活かされていく。その後も高橋の走りは止まらない。
第2Q序盤には、自陣23ydからの攻撃で再び中央突破。敵陣8ydまで69ydを走り、QB新楽圭冬(4年=都立戸山)のキープを経た後、高橋が中央を突いてTDを記録。明治は14-3と主導権を握った。
この時点で高橋の通算ラッシング記録は、従来の記録である瀬畑圭介の記録1260ydに到達した。
高橋の快走はつづく。東大が10-14と点差を縮める場面もあったが、明治はすぐさま反撃。自陣27ydからの攻撃で高橋が73ydの独走TDを決め、スコアを21-10に広げる。この劇的なプレーで、高橋は記録を上回り、歴代記録を更新した。
その後、東大攻撃をターンオーバーに仕留めた明治は、RB宇野楽翔(3年=同志社国際)がTDを記録するなど、攻撃陣が得点を重ねた。明治は前半を28-10とリードして折り返した。
最初のプレーでいきなり独走TDを決めた(撮影:北川直樹)後半も高橋の走りは止まらず 明治が全国舞台への切符を掴む第3Qも明治は攻撃の手を緩めない。敵陣36ydからの攻撃で高橋が敵陣17ydまで前進し、WR杉崎友則(4年=明大中野)へのパスでゴール前4ydへ。ここで高橋がTDランを決め、スコアは35-10となった。
東大が点差を縮める場面もあったが、明治は第4Q終盤に自陣48ydから高橋が43yd走り敵陣5ydまで前進し、TE佐藤壮真(4年=県立鎌倉)がTD。明治は42-24でゲームを決めた。
試合終盤、高橋はゴール前まで進みながらもスライディングで時計を回すクレバーさも見せた。この判断力もまた、走力に留まらない高橋の冷静さと視座の高さを物語るものだった。
次の試合で早稲田大学が法政大学に勝利。これにより明治は関東2位での全国トーナメント進出が確定した。(早稲田大が1位、法政大が3位)
現行の大会方式にはり初の全国トーナメント出場となる明治は、11月22日に関西リーグ3位の関西大学との対戦が控えている。これまで明治のラン、もとい高橋の走りをシャットアウトしたチームはおらず、関西のチーム相手にもその走りが通用するかが焦点となる。また、彼の走りを核としつつもQB新楽のパス、TE金子航大(4年=千葉日大一)らのレシーブによる攻撃の幅にも注目したい。
捕まりそうになっても抜け出し幾度も独走を演出した(撮影:北川直樹)明治大 髙橋輝HC「関西相手にも自信を持って臨みたい」
◆試合後のコメント今日は天気が読めなかったので、当初はパスをもう少し投げようというプランもありましたが、試合の早い段階で相手が何を止めに来ているのかが分かりました。ランがしっかり出せていたため、「これは走り切れる」と判断し、ラン中心で押し切る方針に切り替えました。結果的にもその判断は良かったと思っています。
最初のプレーで周平が抜けた場面は、こちらが用意していたアジャストがそのままハマった形でした。東大さんがどう入ってくるかは読み切れていなかったのですが、フロントをかなり重くしてくる傾向が見え、その中で周平なら1発持っていけると感じていました。実際に持っていけたので、その後も大きくプランを変えず、フロントを押し続けていく形で進めました。SFが余っていても、周平のスピードや1対1の勝負で勝ち切れると判断していました。
ディフェンスについては、東大さんのオプションを止めるのは簡単ではありませんでしたが、1Qに1本以内の失点で抑えられれば勝てると考えていました。他大学との試合を見ると、東大さんはロングゲインが多いチームでしたので、「一発だけは絶対に出させない」という方針を徹底しました。その成果で、大きなゲインを許さずにゲームを作れたことは大きかったと思います。
東大さんのオプションは非常に複雑で再現が難しいのですが、うちの場合、QB新楽が高校時代にセットバックの経験もあったため、練習である程度再現することができました。そこが準備として大きかったです。また、大きなタックルミスがなかったのは何よりでした。
今日のポイントは、RB米田選手、TE太田主将、そしてQB田中選手を走らせないこと、パスでリズムを作らせないことでした。もしそこを抑えられなければ、TEの神田選手やFBなどにも対応が必要になったと思いますが、大きなプレーを出されなかったので、狙い通りに進められました。
周平の通算記録更新については、私自身は心の中で狙っていましたが、本人はまったく意識していなかったと思います。うちの勝ち方は、オフェンスをしっかり出してディフェンスが抑えるというものですし、今日もディフェンスがターンオーバーを取ってくれました。一発を許さず試合を運べたのは理想的でした。
第4Qで周平がゴール前でスライディングした場面については、私は正直「取っていいよ」と思っていましたが、彼の中で少しでも時間を使おうという意識があったのだと思います。日々の練習でもそういう部分を大事にしていますし、彼はチームのことをよく考えて判断できる選手です。
春の段階で関西の大学と多く試合をして経験を積んできました。関西のチームはプレーの強度が高く、それに触発されて成長してきた実感があります。秋の本番として関西勢と当たるのは楽しみでもあります。自信を持って臨みたいですし、OLを中心にユニットとしてしっかり出していきたいと思っています。ディフェンスもまだ精度を上げられるので、さらに高めていきたいです。
コーチ就任14年目。甲子園ボウルを見据える全国トーナメントへの出場を決めた髙橋輝HC(撮影:北川直樹)RB高橋周平、前半での記録更新も「え、そうなんですか?」◆試合後のコメント
記録については特に意識していなかったです。自分の走りを続けていれば自然と届くと思っていたので、今日それが結果として形になって良かったです。次の相手はまだ決まっていません(試合終了時点)が、どこが来ても自分たちがやるべきことをしっかりやるだけだと思っています。
トーナメントに出られることがまず大前提で、そこをクリアできたことは大きいです。試合を重ねるごとにチームとしてのまとまりが生まれてきていて、まだまだ上げていける部分はあると感じています。
秋の関西勢との対戦は初めてですが、自分の走りをそのまま出したいと思っています。試合直後には多くの方に声をかけていただきました。チームメイトからも「やりすぎだ」と言われるくらいで、今日のプレーには満足しています。
最初のプレーで69yd走れた場面は、抜けた瞬間に気持ちが楽になりました。試合前はロースコアで進むと思っていて、相手に時間を使われる展開を予想していましたが、実際には自分のランで流れをつかむことができました。
OLのブロックが本当に良かったです。WRも含めてチーム全体がしっかり仕事をしてくれたので、自分はボールを持って走るだけという感覚がありました。
第4Qのロングゲインの場面では、抜けた瞬間に「いける」と思っていましたが、時間状況を考えてスライディングしました。普段から意識しているわけではないのですが、試合の流れを見て自然と判断しました。
記録を超えていたことは試合中にはよく分かっていませんでした。瀬畑さんの記録はもちろん知っていましたが、それを意識してプレーすることはなく、勝つことだけを考えていました。
次の対戦相手について特別な希望はありません。どこと当たっても同じ気持ちで臨むつもりです。関西の選手にも足立出身の選手はいますが、それが試合に影響することはなく、自分たちのフットボールをするだけだと思っています。
立教戦では思うように走れなかったですが、それ以外の関東の試合では走れていましたし、関西相手にも自分の走りを出したいと思っています。自信はあります。2週間後に向けて、しっかり準備して、また自分のプレーを出せるように整えていきたいです。
高橋は試合終盤、5yd残してダウンし時間を流すクレバーさも見せた(撮影:北川直樹)関東大学リーグ歴代1000ydラッシャー(獲得yd順)①1401yd 高橋周平(明治大・4年) 2025年
②1260yd 瀬畑圭介(明治大・4年) 1999年
③1178yd 丸田泰裕(法政大・3年) 2005年
④1143yd 神田龍斗(駒澤大・4年) 2014年(BIG8)
⑤1120yd 岩田信二(慶應大・4年) 2006年
⑥1092yd 宮幸崇 (中央大・3年) 2005年
⑦1068yd 宮幸崇 (中央大・4年) 2006年
⑧1061yd 末吉智一(早稲田・3年) 2010年
⑨1043yd 原卓門 (法政大・3年) 2008年
⑩1025yd 柳沢拓弥(拓殖大・2年) 2011年
*1981~2005年は6試合、2006年以降は7試合
高橋周平(明治大・4年) 撮影:北川直樹

高橋周平(明治大・4年) 撮影:北川直樹

高橋周平(明治大・4年) 撮影:北川直樹

高橋周平(明治大・4年) 撮影:北川直樹
高橋周平(明治大・4年) 撮影:北川直樹
高橋周平(明治大・4年) 撮影:北川直樹