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2025-12-17

【陸上】全国高校駅伝 西脇工高の双子ランナー・新妻昂己 兄・遼己や仲間が全国で活躍も「くさっている暇はなかったです」 仲間と共に優勝狙う

写真左が新妻昂己。右が兄で5000m13分35秒33を持つ新妻遼己(写真/中尾義晴)

12月21日(日)、京都・たけびしスタジアム京都をスタート・フィニッシュとする全国高校駅伝が開催。10時20分からは37回目を迎える女子が21.0975kmで、12時30分からは76回目となる男子のレースが42.195kmで行われ、男女それぞれ都道府県代表の47校と11地区大会を勝ち抜いた11校を合わせた58校が都大路でタスキをつなぐ。そのなかから、注目ランナーを3回にわたって紹介。1人目は、西脇工高(兵庫)のキャプテン、新妻昂己(3年)だ。

兵庫県大会では共に区間新で「ダブルエースと呼ばれるような走り」

全国高校駅伝35回目の出場を2時間03分25秒の兵庫大会新記録で決めた西脇工高には、注目の双子ランナーがいる。新妻遼己と昂己(共に3年)。兄の遼己は5000mで13分35秒33の自己記録を持ち、今季インターハイと国スポで二冠を成し遂げた世代トップランナー。一方、弟の昂己はインターハイ出場に届かず、5000mの自己記録も9月まで14分37秒15だった。しかし、夏を越えると記録は14分08秒10まで躍進。11月には14分04秒20へと更新した。兵庫高校駅伝では1区の遼己と3区の昂己が区間新記録を競演した。遼己が「ダブルエースと呼ばれるような走りができた」と言えば、昂己は「都大路の目標は優勝。これからだなと思っています」と気を引き締める。前回入賞を逃した西脇工高が、双子のエースを中心に9度目の全国制覇に挑む。

 

今季52人を数えるチームを主将として束ねる昂己だが、身近な存在であるがゆえに、遼己の活躍がまぶしく、それに比べて自分は……という思いがつきまとった。「自分がインターハイに行けないなかで、遼己が結果を残していて(1500m2位、5000m優勝)、キャプテンとしても不甲斐ない走りが続いて、チーム全体に指示を出すとか、こういうチームにしていきたいっていうことを言えるような結果に届いていなくて、それがもどかしかったです」と振り返る。

遼己との差を思うと、「正直、情けない気持ちでいっぱいだった」と明かす。想像するに、思うように走れなかったシーズン前半は気持ちがふさがるような苦悩の日々だったに違いない。それでも、昂己の心は折れなかった。「遼己があんな走りをしているなら、俺もここでやらなきゃどうするんだって、気持ちをしっかり奮い立たせてやってこられました。それにインターハイで同学年が活躍しているのを見て、くさっている暇はなかったです」と前を向き続けた。

そんな昂己をチームの仲間と夏の練習が覚醒させた。「『昂己が走れるようになれば、チームは走れる』って、みんなが言ってくれました。夏場は足づくりのために懸命に距離を踏みました。スピードの面では800m専門のチームメイトの練習につかせてもらったりしました」。誰かが信じてくれているというのは、なんて心強いのだろう。練習は裏切らないという手応えも記録に表れ、9月には5000mで自己ベスト。自信を取り戻して、駅伝シーズンを迎えることができた。

 

前回の都大路で西脇工高は13位。先輩から新チームの主将を託された昂己は「(弱い)面影がないぐらい強くなる」と誓った。その強さに「近づいてきている」と言うが、「全国には2時間1分台、2分台を出しているところもある。コースや天候は違いますが、タイムで負けているのは確かなこと。(3分台に)満足せずに都大路まで取り組みたい」と慢心を排して臨む心意気だ。

消沈しそうなとき、昂己には走りや言葉で奮い立たせてくれた遼己、仲間、先生たちがいた。一人ひとりへの思いを心に込めて、昂己は都大路でどんな走りを見せてくれるのか。きっと、大切なタスキを胸に弾ませ、勇躍と駆け抜けていくのだろう。

文・写真/中尾義晴

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