ハワイ大学のキッカー・松澤寛政(26)が、NFLの国際選手育成プログラム「インターナショナル・プレーヤー・パスウェイ(IPP)」に選出された。【北川直樹】26歳の日本人キッカーへ 夢を追う5年間松澤寛政は1999年生まれ、千葉県市川市出身の26歳。現在、ハワイ大学レインボーウォリアーズでプレースキッカーを務めており、「The Tokyo Toe(トウキョウ・トウ)」というニックネームで親しまれている。
高校時代は幕張総合高等学校でサッカー選手として活動していたが、大学受験に失敗。その後、父親の勧めでアメリカへ渡り、本場の試合を観戦したことをきっかけに「NFL選手になる」という強い決意を固めた。当時、20歳だった。
夢をかなえるため、松澤は東京のステーキ店で働きながら渡米資金を貯金。同時にYouTubeでキッキングの技術を独学で習得した。2022年にはオハイオ州のホッキングカレッジでキャリアをスタートさせ、2023年にハワイ大学に編入した松澤だったが、初年度はレッドシャート(公式戦出場なし)の扱いだった。2024年シーズンに正キッカーに昇格すると、カリフォルニア州立大学フレスノ校戦では残り15秒での決勝FG(TFP)を決める活躍を見せ、大学からのフルスカラシップ受給が決定した。
2025年シーズンに驚異的なパフォーマンスを発揮松澤は今季、カレッジフットボール全体を震撼させるパフォーマンスを記録した。FGは26本中25本を成功させ、成功率96.2%を記録。トライフォーポイントは37本全てを決め、総得点は162点に達した。特に注目すべきは、開幕から25連続でFGを成功させたことで、これはFBS(Football Bowl Subdivision)記録の並ぶ成績である。唯一の失敗はワイオミング大戦だった。
開幕戦での対スタンフォード大学戦では延長時間での決勝FGを成功させ、23-20での劇的な勝利を演出した。対フレスノ州立大学戦では自己最長となる52ヤードのFGを成功させている。シーズンを通じて6試合連続で複数のFGをノーミスで決めるなど、定評がある。この6試合連続での成功記録は、マウンテンウエスト・カンファレンスの新記録である。
主要表彰として全米が認める実力松澤は、今季のパフォーマンスによって、全米の主要なオールアメリカンチームに次々と選出されることになった。なかでも「Walter Camp Football Foundation」のオールアメリカン ファーストチームへの選出は、ハワイ大学初の快挙であり、非パワーカンファレンス校からは唯一のファーストチーム選出だった。同様にCBS Sports のオールアメリカン ファーストチームにも選出されている。
また、アメリカンフットボール年間最優秀キッカー賞である「Lou Groza Award」のファイナリストにも名を連ねた。このほか、AP、The Athletic、Athlon Sports、Sporting News といった主要メディアのミッドシーズン・オールアメリカンでも選出されており、Mountain West Special Teams Player of the Weekは4度受賞している。
日本人初のNFL選手を目指す松澤 写真:NFLジャパン リエゾン オフィス提供NFL IPPプログラムについてNFLの国際選手育成プログラム(International Player Pathway)は、米国外の選手をNFLのドラフトに向けて育成するための重要な機会。2017年に設立されたこのプログラムは、世界中から優秀なアスリートを発掘し、スキルを磨く機会を提供するとともに、最終的にNFLのロースター入りを目指すチャンスを与えるものである。日本人はこれまで、李卓(り たく、当時オービックシーガルズ)や松井理己(まつい りき、富士通フロンティアーズ)がIPPの候補生選考対象になったことがある。