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2025-12-26

ニューイヤー駅伝、王座奪還を目指すHonda 「後半勝負で、“いちばん前を走る”」

ニューイヤー駅伝では至近4大会で優勝2回、2位2回という好結果を残してきた。第70回大会は3年ぶりの王座奪還に挑む

ニューイヤー駅伝(第70回全日本実業団対抗駅伝競走大会)は1月1日に群馬県庁発着の7区間100.0kmで競われる。Hondaは2022年、23年と連覇したが、ここ2年は2位。特に前回は最終7区終盤まで旭化成と先頭争いを繰り広げるも、フィニッシュまで残り500mで離され、8秒差で涙をのんだ。3年ぶりの栄冠奪取に懸ける思いは強い。

順調に力を伸ばした前半戦

今季前半はトラックで好結果が相次いだ。中でも森凪也はシーズン初戦の金栗記念5000mで優勝。アジア選手権、東京世界選手権で日の丸を背負った。また青木涼真は東京世界陸上出場こそ果たせなかったが、3000mSCで日本歴代2位となる8分18秒75で走っている。


日本選手権3000mSC連覇の青木。7月にはアメリカで日本歴代2位8分18秒75をマーク

 「キャプテンの伊藤達彦も自分で引っ張りながら10000mで自己ベストに近いところで走り、昨年度の駅伝で安定感を見せた久保田徹も27分台を出しました。東京世界選手権でマラソンを走った小山直城はまたも世界の壁を感じる結果に終わりましたが、世界大会が2度目ということで、落ち着いてレースに臨めた点は収穫です。夏までは1500mからマラソンまでそれぞれの舞台で力を伸ばせたと思います」

小川智監督は選手ごとにまだ課題はあるものの、前半戦は概ね順調だったと話す。


アジア選手権、東京世界選手権5000m出場の森。世界と戦うために磨いてきたスピードを駅伝で生かす

東日本実業団駅伝は苦戦も、そこから上り調子に

個人の力は伸びたが、11月の東日本実業団駅伝では苦戦を強いられた。1区で先頭から42秒差の14位と出遅れると、そこから大きく浮上できず10位に終わっている。

「テストの意味も込め、前半区間に起用した若い選手が機能しませんでした。1区・中野翔太、3区・吉田礼志はすごくいいか、すごく悪いかのどちらかだと覚悟していましたが、2人とも悪い方に振れてしまいました。4区の小袖英人は昨年と今年前半が良くなく、復活を期待して送り出しましたが、やはり思うような結果になりませんでした」(小川監督、以下同)

世界陸上が9月半ばまであったため、森が起用できず、また若手中心の布陣を組んだため、難しい結果になることは予想していた。しかしここまでの低空飛行は想定していなかったという。「ニューイヤー駅伝に向けてと、長期的なチーム作りの面の両方でチームの新陳代謝が進んでいないことに危機感を感じました」と率直な気持ちを吐露する。


前回3区8位でキャプテンの伊藤は11月の甲佐10マイルで5カ月ぶりに復帰。元旦に照準を合わせている

しかし、芽生えた危機感からか、多くの選手が状態を上げてきた。11月後半に行われた日体大記録会10000mでは出場した3名中2名が自己ベストを更新し、12月4日の甲佐10マイルでも軒並み、設定以上の走りを見せたことに小川監督は手応えを口にする

「記録会では小袖も10000mでベストを出しましたし、久保田は春に続く27分台を出しました。また春の入社以来、なかなか結果の出なかった吉田礼志も甲佐で力どおりの走りができました。中野も海外勢の集団についていく積極性を見せ、東日本からの巻き返しの気持ちを感じます」

加えて、明るい材料は夏以降、体調不良で戦列を離れていた伊藤達彦、同じく夏からアキレス腱を痛めていた青木涼真がそろって調子を上げている点だ。また世界選手権に出場した森もロード対策を進めながら戦線に復帰し、東日本で好走した小山も好調を維持している。エース格の戦力は確実に上がっていると言っていいだろう。

カギは2区と3区。区間上位で進め、終盤へ

前回大会は4区から7区までの3区間合計では参加チーム中、もっとも良いタイムだった。4区で前回区間賞のイェゴン・ヴィンセントは今回も十分にその座が狙える状態にあり、5区には過去区間賞2回、区間2位2回と抜群の安定感を誇る青木が控える。となると1区から3区まででいかに上位でレースを進められるかが優勝へのカギとなる。1区はキャリア十分の小袖や、前回区間9位の森がその候補で、2区と3区は伊藤、小山がそれぞれどちらかに配されることが予想される。


東京世界選手権マラソン代表の小山。甲佐10マイルで自己新の46分06秒をマークするなど好調を維持。前半区間のカギを握りそうだ

「(エースの集まる)2区、3区にいかに強い選手を置けるかで結果は大きく変わってきます。区間賞とまでいかずとも区間3位前後でとどめてくれれば、後半区間に適性の高い選手が多いためそこで勝負できます。どの選手も前回大会前と比べていい状態にありますので、最後まで気を抜かずにコンディショニングに努め、ベストな状態でスタートに立てれば勝負できるはずです」

レースマインドが培われている企業文化により、タイム以上に勝つことに重きを置き、前回大会から“#Hondaは走れ””#いちばん前を“のキャッチコピーも展開している。個人として世界で戦い、チームとして駅伝に勝ちにいくというHondaらしさを発揮するために、そして前回の悔しさを晴らすためにも、今大会は優勝だけを目指して挑む。


前回4区区間賞を獲得したヴィンセント。後半区間の選手たちを加速させる走りが期待される


文/加藤康博 写真/髙野 徹、川口洋邦、田中慎一郎

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