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2026-01-14

【NFL】スティーラーズHCトムリンが退任 十数年に一度の名門トップ交代劇の経緯とは

プレーオフのテキサンズ戦で大敗したスティーラーズのトムリンHC。翌日、退任を発表した=Getty Images

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米プロフットボール・NFLの名門チーム、ピッツバーグ・スティーラーズのHC(ヘッドコーチ)、マイク・トムリンが退任した。現地1月13日午後(日本時間1月14日未明)スティーラーズが、公式サイトで発表した。スティーラーズは前日の1月12日、AFCのワイルドカードでヒューストン・テキサンズに6-30で惨敗して、シーズンを終えていた。


スティーラーズは、スーパーボウル優勝6回(NFL最多タイ)の強豪チーム。トムリンはHC在任19シーズンで、一度も負け越しがなかった。レギュラーシーズンは309試合193勝114敗2引き分け、勝率.628。ポストシーズンゲームは8勝12敗だった。AFC北地区優勝8回、プレーオフ出場13回、スーパーボウル出場2回、優勝1回。

アメフト、バスケ(NBA)、野球(MLB)、アイスホッケー(NHL)のいわゆる「北米四大プロスポーツ」の中で、同一チームで連続19年指揮を執っていたのは、現役ではトムリンが最長だった。

またスティーラーズはHCを替えないことが有名で、1969年以降、57年間で3人の指揮官(チャック・ノール23年、ビル・カウワー15年、マイク・トムリン19年)しかいなかった。

十数年に一度しか起きない名門チームトップの交代劇は、NFLに大きな余波を巻き起こしている。

36歳でスーパーボウル優勝HCに
スティーラーズのトムリンHC。チームスタンダードを維持することで負け越しなしシーズンを続けた=Getty Images


トムリンは、1972年3月15日生まれで、今年54歳になる。カレッジは、アイビーリーグに匹敵するといわれる学業名門校、ウィリアム&メアリー大で、WR/TEとしてプレーした。在学中には、「エプソンIBYボウル」で来日したこともあるという。


卒業後はフットボールコーチの道へ進み、複数のカレッジで、コーチ職を務めた後、2001年にNFLバッカニアーズのDBコーチとなった。2006年にバイキングスでDC(ディフェンシブコーディネーター)を1年務めた後、2007年1月にスティーラーズHCとなった。前任者2人と同じく、30代半ばでの就任だった。

エースQBベン・ロスリスバーガーの活躍もあって、就任2年目の2008年シーズン第43回スーパーボウルを、当時としてはHC最年少の36歳で優勝した。2年後の2010年シーズンにもスーパーボウルに出場したが、グリーンベイ・パッカーズに敗れた。その時のパッカーズのQBが、今季のエース、アーロン・ロジャースだった。

トムリンはQBロスリスバーガーを中心に、チームスタンダードを高く維持することで、負け越しなしシーズンを続けた。しかし、スーパーボウルには2010年シーズンを最後に出場できなかった。

19シーズン負け越しなしも、プレーオフは7連敗
QBロスリスバーガーの引退が、トムリンHCの苦境に拍車をかけた=Getty Images

ロスリスバーガーの衰えや、オフェンスの主力選手の離脱などもあり、チーム力は徐々に低下した。直近10年は、ドラフト1巡指名選手が、エッジラッシャーのTJワット以外は育成できず、チームに定着できなかったのも響いた。レギュラーシーズンは、最低でも8勝8敗の5割を維持したが、プレーオフでは初戦負けが続いた。

2021年シーズン後にロスリスバーガー引退。そこから、スティーラーズはQB選択で迷走した。地元ピッツバーグ大学のヒーローだったケニー・ピケットを1巡で指名したが、エースの能力はなく、2シーズンで降格・放出した。その後はラッセル・ウィルソン、アーロン・ロジャースと、ベテランのビッグネームQBを加入させたが、レギュラーシーズンで勝ち越すだけに終わった。

1月12日のテキサンズ戦敗戦で、プレーオフは7連敗。直近5試合(6シーズン)はすべて10点差以上の大敗を喫していた。スティーラーズのファンは、レギュラーシーズンではなくポストシーズンの勝利を求めている。テキサンズ戦後、ホームのアクリシュア・スタジアムは、近年恒例となったファンによる「Fire Tomlin(トムリンを解雇しろ)」の大合唱に包まれていた。

テキサンズ戦後の記者会見は、チームの公式youtubeで公開されている。トムリンHCは、自分の将来について問われると「今、そんなことは考えていない。試合でやれたこと、やれなかったことだけを考えている」と答え、別の質問には「チームをまとめ上げるという点では、私は常に楽観的に考えている」と話した。この言葉からは続投の意思を示したかと思えた。

しかし、ホームゲームに詰めかけたファンに失望を与えたことについて、どう考えるかという質問については、「何かを成し遂げられない時、言葉は安っぽいものだ。重要なのは、何かをやるのか、あるいはやらないかだ。だから、質問には感謝するが、この業界では人々は口先ばかりだ。やるのか、やらないのかのどちらかだ。」

「you either do or you don't.」というトムリンの言葉の、doが、退任するということだったのかもしれない。

トムリンは1月13日に、アート・ルーニー2世オーナーと会談し、辞任の意向を伝えた。その後、今季のチーム最後のミーティングで、選手たちに退任を告げた。

トムリンのレギュラーシーズン勝利は193勝で、スーパーボウルに4回勝った名将チャック・ノールと並んでいる。チームがトムリンの辞任を受け入れたのは、ノールの記録を超えさせないためといううがった見方もないわけではない。

「スティーラーズへの敬意と愛情は決して変わらない」

トムリンの声明は次の通り。

「熟慮を重ねた末、ピッツバーグ・スティーラーズのヘッドコーチ職を退く決断をいたしました。

この組織は長年にわたり私の人生の大部分を占め、このチームを率いることはこの上ない名誉でした。(現オーナーの)アート・ルーニー2世、ならびに故ルーニー大使※(ダニエル・ルーニー。前オーナー)のご信頼とご支援に深く感謝申し上げます。

また、日々全力を尽くしてくれた選手たち、そして献身的な姿勢で、この旅路を意義深いものにしてくれたコーチ陣とスタッフの皆様にも感謝いたします。

スティーラーズ・ネイションの皆様にも感謝申し上げます。皆様の情熱、忠誠心、そして高い期待こそが、このフランチャイズを真に特別なものにしているのです。ピッツバーグでのコーチングは他では得難い経験であり、このチームの管理者であったことを永遠に誇りに思います。

この章は閉じますが、ピッツバーグ・スティーラーズへの敬意と愛情は決して変わることはありません。この組織の未来に胸を躍らせると同時に、ピッツバーグでコーチを務めた時間に対し、永遠に感謝し続けます。」
スティーラーズのトムリンHCが発表した退任の声明

アート・ルーニー2世オーナーの声明は次の通り。

「本日の会談において、トムリンHCはヘッドコーチ職を退く決意を固めたことを私に伝えました。過去19年間にわたり共に歩んだ努力、献身、そして数々の成功に対し、マイクへの感謝の念は計り知れません。トムリンコーチへの敬意と感謝の気持ちを言葉で表すのは困難です。

彼はチームを6度目のスーパーボウル制覇に導き、在任中に13回のプレーオフ進出を果たしました。その中にはキャリア通算8度のAFC北地区優勝も含まれます。19年間で一度も負け越しのシーズンがなかったという彼の実績は、おそらく二度と再現されないでしょう。

私と家族、そしてスティーラーズ経営陣に関わる全ての人々は、マイク・トムリンがスティーラーズのフットボールに捧げた情熱と献身に永遠の感謝を捧げます。」

トムリンをHCに求めるチームは?
スティーラーズのトムリンHCとチーフスのアンディ・リードHC=Getty Images


NFLは、1月第1週のレギュラーシーズン終了後、HCの解任が相次いでいる。日本時間1月14日現在、HCが空席となっているのは、スティーラーズを除いて8チーム。アリゾナ・カーディナルス、アトランタ・ファルコンズ、ボルティモア・レイブンズ、クリーブランド・ブラウンズ、ラスベガス・レイダース、マイアミ・ドルフィンズ、ニューヨーク・ジャイアンツ、テネシー・タイタンズとなる。おそらく大半のチームが、年齢的に脂の乗り盛りで、実績もあるトムリンには食指が動くのは間違いない。

だが、米スポーツ専門局ESPNのアダム・シェフターによれば、トムリンは2026年はNFLのコーチを引き受ける予定はないという。

一方で、トムリンは2024年に、2027年シーズンまでの契約延長に合意していた。契約期間中の辞任であるため、スティーラーズはトムリンのコーチング権を保持している。2027年シーズン終了前にNFL他チームのコーチ職となった場合、そのチームは、スティーラーズに対し何らかの代価を支払う必要がある。

2023年オフに、デンバー・ブロンコスが、ショーン・ペイトンをHCに招聘した際、ペイトンの契約権を保持していたニューオーリンズ・セインツに対し、1巡を含む複数のドラフト指名権を譲渡したことが知られており、スティーラーズにもその可能性が残されている。


※ダニエル・ルーニー前オーナーは、オバマ政権時に駐アイルランド大使として赴任していた。

【小座野容斉】

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