close

2022-01-28

【NFL】QBロスリスバーガー「心からの感謝を込めて」引退を表明 スーパーボウル2回優勝、パス歴代5位

正式に引退を表明したスティーラーズのQBベン・ロスリスバーガー=photo by Getty Images

全ての画像を見る

米プロフットボール・NFL、ピッツバーグ・スティーラーズのエースQBベン・ロスリスバーガーが、現地1月27日、引退を表明した。自身のツイッターアカウントに、動画を投稿し、その中で「私は、心から感謝を込めて、フットボールから引退します」と語った。
 NFL史上5位の通算パス記録を持ち、スーパーボウルにも2回優勝したロスリスバーガーは39歳。開幕前から、今季限りでの引退が濃厚とされ、12月には米メディアで引退報道がなされていた。スティーラーズは今季AFCの第7シードでプレーオフに進出したがAFC第2シードのチーフスに大敗。それがロスリスバーガーの最後のプレーとなった。(写真はすべてGetty Images)

【ロスリスバーガーが投稿した引退メッセージ動画】

 ロスリスバーガーが投稿した動画は、本拠地ハインツ・フィールドのロッカールームを片付ける場面から始まった。クリーツ(スパイク)を片付け、扉に貼ってあった子どもたちの写真を剥がすというものだった。
その後過去の名場面が流れた後、アシュリー夫人と3人の子どもと共にロスリスバーガーが画面に登場した。

「フットボールというゲームが私にとってどのような意味を持ち、どのような恵みを与えてくれたのか、どのように言葉にすればよいのかわかりません。自分がフットボールにすべてを捧げてきたという自信がある一方で、フットボールが私に与えてくれたすべてのものに感謝の気持ちでいっぱいです」
 「ピッツバーグ・スティーラーとしての18シーズンという名誉と、ホームと呼べる場所に恵まれました。」


 "The journey has been exhilarating, fueled by a spirit of competition,Yet the time has come to clean out my locker, hang up my cleats and continue to be all I can be to my wife and children. I retire from football a truly grateful man."

「この旅路は、戦って勝つという魂を原動力とした、爽快なものでした。しかし、ロッカールームを整理し、クリーツを干す時が来ました。そして、これからも、妻と子供たちのために全力を尽くし続けます。私は、心からの感謝を込めて、フットボールから引退します。」


 スティーラーズのオーナー、アート・ルーニー2世は、ロスリスバーガーの引退に対し、以下の声明を出した。
「ベンは、2004年にドラフト1巡目で入団して以来、我々の成功に欠かせない存在だった。彼の活躍により、我々は、スーパーボウルを2回制覇することができた。過去18年間、彼が組織にもたらしたすべての成功に、我々は永遠に感謝している。ベンは我々のチームの歴史の中で常に偉大な選手の一人とみなされ、彼の決断力、タフネス、競争力は、組織の誰もが、そして世界中のスティーラー・ネーションが覚えていることだろう」
スティーラーズのQBベン・ロスリスバーガー=photo by Getty Images
 2020年シーズンはスティーラーズは開幕11連勝、シーズン中にはロスリスバーガーのキャリア3回目のスーパーボウル制覇も夢ではないとみられていた。しかし、シーズン終盤でチームが急に失速し、プレーオフには出場したものの、宿敵・ブラウンズに敗れた。自身のパス成績も、対戦相手に対策されて下落。限界説が取りざたされる中、もう1年現役を続行するために、3月に契約をリストラして2021年シーズンに臨んだ。

 今季は、試合によって調子の波があり、昨年のような安定したパフォーマンスを見せられなかった。堅実なパスプロテクションを見せてきたOLのスターター5人中4人が抜けたのが災いした。被サック38回は直近の8シーズンで最悪の数字だった。

 それでも、依然として終盤のキャッチアップ能力はNFL屈指だった。第11週のチャージャーズ戦や、第14週のバイキングス戦のように、対戦相手が大量リードして、プリベントディフェンスを敷くと、第4QにTDを量産、逆転勝利まであとわずかに迫る場面もあった。
2021年シーズン第14週、バイキングス相手に、奇跡の逆転勝ち寸前までいったロスリスバーガー=photo by Getty Images
 2021年、レギュラーシーズン16試合で、9勝7敗。3740ヤード、22TD、10INT、レーティング86.4は、10試合以上先発したシーズンでは下から3番目の数字だった。

 最後の試合となったチーフスとのワイルドカード。敗戦後、ロスリスバーガーは
「長い間、スティーラーズの選手としていることができて、とても楽しかった」と語っていた。

「神は私を祝福してくださった。スティーラーズではなく、ブラウンズに入団していたかもしれないと、よく冗談を言うけれど。私がブラック&ゴールドのジャージーを着ることは、運命だった。ドラフト当日は、(スティーラーズに指名されると知らずに)黒のスーツに金のネクタイをしていた。ただただ感謝の気持ちでいっぱいだ。」

「『スティーラーであるというのはどういうことか』 という遺産を、(先代オーナーの)故ダン・ルーニーから受け継ぐことができれば、というのが望みだった。... 願わくば、私がその一部を何人かの選手に伝えて、スティーラーであることの意味の伝統を継続させ、継承させることができればと思う。」
2004年ドラフトでスティーラーズ1巡指名を喜ぶロスリスバーガー。確かにブラックスーツにゴールドのネクタイだ=photo by Getty Images

26歳までにスーパーボウル2回制覇

 ベン・ロスリスバーガーは1982年3月2日生まれ。オハイオ州の出身で、カレッジフットボール、ミッド・アメリカン・カンファレンスのマイアミ大学オハイオで、1年生からQBとして頭角を現し、3年時の2003年には4486ヤード、37TD、10INTという記録で、チームを13勝1敗の好成績に導いた。
マイアミ大オハイオ時代、まだ21歳のロスリスバーガー=photo by Getty Images
 2004年NFLドラフトの指名順は11位。同期の1巡指名QB4人のうち、イーライ・マニング、フィリップ・リバースに次ぐポジション3番目の評価だった。
 第2週のレイブンズ戦で、エースQBだったトミー・マドックスが負傷。代わりに出場して敗れたもののパスで2TDを決めて、当時のヘッドコーチ、ビル・カウワーの信頼を得る。第3週からスターターに昇格し、そこからチームが破竹の14連勝。ロスリスバーガーはルーキーQBの先発13連勝というNFL記録を作る。

 スティーラーズはチーム史上最高の15勝1敗で第1シードとなり、AFCチャンピオンシップに進出するが、QBトム・ブレイディ率いるペイトリオッツに完敗する。この試合の後で、ロスリスバーガーが、引退を考えていたベテランRBジェローム・ベティスに「私があなたをスーパーボウルに連れていく」と約束する。

 翌2005年シーズン、スティーラーズはAFC北地区2位でプレーオフへ。シード順は6位だったが粘り強い戦いで勝利を重ね、ワイルドカードから3連勝でスーパーボウルに進出した。ベティスとの約束を果たしたのだった。
 シアトル・シーホークスが相手となった第40回大会では、ロスリスバーガーはパスが絶不調。それでも、ベティスをブロッカーにしたQBキープでTDを奪うなど、チームをけん引した。この試合で記録した2つの記録は今も破られていない。史上最年少のスーパーボウル先発勝利QB(23歳10カ月)。そしてスーパーボウル先発勝利QBとしての最低レーティングだった。
26歳、2度目のスーパーボウルでカーディナルスと戦ったロスリスバーガー=photo by Getty Images
 3年後、ロスリスバーガーとスティーラーズはスーパーボウルに戻ってきた。相手はカーディナルス、そしてQBはカート・ウォーナーだった。スーパーボウル勝利経験を持つQB同士の対決は、21世紀になって初めてだった。
 優勢に試合を進めていたスティーラーズだが、第4Q残り2分で、ウォーナーからWRラリー・フィッツジェラルドに64ヤードのTDパスが決まって、カーディナルスが逆転した。
 追うスティーラーズは試合残り43秒で、ロスリスバーガーが、エンドゾーンの右隅にいたWRサントニオ・ホームズに芸術的な逆転TDパス。ロスリスバーガーは26歳で2度目のスーパーボウル優勝を成し遂げたのだった。
26歳、2度目のスーパーボウルで、勝利したロスリスバーガー。中央は逆転のTDパスをキャッチしたWRホームズ=photo by Getty Images
           ◇
 ロスリスバーガーは、その後QBとして着実に進化した。2012年から加入した新たなオフェンスコーディネーター、トッド・ヘイリーの下で、パス能力がグレードアップした。WRアントニオ・ブラウン、RBレビオン・ベルと、チーム史上最強のオフェンストリオを結成し、AFCを席巻した。4年連続で二けた勝利を挙げたが、プレーオフでは勝ち抜けず、スーパーボウルには届かなかった。
 2019年には肘を負傷して、開幕2試合目で故障者リスト入り。復活をかけた2020年は、前述したとおり、スタートは好調ながら、バッドエンディングだった。

 18年間、247試合に先発し、165勝81敗1引き分け。ポストシーズンは13勝10敗。
スーパーボウルは3回出場し、2勝1敗(第40回シーホークスに○、第43回カーディナルスに○、第45回パッカーズに●)。
パス5440/8443、64088ヤード、418TD、211INT、通算レーティング93.5。
ポストシーズンは、パス498/788、5972ヤード、36TD、28INT、通算レーティング86.7だった。
通算被サック554はNFL史上1位(2位はブレイディの543)。
パス成功と獲得ヤードはNFL史上5位。TD数は8位だった。
2017年シーズンのディビジョナルプレーオフで、ジャガーズ相手に壮絶なキャッチアップを見せたロスリスバーガー=photo by Getty Images

「ブレイディ方式を無視してケーキを焼いた」

入団時のHCビル・カウワー
「ベンをコーチできたことを光栄に思う。彼こそが、真にピッツバーグスティーラーの象徴する存在だ。彼は、スティーラーズの組織とピッツバーグのコミュニティに心と魂を捧げた。彼は、根性、決意、回復力を持ってプレーし、ゲームに対する情熱を持っていることは、現役の間、明確な事実だった。彼は勝者なのだ。ルーキーシーズンから、ベンがQBを務めることで、常に勝利のチャンスが生じるとわかっていた。彼は第4クオーターの勝負どころで最高のパフォーマンスを発揮した。大事な時には必ず力を発揮してくれる頼もしい存在だった。」
「私は、ベンが成し遂げたすべてのことを誇りに思い、彼の素晴らしいキャリアを心から祝福する。」

DTキャム・ヘイワード
「べンはいつでもずっとファイターだった。常に我々にチャンスを与えてくれた。彼はたくさん戦ってきた。彼は2つのスーパーボウルで報われたが、我々は、彼が出場した全試合で、ベン・ロスリスバーガーのすべてを必要としてきた。それを再現することはもうできない。」

元ジャイアンツQBイーライ・マニング
「ヘイ、ベン、ただただ、引退を祝福したい、相棒よ。歴史的な組織に18年も在籍するのは大変なことだったし、そのことにもおめでとうを言う。僕らは2004年のドラフトからずっと絆で結ばれてきた。同期生として一緒にドラフトを過ごせたこと、試合で対戦できたこと、友人と呼べることを、光栄に思う。引退を、最高の気分で楽しんでほしい。」

バッカニアーズQBトム・ブレイディ
「ベンは、『TB12方式』を無視して、『Throw Some Ice On It=冷静になるのを投げ捨てる』方式でキャリアを重ね、プロボウル6回、スーパーボウル2回という歴代最高の成績を残した。ケーキを焼く方法はひとつではない。」
2016年シーズンのAFCチャンピオンシップで、ペイトリオッツに完敗。試合後にQBブレイディと語り合うロスリスバーガー=photo by Getty Images

【小座野容斉】

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事