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2026-02-03

【連載 泣き笑いどすこい劇場】第36回「お宝」その2

猛牛と呼ばれた横綱琴櫻。この大きなおなかの中には筋肉がぎっしり詰まっていた

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傍目にはごくありふれた、どうってことはないものでも、他に代えがたい、自分だけの貴重なお宝を一つや二つ、みんな持っているはずです。
もちろん、それが目玉の飛び出るような高価な文字通りのお宝なら、なおさら結構ですが、それがどうしてお宝か、他人には分からないさまざまな思いがこもった物があります。
力士たちも、自分だけのお宝を大事に持っています。
そんなお宝にまつわるエピソードです。
※月刊『相撲』平成22年11月号から連載された「泣き笑いどすこい劇場」を一部編集。毎週火曜日に公開します。

医師もびっくり

力士の多く、いや、親方も丸々とした大きなおなかをしている。あのおなかの中はどうなっているのだろうか。

平成7(1995)年夏場所、大きな太鼓腹をしていた当時審判部長の先代佐渡ケ嶽親方(元横綱琴櫻)は場所を全休し、部屋のある松戸市内の病院で胆石の除去手術を受けた。退院後、この突然の手術についてこんな話をしている。

「これまで風邪一つ、ひいたことがなかったんだよ。それが今年の3月、大阪で風邪をひいちゃってね。これまで人間ドックにすら、入ったことがなかったんだけど、あちこち痛いものだから、東京に帰って精密検査を受けたんだよ。そしたらびっくりさ。なにしろこの体だからね(当時の体重130キロ)。手術するとき、医者が『親方、おそらくおなかには脂肪がいっぱいついているでしょうから、そのつもりでやります』と言うんだよ。こっちも、そうだろう、と思っていたんだけど、いざ開腹してみたら、脂肪はほとんど見当たらず、筋肉ばっかりだったそうだ。おかげで、3時間で終わるつもりの手術が5時間もかかった。あとで、医者が、やっぱりお相撲さんのおなかは違いますね、と感心していたよ」

このとき、胆嚢から米粒大の胆石がなんと169個も出てきたという。さすがは横綱経験者、数えるだけで大変な数である。先代佐渡ケ嶽親方は、

「全部、開腹記念に取ってある。一種の宝だな。そのうち、ネックレスにでも作り変えようか」

と冗談めかして話していたが、この胆石ネックレス、その後、作ったという話を聞いたことも、見たこともなかった。

月刊『相撲』平成25年10月号掲載

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