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2025-12-19

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第34 回「想定外談話」その2

平成29年名古屋場所12日目、白鵬は玉鷲を寄り切って、魁皇に並ぶ通算1047勝の史上最多勝を達成

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思い出の多かった古い年が行き、新しい年がやって来ようとしていますね。
あなたにとって過ぎにし年はどんな年でしたか。
なんですって? 良くもなし、悪くもなしだったって。
つまり、想定内だった、ということですね。
それは、それでまた、よろしいんじゃないでしょうか。
想定外だった、ということになればひと騒動ですから。
力士たちが取組後に漏らすひと言もそうですよ。
想定内だったら、「まあ、そうだろうな」で済みますが、
想定外だったら、虚を突かれた感じで目をシロクロしたり、
ずっこけたり、ニヤリとしたり、聞く方も大忙しです。
そんな想定外のおもしろ談話を紹介しましょう。
年の最後の、福笑いです。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

肩を落とした理由

負けて悔しいのは当たり前ですね。でも、それだけじゃありません。力士たちのハートは、想像以上にナイーブなんです。
 
平成29(2017)年名古屋場所12日目、白鵬は関脇玉鷲をイナしたり、張ったりの激しい相撲で攻め立て、最後は左を差して寄り切って11勝目(1敗)を挙げた。これはまた、魁皇が持つ通算1047勝に並ぶ史上最多勝記録でもあった。
 
前日、御嶽海に敗れ、記録達成に“待った”を掛けられたこともあって、

「すんなりいっていたら、ここまで(喜びは)いっていない。去年1年間、ケガもあったりして、ひと味も、ふた味も、おいしい」
 
と白鵬は手放しで喜んだが、対照的だったのはこの記録に残る白星を献上した玉鷲だった。悄然と肩を落として支度部屋に引き揚げてくると、こう言っていかにも悔しそうに唇を噛みしめた。

「ああ、これで何度も(自分が負けた映像が)テレビで流れる。(オレも御嶽海のように)勝って、もう1日(記録達成を)延ばしたかったよ」
 
オイオイ、悔しかったのは負けたことじゃなくて、そこかい。この予想に反する反応に、まわりの人間は、担当記者や付け人を含めて、みんなずっこけた。
 
このとき、ついに肩を並べられた浅香山審判委員(元大関魁皇)はちょうど土俵下におり、

「すごいね。1200勝ぐらい、いくんじゃない」
 
と拍手を贈っていたが、白鵬の勝ち数は1187勝に留まった。

月刊『相撲』令和4年1月号掲載

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