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2026-02-17

【連載 泣き笑いどすこい劇場】第36回「お宝」その4

元大鵬こと故納谷幸喜さんの国民栄誉賞表彰式で安倍晋三首相から記念の盾を受け取る芳子夫人と個人の遺影を抱いて同席した白鵬

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傍目にはごくありふれた、どうってことはないものでも、他に代えがたい、自分だけの貴重なお宝を一つや二つ、みんな持っているはずです。
もちろん、それが目玉の飛び出るような高価な文字通りのお宝なら、なおさら結構ですが、それがどうしてお宝か、他人には分からないさまざまな思いがこもった物があります。
力士たちも、自分だけのお宝を大事に持っています。
そんなお宝にまつわるエピソードです。
※月刊『相撲』平成22年11月号から連載された「泣き笑いどすこい劇場」を一部編集。毎週火曜日に公開します。

最後の一葉

前回、朝青龍を紹介した以上、白鵬の宝にも触れなければなるまい。平成25(2013)年1月19日、昭和の大横綱の第48代横綱、納谷幸喜さんが亡くなった。72歳だった。

この亡くなる2日前の初場所5日目の朝、白鵬は納谷さんの体調がすぐれないため、伸び伸びになっていた面会のために納谷さん宅を、妻の紗代子さんと訪れた。

「これから検査入院する。その前だったら」

と、芳子夫人にやっと許されたのだ。面会時間はおよそ5分。苦しい息遣いだったが、納谷さんは白鵬に、

「頑張れよ。いい加減なことをしちゃダメだ。ビシッと。ちゃんとしていれば、みんなが認めてくれる」

と言葉をかけ、最後に車椅子の大鵬さんを中心にして、その後ろに白鵬、右側に紗代子さん、左側に芳子夫人が並んで記念写真を撮った。納谷さん最後の写真だ。

この写真、白鵬の自宅の最も神聖な場所である横綱推挙状の前に額に入れて飾られ、白鵬の心の支えになっていた。白鵬の宝だ。

月刊『相撲』平成25年10月号掲載

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