現在Youtubeでの無料配信を再開し、旗揚げから約5年を迎えるプロレス団体・GLEAT。その実況を務める鈴木健.txt氏が、現場で感じたGLEATの現在地をコラムとして綴った。 昨年12・30新宿FACEは、私自身にとって久しぶりのGLEATだった。そこで感じたのは、後楽園ホールや大会場の規模ではないものの、客席から確実に伝わる熱量。それがリング上と共鳴し、プロレスならではのグルーヴ感を発生させていた。から眺めるだけだと、そうした実態は伝わってこない。ましてや2025年のGLEATは、11月3日の横浜BUNTAIにおけるビッグマッチが満員にほど遠いという現実にブチ当たり、その後は年末をもってCIMA、愛鷹亮が退団し、田村潔司エグゼクティブディレクター、吉野正人コミッショナーが契約満了につき団体を離れることが発表された。
退団者が出ることは、いかなる形であってもネガティブにしか映らない。当然のごとく「GLEATは大丈夫なのか?」という声も多かった。そのイメージが強かったから、新宿FACEに発生した熱狂空間に驚かされたのだ。大会後、観客の一人に聞くと「今日は、今年一番の盛り上がりでした」と顔を上気させながら言った。もしかすると、この日以上に動員できた大会もあっただろう。ただ、これほど選手とファンによる一体感を味わえたのは久々だと。密閉度の高い新宿FACEだったからというのもあるが、何よりこの日は試合内容がよかった。
オープニングでは河上“シャーマン”隆一率いる反GLE MONSTERSが我が物顔で暴れまくり、オーディエンスをエキサイトさせ、第3試合では渡辺壮馬がキャラクターの濃さで黒潮TOKYOジャパン&立花誠吾と渡り合った揚げ句、プロレス総合学院の先輩にあたる立花から勝利。高校球児コンビを結成したT-Hawk&田村ハヤトに吉岡世起を加えたトリオが、GLEATでもっとも勢いを誇るBLACK GENERATION INTERNATIONALを下し、タッグ王座のG-INFINITY挑戦を表明。この6人タッグマッチのスピード&パワフルな攻防が興行に加速をつけた上で、3大タイトルマッチへとつながるという流れもよかった。
2カウントフォールルールで争われるG-RUSHタイトル戦は、ベテランの田中稔と鈴木鼓太郎が短距離走のようなプロレスで目まぐるしい闘いを見せ、延長戦では1カウントフォールというスリリングな中、王者・田中が防衛。カラー的には若い選手向きのベルトを、日本のジュニアシーンで数々の実績を積み上げてきた2人が必死になって争うという情景が胸に染みた。
そしてLIDET UWF世界戦は盤石の防衛ロードを進む中嶋勝彦が、愛鷹の執念を受け止めた上で退ける。その闘いぶりを見て、なぜ王者の独走状態が続いているかわかった気がした。UWFスタイルはGLEATが旗揚げ時から掲げてきた試みであり、またテーマである。それを、中嶋勝彦というプロレスラーの存在感の方が上回っているのだ。もちろん技術も強さもこのベルトを巻くには必要だが、LIDET UWFが中嶋の世界観に凌駕されている現状を思うに、違ったアプローチをしなければ止めるのは難しいと感じた。GLEATにその道筋を敷いた田村が離れた今こそ、この王座に関しては独自の方向性を見いだすべき。中嶋政権は、その象徴とも言える。
メインイベントはエル・リンダマンがTJPの挑戦を受けたG-REXタイトル戦。この試合のチャンピオンに対する観客の後押しが、前述した熱量そのものだった。ネガティブなことが続いた2025年のGLEAT。その上でチケットを買い、会場へ足を運ぶファンは言うなれば筋金入りのサポーターである。「それでもこの団体を見続け、応援したい」と思わせる何かがなければ、この空間にはいないはず。だから熱量というよりも、思い入れの密度が濃かったのだと思う。小さい体でありながら、GLEATを背負う覚悟でベルトを守り続けるリンダマンの姿が心を揺さぶる。TJPの猛攻を耐え凌いだ上で、タイガー・スープレックス・ホールドからスリーカウントを奪ったリンダマンは、まさにマイナスをプラスにひっくり返す、プロレスのジャンル性を体現していた。
2026年に向けての希望を提示したGLEAT。両国国技館まで進出した団体が新宿FACEクラスで盛り上がったといっても特筆されるものではないのだろうが、今はどんなに小さな光でも次につなげることが再優先される。年が明けた1月20日、同じく新宿FACEではB.G.I.にARASHIとJDリーが加入し、現有勢力としては一番の大所帯に。みちのくプロレスで東北タッグのベルトを持っているとはいえ、ARASHIはプロレス界的にまだまだ知られていない存在。韓国から参戦するJDも未知数である。そういった、色づけされていない選手がキャラクターを確立させるためのステージになっているのもGLEATのリング。自由を掲げるB.G.I.に入ったことで秘めたるポテンシャルを発揮する土壌が整った。そしてそれは、その日のうちに行動となって現れる。
この日のメインは石田凱士&KAZMA SAKAMOTOvsT-Hawk&田村のG-INFINITY戦。まさに、現在のGLEATにおけるタッグの最前線と言える顔合わせだ。どの団体でも、シングルとタッグのタイトルマッチが並べば前者がメインに据えられるのが常である。だが、この日の内容は仮に同日、G-REXもラインナップされ、こちらが最終試合としておこなわれても万人が納得すると思えるほどだった。シングルマッチとは違うタッグならではの醍醐味、止まらぬ疾走感、KAZMAという妙味、さらには石田とT-Hawkの生身の関係性。いくつものポイントが絡み合い、見る者はトランス状態へといざなわれた。
その上で、T-Hawk&田村という強力タッグを退け、ユニットとしての勢いも見せつけた王者組だったが、そこに次期挑戦者組として名乗りをあげたのが、ARASHIと加入したばかりのJD。それに対し、石田は2・11後楽園ホールでやろうと返答した。今のGLEATにとっての後楽園ホールは、ビッグマッチである。去年までなら同じように新宿FACEの規模でやって、大場所はもっとネームバリューのあるチーム、あるいは他団体の選手を持ってきたかもしれない。しかし石田の提案を受け入れ、所属ではないものの“自前”の若い力で勝負する覚悟を打ち出した。これも、団体として変わろうとする姿勢の一つだろう。
その後楽園大会だが、観衆は団体発表で619人。健闘したととる見方もあれば、満員にはほど遠い現状を指摘する声も出た。5周年イヤーとなる今年、鈴木裕之社長は「本当の旗揚げ」と位置づけた。それをして「4年間やってきてようやくスタートかよ」と受け取る向きもあるだろう。その中である意味、一番外に届いていると思われるのがシャーマンだった。リング上の立ち振る舞いや言動がわかりやすいのと、プロレスファンに対してのフックがある。いい意味で面白がられる存在が、シャーマン様。この“面白がられる”というのがプロレスでは重要なのだ。
2・11後楽園は、シャーマン化して初のG-REX挑戦という格好の舞台だったが、そのメインは思わぬ結末を迎える。反GLE軍のメンバーであり、負傷欠場中のブラスナックルJUNが加勢したものの、ブラスナックルパンチが誤爆し、それが致命傷となってシャーマンは完ぺきなまでのピンフォール負けを喫した。そして、敗れたシャーマンに対し「負け犬には用はねえ!」と言わんばかりにJUNが暴行、一方的に反GLE MONSTERSの解散を宣言してしまった。なんでも、自分でイチからユニットを創るのだという。
プロレス総合学院1期生時代の頓所隼は、こんなにも強烈な自己主張をする人間ではなかったのに、いったいどこでこれほど変わってしまったのか…と思いつつリングを見やると、どうも河上の様子がおかしい。なぜ自分がその場にいるのか把握できていないようだった。どうやらブラスナックルのパンチを食らった衝撃で、体に宿っていたシャーマンが抜け正気に戻ったらしい。これまで悪の限りを尽くしまくったのに、GLEATのファンは河上隆一が戻ってきたことを歓迎した。
反GLEは消滅したものの、今後はブラスナックルJUNを中心とした反体制ユニットが発足される模様。解散としつつも実質的には河上一人が追放された形だ。一方、LIDET UWF王座は中嶋が強敵・青木真也をノーザンライトボムで叩きつけ7度目の防衛に成功。もう敵はいないと王座封印を宣言。それに黙っていなかった壮馬が、3・8新木場1stRINGの「LIDET UWF Ver.8」で挑戦する。この一戦が、今後のGLEATにおけるUWF路線の行方を左右する。
これからGLEATという入り口をくぐる方は、まず3・8新木場でLIDET UWFの現在を見届けたあと、3・12新宿FACEからの生まれ変わった河上を注視すべき。その上で、B.G.I.の疾走感やT-Hawk&田村のわちゃわちゃ感、そしてリンダマンのポジティブさも“面白がって”いただきたい。プロレスは、どこからでも入り口は通れる。だから遅れたということはない。7月1日に予定される5周年記念大会までの物語を、熱量と濃密さにあふれたものとするには、あなた方の思い入れが必要なのです――。