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2026-04-01

「田村潔司を見返したいんです」伊藤貴則がLIDET UWFにこだわる理由

LIDET UWF世界王座挑戦が決まった伊藤貴則

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3・8新木場で中嶋勝彦から逆転勝利を奪い、LIDET UWF世界王座新チャンピオンとなった渡辺壮馬だが、ベルト封印の意思は変わらず。そこに待ったをかけたのが、井土徹也との次期挑戦者決定戦に勝った伊藤貴則だった。両者のタイトルマッチは4・8新宿FACEにておこなわれる。UWFスタイルの継続自体に賛否両論ある中、伊藤は一貫して強いこだわりを持ち続けている。その根源には何があるのか聞いたところ、実に生々しい理由を明かした。(聞き手・鈴木健.txt)

――まず、LIDET UWFタイトルをめぐる一連の流れに関し、思うところを改めてお聞かせください。

伊藤 僕があのベルトを中嶋勝彦に獲られたあと、自分のケガだったり交通事故だったりがあって、ずっと獲り返したい気持ちはあるんだけど獲り返せないという状況が続いて、傍から見たら中嶋勝彦の好きなように扱われて自分たちの目指していたLIDET UWFが全部壊されたと映ってたし、同時に「フザケんな!」っていう気持ちもいっぱいでしたね。アレは自分たちが最初に目指していたのとは違うものですから。僕らが表現していたものには殺伐感や緊張感があったし、その中で歯を食いしばってやってきたのに、中嶋勝彦がチャンピオンになった以後は自己満足にしか見えなくて。自分がケガをして闘いの中に参加できなかったのが悪いのはわかっているけど、チャンピオンがあれだけ殺伐感のないフザケた試合ばかりやっているのが、現状に表れてて。

――現実として、中嶋選手はベルトを明け渡すまでは7連続防衛と、誰も止められませんでした。

伊藤 強いのは認めます。自分も負けているわけだから(2024年7月1日、TDCホール。第2代王者・フジタ“Jr”ハヤトが返上し、新王者決定戦を中嶋と争うもレフェリーストップで敗北)。でも、そこに殺伐感があったかどうかといったら、僕はあったとは見えなかった。強さと姿勢は、別じゃないですか。結局、中嶋勝彦からはLIDET UWFをどうしたいかというのが見えなかったんですよ。取り返そうにも交通事故で手術もして、何もできなかった自分には一切の実績がなくて、自分には挑戦する資格がないなって。でも、あいつからベルトを獲り戻したいという思いは僕が一番強いはず。それは井土でも壮馬でもない。なぜなら、負けた本人だからです。

――それが中嶋選手の封印宣言で実績を作るどころではなくなったと。

伊藤 そうです。「さんざん好き勝手に遊んだ揚げ句に封印するってなんだよ!?」ってなるじゃないですか。飽きたらポイ捨てって、結局はあのベルトに対する思い入れなんてそんなもんなんですよ。中嶋には初代王者トーナメントに出場した人間がどんな思いをしたかわかるはずもない。本当に、あれは精神的にもやられましたからね。一生忘れることのできない経験を僕も壮馬もしたということです。今までで一番怖さを感じたし、その怖さに打ち克つために僕はいろいろなものを懸けた。俺が獲らなきゃいけない、誰にも獲らせたくないっていう気持ちがプロレス人生の中でも一番強かった。

――優勝して初代王者になったことで、伊藤選手は逆にあのトーナメントで敗れた選手たち(青木、渡辺、田中稔、飯塚優、井土徹也、田村男児、佐藤光留)の存在までを背負うことになったと思います。

伊藤 本当に、そういう思いでした。あのメンバーで、本当の意味で生き残るための闘いをしたわけだから、生き残った人間がLIDET UWFに対してどう向き合うかはずっとついて回る。それを僕自身の意志とはまったく関係のないところで封印なんてされたら、たまったもんじゃないですよ。今回壮馬が選ばれたのも、ちょっと手をあげたのが早かったっていうだけじゃないですか。違うだろ、俺だろって思いました。そこは納得できなかったけど、自分の目の前で壮馬は中嶋からベルトを獲った。中嶋戦前の壮馬のインタビュー、読みましたよ。あれは壮馬の気持ちがすごく伝わったし、理解もできた。でも、試合に関しては「なんだあれは?」でした。

――どういうことですか。

伊藤 中嶋勝彦に対してです。おまえはそんなんで負けるやつじゃないだろうって。これまでの実績からしても、あの負け方には疑問符しかつかなかった。壮馬に対してはなんの文句もない。それほどの執念のスリーパーで絞めたと思うし。だけど僕から見たら、中嶋勝彦は手を抜いたとしか映らなかった。なんですかね、荒らすだけ荒らして勝手に区切りをつけて、勝手に去っていくつもりかよ!としか思えなかった。去り際に「これから頑張れよ」みたいなことを言われましたけど、僕は返事もしませんでした。あれも中嶋的にはわざとやっているんでしょ?意味深なことをやっているように見せて、こっちをナメた態度で来たにすぎないんだなと思いました。

――ご自身は次期挑戦者決定戦で井土選手を破ったわけですが、あの試合は手応えがあったんじゃないですか。

伊藤 僕は井土のことを一緒にLIDET UWFを大きくしていく存在だと思っているから、やはり同じ方向性の相手とやると楽しささえ感じましたね。UWFルールって、本来は楽しさなんて感じる余裕はないんですよ。一瞬で関節を極められたり、打撃でいいモノが入ったりしたらそこで終わりだから、やっている最中はそんな余裕もない。だから、楽しさを感じるのは試合が終わってからなんです。でもあの時は、やっている最中に「うわー、楽しいわ!」って思って。殺伐感もあったけど、それを高揚感が上回ったというかハイになったんだと思います。まあ、あの場で壮馬が封印を宣言しても僕がさせなかったですけどね。僕にはその権利がありますから。あいつにはあのトーナメントを経験して、ハードヒットにも出てここまでやってきたんだから、その積み重ねてきたものをもっと広げろって言いたい。なんのために苦しく、怖い思いをしてきたのか。あの気持ちを忘れるなよって壮馬に言いたいんで、それは次のタイトルマッチでぶつけます。

――4・8新宿FACEでのタイトルマッチはLIDET UWF世界王座の存続が懸かっています。

伊藤 LIDET UWFを思うがゆえに封印するという人間と、絶対に封印させたくない人間、どっちの思いが強いかじゃないですか。通常のプロレスルールとは違っても、そこはプロレスラー同士だからあのルールに基づいて表現や動機をぶつけ合う場だと思います。初代王者になって描いていたものと比べると、この現状は不満でしかない。僕はもう一度ベルトを巻いたらやりたいことがあって、これまでLIDET UWFルールでやって負けた選手一人ひとりにリベンジをしたいんです。ベルトが懸かれば、一度勝ってももう一度やるってなるじゃないですか。だから僕には、あのベルトが必要なんです。そして、まだこのルールでやっていなくて対戦したい選手もたくさんいる。それがLIDET UWFを大きくしていくことにつながると思うし。

――伊藤選手はUWFのムーブメントをリアルタイムで見た世代ではないですが、なぜこのスタイルに対しそこまで自分を注ぐことができるのでしょう。

伊藤 正直、GLEATに入ってこれを始める時点で、そういう気持ちがあったわけではなかったんです。でも、続ける中で自然と責任感が湧いたのかもしれない。UWFルールとG PROWRESTLINGの二刀流に関しても自分の中でこだわりがあるし、あとは…僕らは最初、田村潔司から入ったじゃないですか。正直、苛立ちの方が強い。田村潔司発信で始めたLIDET UWFなのに、自分で始めたクセに放ったらかして、捨てていった。僕からすると中嶋勝彦と同じです。

――でも、LIDET UWFを始めるにあたり田村さん(2025年12月31日をもって退任)の指導を受けたんですよね。

伊藤 今まで言ってこなかったですけど…僕は練習も誰よりも真面目にやってきたけど、見ていない上で「あいつはやる気がない」ってとらえられたんです。それで、いつの日か練習メンバーからも外されて…名前は伏せますけどこいつ、頑張りが足りないんじゃないの?と思う人間が呼ばれるという。それに対し、ずっと「なんでだ?」という気持ちが強かったんです。頑張るなんて当たり前のことなんだけど、見てもいないのにやる気がないって思われたら、僕は理不尽にしか思えなかった。その揚げ句にLIDET UWFを捨てていった人です、僕にとっては。だからね、見返したいんですよ。このルールによる闘いをもっともっと広げて、もうあの人が出ざるを得ない状況を作りたい。師匠だとは思っていないし、むしろ「フザケんな!」の方が強いですね。今に見てろよ!ですよ。僕には、その責任があります。ただ、それにはベルトが必要なんで封印はさせないです。田村潔司とベルトの存在が自分を突き動かします。

――チャンピオンになった壮馬選手とのタイトルマッチはどのようにシミュレートしていますか。

伊藤 これまでの試合を見た限り、トータルで自分が負けている要素はないです。ただ一発の蹴りだったり、この前見せたようなガムシャラな気迫?その付け入るスキさえ見せなければ必ず勝てます。あいつが封印を口にしているのは、LIDET UWFが中途半端になるぐらいなら…ということですよね。だったら二人で中途半端じゃないLIDET UWFをやれば封印する理由がなくなるわけで。4月8日は、そういう試合をやった上で僕が勝ちます。

――見る側がLIDET UWFに乗れない理由の一つに、ビジョンや将来的な具体性が見えづらい部分があるからだと思うんです。でも、話をお聞きしてそのあたりが見えてきました。

伊藤 初代王者を決めるトーナメントの時って、ファンの皆さんもワクワクしていたじゃないですか。今の時代にUWFをやることでどうなっていくんだろうっていう期待感があった。僕はそれを取り戻したい。ビジョンを持った人間がベルトを巻くことで、それを形にしていけると思うんです。僕が作りたいUWFは過去とは別で、違うもの。そこは一緒のものと考えてほしくない。新しく創りあげるものですから。その違いがわかりづらいのもわかってるし、UWFの三文字を名乗っていたら、同じと受け取られるでしょう。だから、これからそこを明確にしていくのも僕のやるべきことだと思っているし、難しい試みではありますけど僕はやっぱり、投げ出したくはないんですよ。

――G PROWRESTLINGの方ではシングル最強決定トーナメントのG-CLASSが開催されますが、伊藤選手、壮馬選手、井土選手はノミネートがありませんでした。

伊藤 それも不満しかないですよ。LIDET UWFのタイトル戦があるから入っていないんですか? だったら一人ひとりとシングルマッチでやって、全員倒してやるっていう気持ちです。去年はまったく稼働できなかった分、溜まりに溜まっているんで、今年はそれをG PROWRESTLINGでもLIDET UWFでもぶちまけます。僕はネガティブをポジティブに転換するのは得意な方なんでLIDET UWFにしろ、あるいはGLEAT自体がネガティブな状況にあったとしても、それをひっくり返してこその伊藤貴則だと思ってください。まずはLIDET UWFのベルトを自分の腰に戻して、中嶋勝彦が崩したLIDET UWFを建て直した上で、リベンジすべき相手を倒して…今は名前を伏せますが闘いたい人もいるので、それらを実現させていきます。

BBM

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