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2026-05-21

【陸上】アジア大会選考レースの男子10000mで鈴木芽吹が代表内定 ラスト2000mが勝負のカギ

鈴木が男子10000mでアジア大会の派遣設定記録を突破し、アジア大会代表に内定した(写真/中野英聡)

5月10日、第13回木南道孝記念大会で行われたアジア大会選考レースの男子10000mで同種目日本記録保持者の鈴木芽吹(トヨタ自動車)が27分11秒20で優勝。27分31秒27のアジア大会派遣設定記録を突破し、アジア大会の代表に内定した。

日本選手間での連勝継続も「プレッシャーはあった」

客観的に見れば、鈴木芽吹(トヨタ自動車)の強さが抜きん出ていた。6000mで亀田仁一路(旭化成)が後れると、1000mごと2分44秒で引っ張るペースメーカーの、マル・イマニエル(トヨタ紡織)に付いたのは鈴木一人になった。そしてイマニエルが8000mで外れると鈴木の独走に。

9000mまでを2分43秒、最後の1000mを2分39秒にペースアップし、2位に20秒差をつける27分20秒11の自身セカンド記録で快勝した。

「前半が遅かったので若干焦りはありましたが、5000mを過ぎて呼吸も落ち着いてきたので、最後まで余裕は持てていました。(国際大会を戦うことを考えたら)ラスト2000mはこの先を見据えた走りをしようと思っていましたが、なかなか上がりきらなくて、まだまだかなと感じました」

しかし24年の八王子ロングディスタンス以降、10000mで鈴木は日本人選手に敗れていない。昨年はアジア選手権(2位)、東京世界陸上(20位)と、代表として国際大会を戦った。11月の八王子ロングディスタンスでは日本記録(27分05秒92)をマーク。完全に第一人者のポジションに就いている。

「僕をマークする雰囲気はひしひしと感じていましたし、実際僕が勝って当たり前、と思われていた部分もありました。何より自分で、ここで勝たなければ話にならないと、プレッシャーをかけていました。見ている人たちからしたら圧勝で、簡単だったんじゃない?みたいに感じるかもしれませんが、僕にとっては価値のあるレースでした」

鈴木を指導するGgoatの大八木弘明総監督も、そこを評価している。

「世界選手権に出て日本記録もつくっているわけですから、追われる立場になっています。そういうプレッシャーに打ち克ちながら、日の丸を付けていかないといけない選手だと、少しずつ自覚しているんだと思います。(選考会である)こういうレースで勝つことが本当の力で、実際勝てる選手になってきました。レベルは上がって来ていると思います」

鈴木はアジア大会派遣設定記録の27分31秒27を突破しての優勝で、アジア大会代表内定を決めた。

昨年11月に10000mで27分05秒92の日本記録を樹立した鈴木がアジア大会選考レースを制した(写真/中野英聡)
昨年11月に10000mで27分05秒92の日本記録を樹立した鈴木がアジア大会選考レースを制した(写真/中野英聡)

日本記録前と同じアルバカーキで合宿。違いは?

今大会前の合宿は、日本記録のときと同じ米国アルバカーキで行った。違いは合宿に入る前の3月28日に1500mのレースに出場し、3分41秒61の自己新で走っていたこと。1500m出場は高校以来だという。

「メニューはそこまで変えていないのですが、合宿前に1500mを入れたことで、全体的にスピードの余裕はあり、その分質は上げられたと思います。絶対的なスピードを上げていく意図を持ってできて、その流れが良い結果につながった。(トレーニングを)常にアップデートしていきたい気持ちがあります」

大八木総監督の言葉が、鈴木の進歩をさらに鮮明にする。

「日本記録をつくったときのトレーニングくらいは、今回も簡単にできていましたから、(アジア大会派遣設定記録の)27分31秒は全然楽に走れると思っていました。ケガもしなくなったし、集中力があります。アルバカーキから帰国して、ここに来るまで結構集中できていました」

練習のスピードを上げても故障をしない理由は何か。鈴木は「疲れは出ますが、お世話になっているトレーナーさんにいろいろやっていただきながら、自分も体と相談する形でやれているので」と明かした。

大八木総監督は「スピードを上げても、長い距離もちゃんとやっています」と、10000mで結果を出す理由を説明する。「それでも大学3年から大きなケガはしていません。芽吹には芽吹のやり方があって、量も質も、芽吹に合わせたトレーニングをしています」

今の良い循環が続けば10000mの26分台も、近い将来に鈴木が実現することができそうだ。

アジア大会でシンに勝つためには?

 鈴木はアジア大会での仮想ライバルとして、G・シン(インド)を考えている。シンには24年の八王子ロングディスタンス、昨年のアジア選手権、そして世界選手権と3戦して3敗。木南記念の「ラスト2000m」に不満を感じているのも、アジア選手権のラスト1周で敗れたシンを意識してのことだろう。

「アジア大会の目標はもちろん優勝なので、そのためにはやっぱり、アジアは速いペースには絶対ならないので、ラストが重要です。そこをしっかり、これからの期間で磨いていきたいなと思います」

アジア選手権の鈴木は9000mまでの1000mが2分51秒で、ラスト1000mが2分38秒で5秒差を付けられた。しかし昨年の日本選手権優勝時には、2分49秒と2分33秒でラスト2000mをカバーした。アジア選手権のように残り1周を切ってからの勝負に持ち込まれるより、残り2000mから仕掛けた方が勝つ確率は大きくなる。

「シンには負けっぱなしなので、なんとか勝たなきゃいけないなって気持ちもあります」

ちなみにシンは、鈴木が日本記録を出したときにお祝いのメッセージを送ってきたという。良きライバルとの決戦が、アジア大会を盛り上げるだろう。

文/寺田辰朗 写真/中野英聡

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