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2026-05-21

【相撲編集部が選ぶ夏場所12日目の一番】義ノ富士が翔猿を引きずり降ろし、トップと1差にピタリ。新三役へも前進

張って止め、突いて起こして、二本差して出る、という理想的な攻めで押し出し。翔猿を3敗に引きずり降ろしてトップと1差につける義ノ富士。新三役への視界も開けつつある

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義ノ富士(押し出し)翔猿

きのう負け越しが決まった大関琴櫻がこの日から休場。土俵に登場する横綱・大関はついに大関霧島ただ一人になってしまった。
 
その霧島は、この日は関脇琴勝峰を叩き込み。この日不戦勝で並びの2敗をキープした琴栄峰の兄に「援護射撃」を許すことなく、出場力士最上位の貫録を見せつけた。
 
一方、きのうまで2敗に並んでいたもう一人の翔猿は、義ノ富士に押し出されて3敗に後退した。これはむしろ、義ノ富士が日大の9年先輩にあたる好調なベテラン力士に幕内上位の力を見せつけた、というべきで、これもまた、上位者が番付の権威を守った一番と言えよう。
 
翔猿は、立ち合いから一気に攻め込まれる恐れこそそれほどないものの、どんな手が飛び出してくるか分からない業師で、上位陣にとっては嫌な相手。受けて立つ力士としては、相手の動きを警戒しつつ、同時に飛び込まれないように圧力はかけていかないといけない、という難しい力加減が要求される。
 
義ノ富士も立ち合いは迷ったようで、「最初は胸から当たって左前ミツかと思ったけど、動かれると嫌なので、“動きを止めて中に入って下から”という感じ。(自身の)右にズレていたので、何かあるかなと。手をつく瞬間まで迷って、たまたま張りにいった。まずは起こすのが先」という立ち合いだったようだ。
 
そしてこの「思い切りというよりも、相手の動きを止める立ち合いにした」というのと、「中に入ってから下から」という作戦は、見事に功を奏する。
 
まず、相手を見ながら左で張っての右差し狙いは相手に内側からはじかれ、潜られかけたが、すぐ二の矢の攻めで突いて起こした。相手が頭を下げ直してきたところで右から左と下から腕を入れて浅いモロ差し。そこからその差し手で起こしながら寄り立て、土俵際も横に逃がさず、最後は押し出した。
 
まず張って止め、突いて起こし、腕を入れて下から起こす。結果的に、義ノ富士としては、ほぼ理想通りの攻めだったと言えるだろう。
 
自らの手でトップ集団の一人を引きずり降ろし、5日目から8連勝。この日を終わってトップと1差にピタリとつけた(3敗は若隆景、義ノ富士、宇良、翔猿の4人)。すでに優勝候補筆頭の霧島との対戦は終わっているので、自力逆転はないが、もし霧島が今後、星を落としたときには、有力候補に躍り出る。「(星)1つしか変わらない。一生懸命ついていきます。自分は全部勝つしかない」と、気合十分だ。
 
さらには新三役へも視界良好。東前頭筆頭の藤ノ川が勝ち越した場合は論議を呼ぶ可能性もあるが、星の上では現在、髙安の休場で空く枠への一番手だ。安青錦が関脇に下がるので、むしろ、もし関脇の誰かが7勝8敗になった場合は紛れがないわけではないが、11勝、12勝と星を積み重ねていければ、三役が手に入る可能性は高い。
 
琴櫻の休場により、霧島は(千秋楽の相手は熱海富士として)、平幕の挑戦をあと2番受けることになった。まずあすは2敗同士の琴栄峰との決戦。14日目は、あすを終わって宇良と翔猿で星のいいほう(星が同じなら番付の近い宇良)と当たる可能性が高くなった。横綱・大関戦がまったくないのは、まあ霧島の責任ではないので、ここからの相手をすべて倒していけば、番付の権威を守った立派な優勝ということになるはずだ。
 
琴栄峰のほうは、果たしてどんな作戦でいくか。勝てるとしたら、二本入るか、投げの打ち合いか。あるいは外掛けなどの足技か。いずれにせよ、じっくりした勝負になっては勝ち目は薄そうなので、とにかく休みなく動いて、霧島を慌てさせることだろう。

文=藤本泰祐

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