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2026-05-22

【相撲編集部が選ぶ夏場所13日目の一番】土俵際、紙一重の打っ棄り! 霧島が善戦の琴栄峰を2敗対決で退ける

右からの突き落としを効かせ、琴栄峰を打っ棄る霧島。ヒザを深く折った右足一本で耐えながら、左足で琴栄峰の右足を払っている動きには驚かされる

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霧島(打っ棄り)琴栄峰

本当に、紙一重の勝負だった。
 
比喩表現ではなく、これが正真正銘の「土俵際での打っ棄り」だ。注目の2敗同士の対決は、霧島が驚異的な粘り腰を見せ、大善戦の琴栄峰を打っ棄った。
 
きのうのこのコラムでは、「琴栄峰が勝てるとしたら、二本入るか、投げの打ち合いか。あるいは外掛けなどの足技か」と書いたが、この日の琴栄峰は、そのすべてを繰り出して、大関を追い詰めた。きのう書いたような、霧島を慌てさせるというのとはちょっと違ったが、強引な投げを誘発し、勝利までほんとうにあと一歩のところまでいった。
 
まず繰り出したのは、立ち合いのモロ差し狙いだ。これは左は入ったが、右は霧島に下からはね上げられ入らず。左四つとなった。
 
だが、すぐ上手に手を掛けたのは琴栄峰のほう。すかさず向正面へ寄って出た。少し腰の浮いた霧島は左から掬い投げを打ちながらなんとか体を入れ替え、西土俵へ寄るが、琴栄峰も左を入れ直しながら残り、土俵中央へ。いったんは霧島が琴栄峰の右上手を切るが、そのあと打った左掬い投げが強引だった。相手の廻しが近くなったところで右上手を取り直した琴栄峰は、寄りからさらに右外掛けで揺さぶり、立ち腰になった霧島を西土俵に追い詰める。
 
しかしここからの霧島の粘り腰はすごかった。廻しは取れていなかったが、右から突き落としながら、覆いかぶさってきた琴栄峰の体を打っ棄りにきた。中でも驚いたのは、さすが柔道経験者、という感じでもあるが、右ヒザを深く折った状態の一本足で耐えながら、左足では琴栄峰の右足を空中で払っていたところだ。この効果で、琴栄峰は飛び、体が割れる形で、先に琴栄峰の手がつくことになった。
 
軍配は攻めていた琴栄峰に挙がったが、物言いがつき、協議の結果、やはり琴栄峰の右手が早く突いたという判断。行司差し違えで、霧島が2敗を守り、今場所3度目の単独トップに立った。

「いや~、残念」というような、満足感さえ漂わせる表情で引き揚げてきた琴栄峰は、

「自分の手が先だった。できれば勝ちたかったけど、あそこまで大関と戦えてうれしかった」

と、この勝負を振り返ったが、現状持てる力を出し切り、素晴らしい勝負を見せてくれた。

「最後の外掛けはいらなかった。あれで足が浮いちゃった。軽くなったところで打っ棄られた。頭から落ちていれば、残れたんじゃないですか」

と、反省も残ったが、勝利は逃したとはいえ、この一番は大いに自信になることだろう。先頭走者ではなくなったが、まだトップとは1差。まずはあす、あさってと食いついていってほしいし、番付を上げて臨むことになる来場所の活躍も、早くも楽しみになってくる。
 
この日は、2敗同士のこの対戦のほか、義ノ富士と宇良、若隆景と翔猿と、3敗同士の対決も2番あったが、義ノ富士、若隆景が勝って、優勝争いの直接対決3番はすべて番付上位の力士が力を見せつける形になった。
 
この結果、2敗が霧島ただ1人、3敗で若隆景、義ノ富士、琴栄峰の3人、4敗に伯乃富士、宇良、翔猿、藤凌駕の4人という形になった。
 
14日目、3敗の3人とはすでに対戦が終わっている霧島は4敗の中で最も番付が上の伯乃富士との対戦が組まれた。そして若隆景と琴栄峰の3敗同士の対戦が組まれてどちらかは3敗で残ることになったため、あすの霧島の優勝決定はなく、賜盃の行方は千秋楽まで持ち越されることにはなった。義ノ富士は14日目は藤凌駕と対戦する。
 
ひとまず霧島優位の形で残り2日となったが、果たしてこのまますんなり霧島が逃げ切るのか、それとももうひと波乱あるのか。すでに霧島と3敗勢との直接対決はないので、霧島次第ということにはなるが、まずは、あすの優勝決定がなくなったことが霧島の精神状態にプラスに作用するのか、マイナスに作用するのか、というあたりが気にはなるところだ。

文=藤本泰祐

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