先場所の対戦における白鵬の張り手、カチ上げの厳しい立ち合いを横綱審議委員会が問題視したが、白鵬は「禁じ手ではないのだから」と、同じ立ち合いでいった。ただ、先場所と違っていたのは、遠藤がしっかりと対策を練っていたことだ。
※写真上=初日に鶴竜を破り勢いにのる遠藤が、白鵬を裏返しにし2日連続の金星を獲得
写真:月刊相撲
白鵬に左から張られた遠藤は左に動きながら当たって、右カチ上げを回避。左を深く差して、白鵬に右腰に食いついた。カチ上げにいけばワキが空く。そこをうまく衝いた。
左を深く差されて上体の起きた白鵬は肩越しに取った右上手から投げを繰り出すが、遠藤はタイミングのいい外掛けで応戦。普通ならこの外掛けで決まるのだが、白鵬も足腰がよく、ここはこらえる。
しかし、遠藤に十二分の体勢を許した白鵬は、遠藤の前進を投げでしのぐことしかできない。右から振り回したところに左足を掛けられ、切り返しに背中から落ちた。柔道なら小外掛け「一本」だ。
勝利の瞬間、遠藤は一度うなずき、舌をペロリと出した。CM以外では笑わない男の表情が緩んだ。研究の成果が出た会心の一番だったのだろう。
支度部屋に戻ると、いつもの寡黙な遠藤に戻っていた。立ち合いについては、「集中して当たっただけ」。外掛け、切り返しについては、「集中してたんで自然と」。2日連続の金星については、「勝ってよかったです」。今後の目標は、「自分の相撲が取れるように」と答えるだけにとどまった。
敗れた白鵬は、「ちょっと強引にいきすぎた。相手にうまさがあった」と遠藤を称えた。遠藤が勝ち名乗りを受けたあとにものすごい『遠藤コール』が沸き起こったが、「それだけいい相撲だったということ」と淡々と振り返った。
文=山口亜土
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