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2026-07-04

【陸上】100m10秒00を持つ清水空跳が布勢スプリントで個人今季初戦に挑む 北信越高校総体のリレーが刺激に

北信越高校総体の4×100mR決勝が今季初戦に。アンカーを任され40秒66でフィニッシュ。チームを優勝に導いた(写真/黒崎雅久)

昨年の広島インターハイ男子100m決勝で10秒00をマークし、U20日本記録、U18日本記録、高校記録を更新した清水空跳(現・星稜高3年・石川)。今季はケガに悩まされ、個人レースの出場は未だなし。北信越高校総体の4×100mRと4×400mRが今季初レースとなった。

スタートをかなり抑えた4×100 mR

昨年のインターハイ男子100mで10秒00の、U20日本記録を樹立した清水空跳(星稜高3年・石川)の今季初戦は4×100mRだった。北信越高校総体2日目(6月19日)の決勝に、星稜高チームの4走で登場。バトンを受けた後はスピードを抑えてスタートし、一時は新潟明訓高(新潟)にリードを許したが、後半で逆転し40秒66でフィニッシュした。

「ケガ明け初戦だったので、西野弥希先生とも8、9割がマックスで、それ以上は絶対に上げない約束で出場しました。新潟明訓の選手に並んだときも、差せる位置だと思ったので自分としては上げたつもりはなく、その流れで走り切れました。シーズン1本目の刺激というか、練習の流れで優勝に持って行けたのでよかったです」

大会4日目(6月21日)は4×400mRの準決勝と決勝に3走で出場。決勝では6~7番手でバトンを受けると最初の100mで3位に上がった。2位との差をバックストレートで詰めると、ホームストレートの中央付近で2位に浮上。アンカーの金子斐音(1年、昨年の全日中400m優勝者)がトップに立ち星稜高が3分17秒15で優勝した。

インターハイは石川県大会を欠場し、個人種目でのインターハイ出場はすでになくなっていた。だがチームへの思いの強さが、清水をリレー2種目出場に踏み切らせた。

「絶対にみんなをインターハイに連れて行くんだ、という気持ちで走りました。(4×400mRは)金子が優勝を狙える位置で渡すこともできましたし、自分としてもラップベストも出せて楽しかったですね。ケガ明け1本目の大会になりましたが、ケガなく終えられましたし、2種目優勝というところに持っていくことができてよかったな、と思います」

本来であれば100m・200mの2冠を達成した昨年のように、個人での活躍が期待された。だが清水にとって今年の北信越大会は、故障明けと個人種目初戦に向けて良い形のシーズンインとなった。

4×400mRは準決勝、決勝の2レースに出走。共に3走を担い、決勝では3分17秒15で北信越優勝に貢献した(写真/黒崎雅久)
4×400mRは準決勝、決勝の2レースに出走。共に3走を担い、決勝では3分17秒15で北信越優勝に貢献した(写真/黒崎雅久)

2度の故障から北信越インターハイ出場への経緯は?

当初、北信越大会は4×400mR準決勝だけの予定だった。4月中旬に右ヒザの裏に違和感が生じ、4月12日の試合と同29日の織田記念出場を見送った。5月17日のゴールデングランプリも前日練習中に、左脚ハムストリングに痛みが出て欠場した。アジア大会代表選考がかかっていた6月中旬の日本選手権も、「完治はしていましたが大事を取りました」と西野先生。

「ゴールデングランプリ前日の(軽い)肉離れは、硬いスパイクに変えたことが原因と考えて、スパイクを戻しました。日本選手権前にMRIを撮り、ケガの状況を確認して出ても大丈夫と言われましたが、いきなりスピードを上げるのはリスクがありました。でも練習は日本選手権の週から8、9割で走れていて、北信越大会前も8、9割でできていました」

その状況でチームは、全国大会への最終関門である北信越大会を迎えた。U20世界選手権出場の可能性がある清水レベルの選手はともかく、通常の高校生選手にとっては絶対に外せない試合である。清水は100m初戦を7月5日の布勢スプリントと決め、そこに向けての調整を優先していた。走ればスピードを上げてしまう4×100mRは出場しない予定だったが、清水が志願した。「リレーのオーダー用紙に、自分の名前を記入して持ってくるパフォーマンスまでしてきたんです」と西野先生。

「(マークの位置を)本来17足長のところを22足長に広げて、ゆっくり出て加速する走りをさせました。そのまま加速していけばあなたは絶対に速いから(インターハイ出場権を得られる)6番以内に入れるよ、と言って送り出したんです。そしたら3走までが奮起してトップ争いをしながらバトンを持ってきてくれました。空跳はたぶん7、8割で走ったと思います。加速に乗ったらやっぱり上がって行きました」

4×400mRは準決勝を通過することを一番に考えて走ったが、清水は「2本は無理かもしれません」と言っていたという。準決勝後に次のようなやり取りがあったことを、西野先生が明かした。

「空跳、決勝も出る? と聞いてみました。3走候補選手の名前を全部挙げて、誰が一番速い? って聞いたら、『オレ』って言ってくれて。トレーナーさんに脚を触ってもらって、出られるか出られないか、空跳の意見を教えて、と言ったんです。戻ってきた空跳が、『出ます』と言ってくれました。決勝は絶対6位に入りたいので、2走の選手に中位集団に必ず付いてくるように言ったら、その通りに走ってくれました。空跳が予定どおりに最初の100mで4、5人を抜いて、3位争いをしている集団の前に出ました。ラストも上げたいね、と言っていた通りに2位に上がってくれました」

リレー2種目でチームに貢献したことで次は、気持ちよく個人種目に集中していけるだろう。

復帰過程のトレーニングに手応え

次戦は明日、7月5日の布勢スプリント100mで、日本選手権優勝の多田修平(住友電工)、2位の西岡尚輝(筑波大2年)、4位の山本匠真(広島大院2年)、日本記録(9秒95)保持者の山縣亮太(セイコー)、清水と同じ10秒00を持つ栁田大輝(Honda)と守祐陽(渡辺パイプ)ら、シニアトップ選手たちとの戦いに挑む。

目標を質問された清水は、「北信越大会で良い刺激をもらえたので、布勢スプリントは初戦という流れではなく、しっかり走る本戦と位置づけられます。自分のなかでボルテージを上げられる大会になりそうです」と答えた。

具体的なタイムを挙げなかった理由を、西野先生が代弁してくれた。

「何秒出したいとか、タイム的な目標設定はいつもしていません。周りからタイムを決めるように迫られるのが、好きではないのだと思います。目標はどこか、何秒を出したいか、ではなく、私たちはワクワクしたいだけなんです」

ワクワクする状態ができて、それが何秒という言葉になることもある。何秒になりそうかと聞かれれば、「初戦なので10秒1台が出たらうれしいよね、とか、現実的には10秒2台かな、ということも話しますが、それは目標の設定ではありません」(西野先生)という。

「初戦ならなおさら、どこまで行けるかに挑戦したいと思っています。勝ちたいね、賞金ももらえるし、という会話をしてワクワクしています。空跳はレースが好きで、注目されることでアドレナリンも出る。ケガ明けで不安もあるけど、心の片隅には9秒台を出したい気持ちもある。それでも本人的には、故障明けで走れることが一番うれしいと思います。いろんな思いがあると思いますが、それらをすべて含んでワクワクして臨めたらいいのではないでしょうか」

8、9割の練習を始めて1カ月しか経っていない。全力で走れるようになったのは、北信越大会後だ。それでもワクワクできるのは、清水の走りの感覚が良くなっているからだろう。

ケガから復帰する過程のトレーニングに新しいやり方を導入し、そこに手応えがあることも感覚が良くなっている理由の1つかもしれない。西野先生は練習メニューを行う順番を入れ替え、接地の速さにも着目した変更を試みた。

「今まではバイクから入っていましたが、ジョグとサーキット系を先に行いました。自重で臀部やハムストリングの補強も入れながら、この2カ月は持久系を先に行うことで、毛細血管をきちんと働かせて再発を回避してきました。走りのスピードは何割かに抑えますが、抑えると接地時間が長くなって、レースに復帰するときに苦労をします。ハイニーのドリルで接地の後に少し間をつくる練習をよくやってきましたが、今回はそのドリルをやってからそのままスプリントを入れることで、短い接地時間のままスピードの割合を落として走ることができました。2カ月苦しい思いをしましたが、いろいろ学びもあって、ケガから短期間で復帰する道を経験できていると思います」

焦ってレースを走らなかったこと、復帰へのトレーニングに手応えを感じていること、そして北信越大会が良い刺激になったこと。布勢スプリントが個人種目初戦でも、いきなり快走する可能性が今の清水にはある。

文/寺田辰朗 写真/黒崎雅久

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