『破壊する女』の異名を持つ女子プロレスラー、松本浩代が7月17日(水)東京・新宿FACEでデビュー20周年記念興行を開催する。
2006年7月16日、息吹でのデビューから20年、一度も団体に所属することなく、フリーとして激動の女子プロ界を闘い抜いてきた。そんな松本の根っこにあるのは「強くありたい」という思い。だからこそ、20周年記念試合の相手に現代女子プロ界最強の呼び声高い橋本千紘(センダイガールズ)とのシングルマッチを選んだ。道なき道を切り開いてきた20年。これからも「松本浩代とは、を見せていきたい。強さであり、女子プロレスのトップを走ってんだぞ!っていうのを見せていきたい」と腕を撫す破壊する女の思いをお届けする。

――2006年7月16日のデビューから20周年を迎えました。
松本「この20周年というタイミングで振り返る機会が多くて。20年いろいろあったし、その時々で喜怒哀楽すべてぶつけてきたなって思います。濃い20年でしたね」
――そもそもなんですが、松本さんはプロレスファンだったんでしょうか?
松本「違います。プロレスを始める1年ぐらい前までは見たことなかったんです。父親がボクシングは見てた記憶はあるんですけど、プロレスを見る家庭ではなかったので。専門学校の時にプロレス好きの友人に連れられて、初めて会場で見たのがNOAHの東京ドームでした」
――NOAHは2回東京ドームを開催していますが…。
松本「小橋さんと健介さんのチョップ対決があった大会」
――2005年7月18日ですね!
松本「そうそう。初めて覚えたプロレス技が丸藤さんの不知火(笑)。その時点で練習には行ってたんですよ」
――プロレスの練習に?
松本「はい。スポーツトレーナーの専門学校に行ってたんですけど、インターンシップ先が息吹の道場だったんです」
――そんな実習先があるんですか?
松本「学校に格闘技部っていうのがあって、そこの先生がロシアの格闘技サンボで世界トップクラスの選手で、吉田万里子さんにサンボ教えていたつながりがあって。それで実習に行ってました」
――プロレス自体は知っていたんですか?
松本「プロレスってなんだろうってレベルでしたけどね。専門学校時代、陸上部にいたんですけど、部活を引退したけど、まだ体を動かしたかったので格闘技部の練習に参加させてもらってたんですけど、そこの先生がつないでくれて」
――それで息吹の練習に参加していたんですね。
松本「あとから聞いたら、当時は各団体に若い選手があまりいない時代で、このままじゃ終わってしまうと思った吉田さんが発足させたのが息吹でした。(もともとは)若手を集めた練習会で、(吉田とつながりのある専門学校の先生が)『いい子がいるよ』っていうことで、インターンシップという形で送り込んだみたいで。練習を続けていくなかで、吉田さんに『本格的に練習してみない?』って声をかけていただいて。ただ、その時点で就職が決まっていたので、練習だけさせてもらってたんです」
――なるほど。
松本「そんななか、息吹の大会の一週間前に欠場者が出て。『エキシビションで試合してみない?』って誘われたんです。『プロのリングに上がるってどうなの?』とも思ったんだけど、好奇心が勝ってしまって。『やりたい』って。エキシビションですけど、初めてリングで試合をしたんです」
――2006年3月19日新木場大会でしたね。
松本「ただ、私はプロじゃないので、次の大会は当然、試合が組まれないじゃないですか。当時、お手伝いで会場には行ってたんですけど、自分のいない息吹のリングを見て、なんか悔しくて、『なんで私がいないだろう』って変な気持ちになって。それでプロレスやろうって決めたんです」
――そうだったんですね。
松本「ただ当時はスポーツジムのインストラクターとして就職が決まってたので、休みのタイミングに吉田さんが時間をあわせてくれて、練習に通って、最終的にプロテストに合格して。仕事を3カ月で辞めて、7月にデビューっていう怒とうの半年でしたね」
――家族の反応は?
松本「親は私が将来不自由なく過ごせるようにって、いろいろ習わせてくれたりしてたので、当然反対されました。ただ、ハタチ前だったので、大学行かせたと思って、2年間はやっていいよと。2年経って、金銭的な面でプロレスラーとして自立できてないんだったら辞めなさいっていう約束でスタートだったんです」
――そんな形で始まったプロレス人生が20年続くと思っていましたか?
松本「思ってない(笑)。誰も思わないですよね。とりあえず目の前のことをがんばろうって思ってました。息吹って近いキャリアの人ばかりだったし、息吹は弱肉強食だよって言われていて。たとえキャリアが若くてもその大会で結果を出したらメインに上がれますっていう大会だったので。目の前のことをガムシャラにやっていって、それがドンドンつながっていったっていう感じでしたね。ホントにみんながライバルって言い合えるのがわかるぐらい、バチバチしてましたから」
――仲間であり、ライバルだったと?
松本「プロレス好きで、生きていこうって決めた人たちが集まってたから。自分が一番にいかないとってヒリヒリしてたし、すごい自分好みではありました。ずっと(柔道や陸上など)競技のなかで生きてきたので」
――息吹で同期というと?
松本「息吹に出てたメンバーだと、DASH・チサコ、中森華子とかかな。当時バチバチやってたのは中島安里紗(引退)とか。上の世代でいうと江本敦子、木村響子がトップでいて。潰されて潰されて潰されましたね。(2人も)プライドもってトップ張ってたと思うんですけど、それを生え抜きの私とかが奪おうと躍起になってっていう。ホントに闘いでした」
――息吹で生まれたから、プロレスラーとしての現在があるのでは?
松本「ホントにそうだと思う。自分は団体に所属したことがないんですけど、ライバルに恵まれたし、練習会とかでも常にバチバチする人が近くにいたし、強い上がいて、近くにライバルがいたからずっと強くいられたと思います。あと当時、メディアが若手に注目してくれていたんですよ、メイン級の選手だけじゃなくて。若手に目を向けてくれることがなかなかないなかで、メディアが注目してくれたのも自分たちのモチベーションにつながりましたね。当時、SNSなんてなかったですからね」

――ただ、ゼロ年代は男子も含めて“プロレス冬の時代”とも言われていました。
松本「私はホントにプロレスを知らずに入ってるから、“冬の時代”みたいな感覚はなかったですね。だって、その時しか知らないから。冬の時代なんて思わなかったし、逆に燃え上がってましたよ。めっちゃいい時代だったなって今でも思う。ウチら同期はみんないい時代だったって思ってると思うけどな。いまと比べたら、スターダムがすごい勢いがあったり、テレビに出るようになったり、また違ったのかなとは思うけど、でも、今があるのはあの時代があったからだと思うし、息吹が確実に時代をつないだのはあると思うので。そう考えると、すごい時代を生きてるなとは思いますね」
――蛇足ですが、松本さんはデビューからいままで、どこかの団体に所属したことありませんよね?
松本「所属したことないです。たぶんプロレス界で私しかいないですよね」
――おそらくそうかと思われます。ただ、最初からフリーとして生きようと思っていたわけでは…?
松本「ないですね。誰も誘ってもくれなかったし、フフフ。私自身、どこかに所属したくないってわけじゃないけど、20年間どこにも所属することなく、やってこれたのは自分の誇りでもありますね」
――腕ひとつで生き抜いてきたと。
松本「幸いなことに練習場所も常にあったし、パンクラス鈴木(みのる)さんに出会えたりとか、海外のプロレスを知ってる日高(郁人)さんに出会えたりとか、いろんな人に支えられてきたなとは思います」

――フリーであるがゆえに大変だったことは?
松本「う~ん、みんなそうだと思いますけど、ケガと欠場ですよね。10年ぐらい前(2014年8月)に、ヒザの前十字ジン帯断裂で1年欠場ってなった時はどうしようって思いましたけど、どうにかなったので(笑)」
――とはいえ、欠場中はいろいろ考えたのでは?
松本「当時は1回でも欠場したらプロレス引退ぐらいに思ってたんです。長期欠場になった時は、これで終わり…?とも思ったし、心がぽっきり折れた時期もあったんですけど、その時、地元の平塚に『湘南ひらつか七夕まつり』っていうお祭りがあって、毎年やってる織姫オーディションっていうイベントに私、応募したんです」
――欠場中に?
松本「欠場中に。バスに乗ってたらオーディションの張り紙がしてあってプロレスラーとして受かったら、地元で何かできるんじゃないかって思って、挑戦しようって。オーディションの1分間スピーチっていうお題があったんですけど、それもがっちり言葉固めて、練習したし、織姫のイメージをブッ壊してやろうと思って高いハイヒールを履いてオーディション受けたら、3人のなかの1人として合格して。1年間平塚のPR大使みたいな感じで活動させてもらったんですけど、その時の縁で今も年に何回か平塚でプロレスを開催してもらえるようになったし、パイルドライバー原宿店のオープニングスタッフになったのも欠場期間中ですし。結果、いいご縁がつながった欠場期間中になって、高いモチベーションのなか復帰できましたね。30歳って辞める辞めないを含めて、いろいろ考える節目だと思うんですけど、自分にとってはもう一回、プロレス頑張ろう!って思えるタイミングだったなって」
――松本浩代にしか歩めない20年を歩んできたわけですね。
松本「自覚はないですけど。20年濃かったなって思います。いろんな人に支えてもらっての20年ですけどね」

――そんななか、開催される20周年興行。もともと開催しようと思っていたんですか?
松本「いや、思ってなかったです。いろんな人に『え、やらないの?』って言われるたびに、う~んって思う気持ちと、挑戦しないとなっていう気持ちの両方があって」
――当初は、やらなくていいかなという感覚だったんですか? それとも、やりたくないだったんでしょうか?
松本「やりたくない、だったかな。自分自身、試合だけ向き合ってきた20年だったので」
――プレイヤーとしての仕事に加えて、事務作業、営業、広報、交渉事など興行にまつわる仕事は多岐にわたります。
松本「そういうものを知っておいたほうがいいよって言う人もいるけど、知らないほうがいいパターンもあるしなぁとか思ったり(笑)。尖ってたほうがいいじゃんって。でも、大会直前でやらなきゃいけないことがドンドン見えてきてるなかで、ホントにいろんな人が助けてくれて。それだけで幸せ過ぎて、興行やらなくていいんじゃないかぐらいな気持ちもあったりして(笑)。みんなの気持ちが嬉しい、ホントに。だからこそ、せっかく時間割いて来てくれる人たちが楽しんでもらえるようにしたい。そのためにも強い松本浩代をしっかり見てもらって、感じてもらって、これからの松本にも期待してもらえるような大会にしたいなって思ってます」
――対戦相手は最強の呼び声高い橋本千紘選手です。
松本「自分自身、女子プロレスは強くありたいと思うし、松本自身も強くありたいと思うし。ここで橋本に勝ったらデカいと思うんです。いろんなものをひっくり返せると思うし、ここで返さないと面白くないと思うので。今回のテーマは限界突破。自分自身のリミッターを外したい。強い橋本をブッ壊したいし、橋本にブッ壊してもらえると思ってます。その先のものをお互い見られる気がしてます」
――ファンは松本浩代の勝利を期待していると思います。
松本「もちろん勝って、橋本を見下ろしてやりたいなと。女子プロ界ひっくり返したいと思います。橋本はいま最強で、怪物と言われてますけど、それは本人がいままでずっと女子プロ界であり、仙女を背負って闘ってきてるから。その結果だと思いますし、女子プロレスは強いっていうのをしっかり体現してる選手なので。自分もそうでありたい。だから、20周年の相手は橋本しか考えなかったです」

――おふたりのシングルは2017年7・15新潟大会以来なので…。
松本「9年ぶりですね。その年、仙女のシングルタイトルを懸けて2回闘ってるんです」
――同年6・10札幌で松本さんが橋本さんに勝って、センダイガールズワールド王座を戴冠。1カ月後のリターンマッチは松本さんが橋本選手に敗れています。
松本「1勝1敗。タッグではバチバチやってきたんですけど、シングルってなかなか組まれないので、決着つけてやろうかなと。期待してほしいですね」
――20周年はゴールではなく、通過点だと思います。21年目に考えていることはありますか?
松本「松本浩代とは、を見せていきたい。強さであり、女子プロレスのトップ走ってんだぞ!っていうのを見せていきたいですね」
――松本さんはキャリア20年、40歳。ケガの蓄積や加齢による衰え、いろいろあると思います。自分自身の変化は感じますか?
松本「めちゃくちゃあります。ケガとか経験してきて、練習方法も変わってきてはいますし。ただ、そんななかで、自分自身がハタチとか30歳の時にイメージしていた40歳ってもっと大人になってると思ったんです。だけど、あの頃の自分が思ってた大人とは全然違っていて(笑)。20年経っても、こんな尖ってるのかって(笑)」
――尖ってる!(笑)
松本「思ってた大人と違ってましたね。橋本たちから見たら私は大人なのかもしれないけど、私からしたらタメぐらいの感覚なので(笑)。いままだその段階です」
――まだまだこれからってことですね(笑)。
松本「そう。だってタメだもん(笑)」
――21年目以降もドンドンブッ壊していくと?
松本「もちろん。そのためにも20周年橋本に勝って、成功させないと。(会場の)新宿FACEってデビューした場所なんですよ。それが9月に閉館してしまうというなかで、新宿FACEを取れたのもすごいよかったと思ってます。私に勝利の追い風は吹いていると思いますので、7月17日、橋本に勝って、強い女子プロレスをお見せしますので、期待してほしいですね」

FITABLE京都presents松本浩代デビュー20周年記念大会「H-20.0」
★7月17日(金)東京・新宿FACE(18:30)
④シングルマッチ(30分1本勝負)
松本浩代vs橋本千紘
③6人タッグマッチ(30分1本勝負)
尾崎魔弓&アジャコング&鈴木みのるvs山下りな&青木いつ希&ZONES
②FITABLE賞争奪!時間差バトルロイヤル…出場選手=AKINO 、水波綾、野崎渚、真琴、VENY、ジャングル叫女、スターライト・キッド、植木嵩行、高瀬みゆき、X 【正危軍】安納サオリ&翔with 雪妃魔矢
①タッグマッチ(20分1本勝負)
松本浩代&光芽ミリアvs中森華子&炎華
【席種】
最前列席/2万円(特典付)※完売
カウンター席/2万円(特典付)※完売
特別RS席/1万2000円(特典付)
指定A席/8000円
指定B席/6000円
指定C席/4000円
※特典はオリジナル折りたたみ傘。当日券は大会当日17時より発売。料金はそれぞれ1000円増し。
【チケット販売場所】
・パイルドライバー原宿
・チケットペイ
https://www.ticketpay.jp/booking/?event_id=59692#modal_main_img※前売り券の販売は7月15日(水)まで。
【問い合わせ】
hiroyomatsumoto.20.0@gmail.com