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2026-07-26

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所千秋楽の一番】「やり切った」安青錦が巴戦を制し、3場所ぶり3度目の優勝

熱海富士の勢いを止めてしまえばもう怖いものなし? 霧島戦も左下手を取って圧勝し、安青錦は足の負傷を抱えながら戦った場所を優勝で走り終えた

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安青錦(寄り切り)霧島

「安青錦には、熱海富士の突進を止める力は、もう残っていないのではないか……」
 
安青錦には失礼ながら、そんな気がした。熱海富士が初優勝するのではないか、そんな予感は、かなり大きかった。
 
本割では、立ち合い左下手が取れず、熱海富士の圧力を止めることができずに一方的に敗れた。
 
霧島を加えた3人による優勝決定巴戦の初戦で、大関に二本差されながらも挟みつけて力で圧倒した熱海富士が、初優勝に王手を掛けた。それを迎え撃つ瞬間が、安青錦にとって一番のピンチだったと言えるだろう。
 
だが、何という精神力だ。安青錦は、ここで研ぎ澄まされた集中力を発揮した。おそらく立ち合い、その一点だけに集中したであろう、左の前廻し。これをスパッとつかんだのだ。
 
もちろんその後は、左からの投げで相手を崩す。この瞬間、初優勝へばく進していた熱海富士の勢いは止まったと言っていい。あとは頭を下げながらモロ差しとなり、前に出て寄り切った。
 
熱海富士の巨体を運ぶのはやはり負担がかかったのであろう、勝ち名乗りを受けるときは左足は完全に立てヒザになっていたが、しかしもう、安青錦は優勝への流れをつかんでいたといっていい。
 
続く霧島戦もまた、立ち合い当たって少し相手の胸をハズで押し、すぐに左下手を取った。さらに相手の左脇に潜り込ませるようにして頭をつけた。こうなればもう勝負の行方は見えたといってもいいだろう。左外掛けで相手の腰の構えを崩すと、そのまま西土俵に寄ってもたれ込み、3場所ぶり3度目の優勝を決めた。

「やり切ったなという気持ちです」
 
優勝インタビューで、優勝決定戦を制した気持ちを聞かれ、そう答えた安青錦。厳しい15日間を、この結果で完走した。まさにそれが本音だっただろう。
 
陥落直後の場所で10勝を挙げての特例で大関復帰した例は、過去に7人、8例あるが、その場所で優勝した力士は初めてだ。それを可能にしたのは、「10勝ではなく優勝を目指していこう」と、安治川親方(元関脇安美錦)とかわした目標設定であり、さらには、「ケガして関脇まで落ちて、自分自身に悔しさがあった」という安青錦が心に灯した「自分はここで終わる人間じゃない」という思いだったという。いやはやもう、カッコよすぎる。
 
その気持を支えに手にした、この場所の優勝。この後については、「一番上の番付を目指していきます」と高らかに宣言したが、それが実現する日も決して遠くはないだろう。何しろ、ケガをしていてもなお、この強さなのだから。
 
現在の左足のケガがどの程度の期間で治るのかは、はっきり分からないが、横綱陣の今の不調が続くようなら、本当に今後の安青錦にとって、敵はケガのみと言っていいだろう。もしケガが完全に直った暁には……、この力士はどこまで強いのか、もう想像がつかない。

文=藤本泰祐

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