2019年シーズンも成長著しいジュニア選手たちの活躍があった。未来の日本代表選手たちの活躍を振り返ろう。この中から東京五輪代表が誕生するかもしれない!
写真上/400、800m自由形で高校新記録を樹立した難波(撮影◎Getty Images)
今季、ジュニア女子で最大のインパクトをもたらした選手と言っていいだろう。日本選手権400、800m自由形で初優勝、1500m自由形で3位に入った難波実夢(MGニッシン/天理高2年)である。
昨年の日本選手権では400mは5位、800、1500mには出場すらしていなかった。それがこの1年で急成長。日本選手権後もジャパンオープンで400m自由形の高校新を樹立。8月の世界ジュニア選手権では800m自由形でも高校新をたたき出した。しかもこの800mの記録は、来年の東京五輪の派遣標準記録Ⅱを上回るハイレベルなもの。800mの派遣標準が2019年度の世界選手権より下がったこともあるが、オリンピック代表を射程圏内に収めてシーズンを終了することとなった。
難波の魅力は、前半から積極的に飛ばす勇気を持ち、かつ、ラスト100mで猛スパートをかける持久力を備えていること。つまり、思いきりが良く、粘り強い。ワクワクさせるレースを見せてくれる選手でもある。東京五輪代表争いの中心になるのは間違いない。
この夏の光州世界選手権(韓国)に出場したジュニア選手は、酒井夏海(スウィン美園/武南高3年)と池本凪沙(コパン宇治/近畿大附高2年)の2名。
ともにリレー枠で代表入りしたが、酒井は50、100、200m背泳ぎにも出場。100mで59秒56をマークして6位に入賞。今季はシーズン当初から不調続きだったが、なんとか間に合わせ、目標だった決勝進出を果たして来季につなげた。世界選手権後の8月末には全国JO杯夏季100m自由形(チャンピオンシップ区分)に出場して54秒48の大会新で優勝、日本ランク4位につけて非凡なところを披露。東京五輪の400mフリーリレー代表の座も視野に入るシーズンとなった。
世界選手権に初出場した池本は、モヤモヤの残るシーズンになったと言えるかもしれない。
800mフリーリレーにのみ出場し、予選・決勝ともにアンカーの大役を務めたが、決勝ではタイム落とす反省点が残った。さらにその約3週間後の世界ジュニア選手権では、個人種目に出場も自己ベスト更新はなく、表彰台もなしに終わったからだ。最も得意とする200m自由形では、4月の日本選手権から8月上旬のW杯東京大会まで自己ベストを3回更新、記録は伸ばしている。「大事なところで出しきれない」と課題も理解している。その後の国体では50、100mで自己ベストを更新しており、来期につなげていきたいところだ。
さて、中学生・高校生全体の傾向を知るために、日本水泳連盟が定める「インターナショナル、ナショナル標準記録」(※)の突破者数を見てみよう。
(※インターナショナルはシニアを含めた年齢無差別、ナショナルは中学、高校生を対象で1学年ごとに設定)
今季、中学・高校生のナショナル突破者数が最も多かったのは100m自由形で25名。この種目はここ数年、池江璃花子(日本大1年)が引っ張る形で突破者数が増加傾向にあり、リオ五輪前年の2015年はたったの5名だったのが、昨年は24名までに増えた。50m自由形は12名、200m自由形は6名に留まっていることから、100m自由形に一極集中のとんでもない状況となっている。
顔ぶれはというと、高校3年では前述の酒井、インターハイ連覇の大内紗雪(ダンロップSC/日大藤沢高)、田嶋玲奈(スウィン大教/春日部共栄高)ら。
高校2年は池本を筆頭に6学年で最多の8名が突破。山本葉月(スウィン埼玉/花咲徳栄高)、200m個人メドレーで世界ジュニア選手権代表になった松本信歩(東京ドーム/国立東京学芸大附高)、神野ゆめ(中京大附中京高)、そして難波の名前も。
そのほかでは、長尾佳音(東京SC/武蔵野高1年)、澤野莉子(SA新城/横浜市立中川西中3年)らが名を連ねている。
多くの選手が来年の東京五輪の400mフリーリレー代表入りを目指し、猛ラッシュをかけていることは間違いなさそうだ。
次に突破者が多かった種目は200m平泳ぎで14名。
世界ジュニア選手権で3位に入り、インターナショナル標準Cを突破、日本ランク3位につけた石原愛依(KSG柳川/柳川高3年)、インターハイ優勝の緒方温菜(イトマンSS/近畿大附高3年)、全国中学優勝の鍵本彩夏(アイエム舞鶴/舞鶴市立城北中3年)らが突破した。
ボリュームゾーンは中学3年で6学年中、最多の5人。鍵本のほか、曽我部菜々(枚方SS/枚方市立第二中)、田積帆乃果(大阪水泳学校/上宮学園中)らが名を連ねている。
ただ、人材豊富である一方、インターナショナル突破者が石原のみだったのはやや寂しい。技巧的要素の強い平泳ぎは器用で緻密な日本人が伝統的に得意としてきた種目。日本全体のレベルを押し上げる意味でも、大幅に記録を伸ばす選手の登場に期待したい。
ほかにも注目選手は続々登場している。400m個人メドレーで快進撃を続ける谷川亜華葉(イトマンSS/四條畷学園高1年)もそのひとり。9月の国体(少年A)では4分39秒49をマークして日本ランク3位に躍り出た。昨年の全国JO杯夏季(15~16歳区分)で優勝の経験はあるものの、その名はほとんど知られていなかったところからのこの成長。すごくないですか?
「大橋(悠依)さんを抜かすくらいの気持ちで頑張りたい」と世界選手権メダリストにガチンコ勝負を挑む、負けん気の強さもまた魅力的な人である。
ほかにも中学3年ながら200mバタフライで2分9秒63をマーク、日本ランク6位につけた三井愛梨(横浜サクラ/横浜市立あざみ野中3年)も勢いに乗っている。
ジュニアスイマーは一気に記録を伸ばす可能性を秘めている。東京五輪イヤーの来年、どんな活躍を見せてくれるか楽しみだ。
文/佐藤温夏(ライター)
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