瀬戸大也(ANA)が、好調だ。新シーズン立ち上げの昨秋から順調にトレーニングを積み、その成果を冬場の大会でも示してきた。25mプールで行なわれる昨年12月の世界短水路選手権(中国)では200mバタフライで自身初の世界新記録で優勝、400m個人メドレーでも大会4連覇を飾った。年明けからは国内にじっくり腰をすえて強化を継続し、出場した長水路大会(50m)でも、200m個人メドレーで自己ベストに迫る泳ぎを見せたのをはじめ、各種目で好記録をマークして自信を深めている。
※写真上=順調に準備を進めてきた瀬戸。大いに期待したい
写真◎毛受亮介(スイミング・マガジン)
出場種目は日程順(決勝)に200mバタフライ(4月5日)、200m個人メドレー(4月6日)、400m個人メドレー(4月8日)の3種目。強力なライバルぞろいの200mバタフライ、4年ぶりの自己ベスト更新の可能性が高い200m個人メドレーも楽しみだが、やはり一番注目したいのは、メイン種目の400m個人メドレーだ。
この種目、瀬戸は2013、2015年世界選手権で連覇したものの、2016年リオ五輪、2017年世界選手権では3位に終わっている。オリンピックでは萩野公介が最も輝かしい色のメダルを手にし、その後はジュニア時代から戦ってきたチェース・カリシュ(米国)が台頭。特にカリシュは過去2年世界ランク1位に君臨し、2017年世界選手権で樹立した自己べストは、萩野も、瀬戸も未踏の4分5秒台の領域に踏み入れている。
その情勢を踏まえ、瀬戸は2018年シーズン、2020年に向けた最初の施策を打つ。前半200m(バタフライ、背泳ぎ)のレベルアップに着手した。
具体的には「悪くても200mのラップで2分を切る」力をつけること。背景にはライバルとのレース展開の違いがあった。萩野は2番目の背泳ぎ、カリシュは4泳法全般で強さを発揮するタイプでともに前半200mのラップで2分を切ることは当たり前のスタイル。一方の瀬戸は2分かかりながらも3番目の平泳ぎで挽回し、ラストの自由形で粘るスタイルだったが、カリシュはもともと平泳ぎでも瀬戸と同等以上の力を有しているため、自ら階段を上がらなければ、2020年東京五輪でも戦えない――その危機感が持ち前の向上心と挑戦心に火をつけ、自らの殻を破る取り組みに臨んだのである。
実際、2018年は大会の大小にかかわらず、ほとんどのレースで後半バテることを恐れずに「前半200m2分切り」を実践。レースによって最終結果に差は出たものの、まずは前半200mでのレベルアップを揺るぎない目標として貫き通した。冬場のトレーニングはそうした2018年シーズンの延長戦上に位置づけ、レース全体をレベルアップ。その手ごたえは十分にある。
今年の日本選手権、ライバルの萩野公介(ブリヂストン)は欠場する。瀬戸はライバルがいてこそ燃える気質だけに、例年以上に自身との戦いで真価が問われることになる。
果たしてどのような泳ぎを見せてくれるのか。もし自己ベスト(4分7秒99)を更新、もしくはそれに近い記録をたたき出せば、7月の世界選手権、強敵・カリシュから再び世界選手権王座を奪還する可能性は広がってくるだろう。
文◎牧野 豊(スイミング・マガジン)
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