※写真上=今季、世界のトップステージに再び迫った6年前のロンドン五輪メダリスト、入江(左)と鈴木
写真◎小山真司(スイミング・マガジン)
2018年シーズンを振り返るとき、2人のベテランの復活も見逃してはならない。
ともに2012年ロンドン五輪で3個のメダルを獲得。日本競泳界のエースとして名をあげた男子背泳ぎの入江陵介(イトマン東進)と女子平泳ぎの鈴木聡美(ミキハウス)は、奇しくも9年前に樹立した自己ベストに迫る記録をたたき出し、五輪メダリストとなって以降の低迷から再び世界のトップステージに戻るきっかけをつかんだシーズンとなった。
入江は、練習拠点を米国に移してから2年目のシーズン。国内では敵なしの状況のため、いかに自分の記録を上げていくかに注目が集まったが、4月の日本選手権から夏の国際大会まで、継続してギアを上げていった。特に100mでは米国でのスプリント(短距離)系の練習を多くこなした成果を発揮し、9年前に樹立した自己ベスト(52秒24)に0秒27まで迫った。そして近年は低迷続きだった得意の200mでも伸びのある大きな軌道を描くストロークで好記録を連発。円熟のバックストローカー(背泳ぎの選手)健在を大いにアピールした。
現在、世界のトップに君臨するライアン・マーフィー(米国)、徐嘉余(中国)ら協力ならライバルはいるものの、米国で心機一転、自分自身にフォーカスするスタンスで競技に打ち込んでいる入江だけに来季以降の活躍も期待大である。
■日本選手権
100m背泳ぎ[1位]53.18
200m背泳ぎ[1位]1.55.92
■パンパシフィック選手権
100m背泳ぎ[2位]52.78
200m背泳ぎ[2位]1.55.12
■アジア大会
50m背泳ぎ[2位]24.88
100m背泳ぎ[2位]52.53
200m背泳ぎ[2位]1.55.11
一方の鈴木は、100、200mとも国内のライバルとの闘いの中で復活の兆しを見せた。
8月のパンパシフィック選手権200mで3位に入り、ロンドン五輪以来となる国際大会でのメダルを獲得するとアジア大会では50、100mで2冠達成。100mは9年前に樹立した自己ベスト(1分6秒32)まで0秒08に迫る好記録だった。「これまでは五輪メダリストとはこうあるべき、みたいなものを自分で背負いこんでしまっていたが、自分がどうありたいか、とようやく考えられるようになった」と心境の変化が好記録につながったことを分析していた。
成績も上向けば、そのコメント力にも拍車がかかり、取材のたびに思わず笑ってしまうこともある。それこそが鈴木聡美。来季以降もその泳ぎ、コメントも楽しみにしている。
■日本選手権
50m平泳ぎ[1位]30.95
100m平泳ぎ[2位]1.06.52
200m平泳ぎ[3位]2.23.19
■パンパシフィック選手権
100m平泳ぎ[4位]1.06.51
200m平泳ぎ[3位]2.22.22
■アジア大会
50m平泳ぎ[1位]30.83
100m平泳ぎ[1位]1.06.40
文◎牧野 豊(スイミング・マガジン)
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