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2018-12-21

【2018競泳界プレイバック】池江璃花子~2018年日本記録更新全記録~世界一への道、切り拓く

※写真上=2018年は「池江イヤー」と呼ぶにふさわしいシーズンとなった
写真◎馬場高志/スイミング・マガジン

 池江璃花子(ルネサンス/淑徳巣鴨高3年)にとって、2018年は世界一を狙うに相応しい選手へと変貌を遂げたシーズンとなった。

 主要大会成績を振り返れば、まさに「パーフェクトシーズン」と呼ぶにふさわしいものだった。4月の日本選手権で4冠(50、100m自由形、50、100mバタフライ)&日本記録更新6回、米国、豪州の強豪国と相まみえた8月のパンパシフィック選手権では200m自由形で国際大会初のメダル獲得(銀)、100mバタフライでの初優勝をともに日本新記録で飾った。そしてアジア大会では前人未到の6冠。長水路(50m)での日本記録更新は2月のコナミオープン200m自由形を皮切りに、実に14にも上った(短水路/25mでも5回更新)。

◎池江璃花子の2018年主要大会結果(最終結果のみ)

■日本選手権
50m自由形[1位]24.21☆日本新、高校新
100m自由形[1位]53.03☆日本新、高校新
50mバタフライ[1位]25.43☆日本新、高校新
100mバタフライ[1位]56.38☆日本新、高校新
■パンパシフィック選手権
50m自由形[6位]24.60
100m自由形[5位]53.14
200m自由形[2位]1.54.85☆日本新、高校新
100mバタフライ[1位]56.08☆日本新、高校新
■アジア大会
50m自由形[1位]24.53
100m自由形[1位]53.27
50mバタフライ[1位]25.55
100mバタフライ[1位]56.30

◎池江璃花子が2018年に樹立した日本新記録 ※短は短水路

■1月:東京都新春大会
100m自由形決勝/51.62※短
200m自由形決勝/1.52.64※短
50mバタフライ決勝/24.71※短
200m個人メドレー決勝/2.05.41※短
■2月:コナミオープン
200m自由形決勝/1.55.04
50mバタフライ決勝/25.44
■4月:日本選手権
50m自由形決勝/24.21
100m自由形準決勝/53.46
100m自由形決勝/53.03
50mバタフライ決勝/25.43
100mバタフライ準決勝/56.58
100mバタフライ決勝/56.38
■5月:ジャパンオープン
50mバタフライ決勝/25.25
■6月:欧州GPカネ大会
50mバタフライ決勝/25.11
■6月:欧州GPモナコ大会
100mバタフライ決勝/56.23
■8月:パンパシフィック選手権
200m自由形決勝/1.54.85
100mバタフライ決勝/56.08
■11月:W杯東京大会
100mバタフライ決勝/55.31※短
■11月:北島康介杯
100m自由形決勝/52.79

4月の日本選手権では実に6回の日本記録を更新
写真◎毛受亮介/スイミング・マガジン

8月のパンパシフィック選手権100mバタフライで国際大会初優勝を飾った
写真◎毛受亮介/スイミング・マガジン10月号P6より

アジア大会では前人未到の6冠を達成。最後の50m自由形を終えた後は、安堵から涙も見せた
写真◎小山真司/スイミング・マガジン10月号P4~5より

 今年は、世界規模の長水路(50m)大会のないオリンピック中間年。メイン種目の100mバタフライのリオ五輪女王であり、世界記録(55秒48)保持者でもあるサラ・シェーストレム(スウェーデン)との大舞台での真剣勝負の機会はなかったが、池江のコメントから「サラ選手」と言う言葉多く聞かれたように、女王の存在を念頭に置きながら、自身の記録を追求し続けていった。その結果、100mバタフライでは4回日本記録を更新し、自己ベストを56秒08まで伸ばし、2018年の世界ランクではシェーストレムを抑え、堂々の1位に。

 さらに11月のワールドカップ東京大会では、冬場の短水路大会とはいえ同種目でシェーストレムを抑え優勝。これまで「かなわない相手」と思っていた女王を「越えるべき相手」としてとらえられるようになったことは、大きな自信となった。

 また、100、200m自由形で世界レベルの日本新記録をマークしたことも、忘れてならない。8月のパンパシフィック選手権の200m(1分54秒85)は世界ランク3位タイ、11月のKOSUKE KITAJIMA CUPの100m(52秒79)は世界ランク8位相当と、1年前の池江自身が「まだ世界のトップとの差はある」と感じていた自由形でも世界のトップに迫った。100mバタフライでの世界一獲りを狙う一方、他種目で高いレベルの記録をたたき出すことで、トップスイマーとしての幅を広げたのである。

スイミング・マガジン通算500号のインタビュー撮影ではさまざまなポーズも
写真◎馬場高志/スイミング・マガジン

 そうした記録の伸長の中で印象的だったのは、「俯瞰(ふかん)する視点」だ。例えば、アジア大会で6冠を達成した直後には、「うれしいですけど、これを来年、再来年につなげていかなければ意味がない」と言い、11月のワールドカップでシェーストレムから初勝利を挙げたときも、「サラ選手は100mバタフライ以外にもたくさんの種目に出ていたので状態がわかりませんが」と全体の状況を前置きした上で、自身のレースを振り返っていた。表面的な結果だけで一喜一憂せず、その背景も踏まえて総合的に分析する。その上で課題、収穫をあげ、また次のレースに向かっていく――今季の活躍の根源には、そうしたトップ選手としての姿勢が身に付いていたことも大きな要因なのではないかと思う。

 来年7月には韓国・光州で世界選手権、そして2020年には東京五輪に待ち受けている。「2年後の結果はあと2回ある冬場のトレーニングにかかっている」と言う池江。1年前の冬場は日本代表、所属チーム、単身と、海外での合宿を積み重ね、2018年の飛躍の礎を作った。夏のシーズンを終え、2019年に向かい始めた池江は10月にはトルコに赴き世界のトップ選手らが集う短期合宿に参加、11月には3週連続での大会出場、そしてこの12月には米国・フラッグスタッフで約3週間の高地合宿で研鑽を積んでいる。

 5月から指導を受ける三木二郎コーチとともに迎える初めての冬。次シーズンの活躍を左右する鍛錬期をどのように過ごし、さらなる飛躍を遂げてくれるのか。今から楽しみである。

文◎牧野 豊(スイミング・マガジン)

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