7月18日のホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会男子5000mで石田洸介(東農大二高3年)が13分36秒89の高校新記録を樹立。中学時代にふたつの中学記録、ひとつの中学最高記録を打ち立てた逸材が高校でも歴史に名を刻んだ。しかしこの記録もまだ通過点。視線は未来を、そしてさらなる高みを見据えている。
写真上=16年ぶりに5000mの高校記録を塗り替えた石田
撮影/本多義清
「考える力があり、探求心が旺盛。納得するまでチャレンジし続ける性格で、失敗を成長につなげられる選手です」
指導する東京農大二高、城戸口直樹先生の石田を評する言葉だ。こうした特性があったからこそ、今回の記録が出せたと話す。
2年前の入学時、城戸口先生が掲げた強化のポイントはスピード持久力の向上と、レースをつくり、勝ち切る力。特に後者は中学時代、レースでは周囲を圧倒する場面が多く、駆け引きをあまり経験していない。高校では実戦のなかでそれを身に付けていこうと考えた。
すぐに結果は出せなかった。1年目はインターハイに進めず、2年目は1500m、5000mとも9位と入賞を逃した。中学記録保持者として注目され、期待される立場。石田自身、周囲からのプレッシャーにも苦しんだ。しかし城戸口先生は「3年目に納得できる走りができればいい」と説き続けた。
好転し始めたのは2年目の秋から。5000mで13分51秒91と高2歴代4位の好タイムを出し、今年2月のU20日本選手権クロスカントリーは優勝。取り組みの成果が目に見える形になって表れ始めた。
「高校記録を狙おう」と師弟の思いが一致した3年目は春からコロナ禍に見舞われたが、自主的に高校記録を狙うトレーニングを続け、この大会まで質の高い練習を継続させている。
「なかなか結果を残せず、周りの声を気にした時期もありました。でも簡単にはあきらめられなかったんです。自分が変わらないといけないという思いを持ち続けられました。ここまで長かったですけど、これで中学だけの選手と言われないと思うので今はホッとしています」
石田は喜びと同時に安堵した胸の内も吐露する。
今回手にしたのは記録だけではない。ホクレン千歳大会では実業団の有力選手と力をぶつけ合ったことも石田には大きな刺激となった。
「走っているときは食らいつくことだけを考えていましたが、後で映像を見て、“力の上の人と走るのは楽しいな”と改めて感じました。これまでもそうでしたが、これからも上を見て、強くなっていきたいです」
日本選手権参加標準記録も突破した。12月に行われる日本一をかけた“力の上の選手”との本気の勝負へ向け、「日本のトップクラスの走りを肌で感じたい」と目を輝かせる。
東京農大二高は自主性を重んじるチーム。練習自体、選手に任されることも多く、石田もここまで絶対スピードを向上させる練習には本格的に取り組んでいない。それは来年以降、次のステージに進んでから着手する予定だ。
「ラストのスプリントはもちろん、世界を見れば400m毎に10秒以上のペース変化も当たり前です。それに対応できるだけのスピードを今後、磨いていきます」
伸びしろは多く残している。さらなる飛躍に期待したい。
※石田洸介選手のインタビューは8月12日(水)発売の陸上競技マガジン9月号に掲載しています。
文/加藤康博
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