課題はラスト3㎞のスピード向上だ。MGCではここから1km3分ペースへと上げ、40㎞からフィニッシュまでを6分35秒を切れば勝てると見込んでいた。だが実際は6分45秒に終わっただけでなく、優勝した中村匠吾(富士通)ら上位3名は橋本がターゲットとしたタイムを上回った。
「3位までの選手は自分の予想をはるかに上回る強さだったので、どうやっても勝てなかったと思います。中村さんがスパートした瞬間、自分はその後ろにいましたが、お尻の筋肉が盛り上がるのが分かりました。自分もあのレベルのスピードを目指します。やはり勝てるランナーになりたいので」
この春は脚筋力を鍛えるためにフィジカルトレーニングが練習の中心。一から体を作り直し、まずは10000mで28分20秒切りを目指す。
オリンピックにエントリーされる補欠は1名。準備の状況が同じであれば、もうひとりの補欠であるMGC4位の大塚祥平(九電工)が優先される。それでなくとも補欠が走れる可能性が少ないのは間違いない。しかし「日本代表候補選手」であることは事実であり、本人も強く意識している。
「日の丸をつける可能性が少しでもある以上、マラソンだけでなくトラックでも駅伝でも、もう恥ずかしいレースはできません。これからはプライドを持って走ります。そのプライドがきっと自分を成長させてくれると信じています」
青山学院大時代、箱根駅伝では控えの経験が長く、待つのは慣れている。今は与えられた時間と立場を使い「勝てるマラソンランナー」への変貌を目指す毎日だ。
文/加藤康博
Profile◎はしもと・りょう/1993年9月26日生まれ、大分県出身。大分西高(大分)→青山学院大→GMOインターネットグループ。高校3年時の高校総体(インターハイ)5000m出場(予選落ち)。大学時代は、青学大黄金時代の礎をつくった神野大地(現・セルソース)、小椋裕介(現・ヤクルト)、久保田和真(現・九電工)、現在もチームメイトである渡辺利典ら同級生と切磋琢磨し、全日本大学駅伝に2年、4年時に出場も、出雲駅伝、箱根駅伝の出走はならなかった。初マラソンは2016年2月の東京(23位)、2019年2月の別府大分毎日マラソンでは2時間09分29秒で日本人2番手(全体5位)となり、MGC出場権を獲得。昨年9月のMGCでは5位となり、東京五輪の補欠に選出された。
撮影/福地和男(陸上競技マガジン)