11月29日、日本陸連は低迷する女子短距離の新たな強化プロジェクトを発表した。2020年東京五輪へ向けて、これまでにない施策で勝負に出る。
※写真上=18年日本選手権女子100m決勝の様子(椛本結城)
日本陸連が、2020年東京五輪に向けた新プロジェクトを発表した。それは、女子短距離のリレー候補選手を公募し、セレクションを行っていくというものだ(「公募型選抜システム」)。
来年1月13日と26日に選考会が実施され、タイムトライアル等を行って代表を決定する。4×100mR、4×400mR合わせ、16名前後を選出する予定だという。
プロジェクト発表には、麻場一徳強化委員長、山崎一彦T&Fディレクター、瀧谷賢司女子リレーオリンピック強化コーチが出席。始動に至った経緯や、選考方法などに答えた。
2020年に向けての目標として、日本陸連は①メダル、入賞を獲得する②1人でも多くの選手を出場させる という二つの柱を立てている。今回のプロジェクトは「②」に当たるもの。麻場委員長は、「リレーは陸上競技にとって大きな位置づけ。男子を含め全5種目すべてで見てもらえるようにしたい」と話す。
開催国枠がないとされる東京五輪に置いて、低迷を続ける女子リレー、いや女子全体として出場さえ厳しい状況に置かれている。4×100mRは12年ロンドンを最後に、4×400mRは08年北京を最後に五輪に出場できていない。その原因としては「福島千里に続く選手が出ていない」ことと「有望な若手選手が継続して強化・育成できなかった」ということなどを挙げる。
「公募型選抜システム」とは別に、「ワイルドカード選抜」としての選考方法もあり、一定の記録水準を満たした選手については代表候補として選抜される。メンバー争いにおける選考方法の優劣はなく、女子リレー代表チーム一体となって活動していくことになる。

アジア大会4×100mR。エース福島をケガで欠いた日本は5位だった(写真/中野英聡)
瀧谷コーチは「女子短距離は危機的状況にある」と危機感を募らせる。山崎ディレクターも、「女子短距離の未来を背負う、2020年の先につなげるためのプロジェクト」と強い決意を持って取り組む構えだ。
応募要項などは、11月30日、日本陸連より詳細が発表され、12月15日に概要説明会を開催されるが、100m11秒75、200m24秒25、400m54秒80、またはそれに相当する実績等を持つ選手が対象となる予定。何より、「東京五輪にリレーで出場する」という強い決意を持ったアスリートが求められている。スプリント以外の種目や他競技からの応募も可能だという。

アジア大会では800mの北村夢や七種競技がメインの宇都宮絵莉がマイルに出場。他種目からの応募も可能だ(写真/中野英聡)
まずは来年5月に日本で開催される世界リレーに向けて強化し、ドーハ世界選手権で日本記録更新を目指していく。
現在の日本記録は4×100mR/43秒39(11年)、4×400mR/3分28秒91(15年)。「日本記録を更新しても2020年は厳しい」(瀧谷コーチ)。このプロジェクトで記録水準を高め、43秒切り、3分26秒切りを目指していく。
日本女子短距離には、素晴らしい才能を持った選手が数多くいる。男子にできて女子にできないことはない――。このプロジェクトが起爆剤となっていくか、今後の活動に注目していきたい。
文/向永拓史
●今後のスケジュール予定
11月30日 プロジェクト趣旨、セレクション概要発表
12月15日 プロジェクト&セレクション説明会(競技者・専任コーチ向け)
1月13日 第1回セレクション
1月26日 第2回セレクション
1月~3月 強化合宿、海外遠征
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