8月25日からスタートしたアジア大会の陸上競技。25、26日の2日間にわたって行われた男子十種競技で、前回王者の右代啓祐が2大会連続となる金メダルを獲得。前回と同じく中村明彦が3位に入り、メダル2つ獲得を果たした。
写真:誇らしげに日の丸を背負う右代(写真/中野英聡)
最終種目の1500mを前に、2位・右代啓祐(国士舘クラブ)とトップを行くタイのシンコンとの差はわずか2点。後ろから付いて行って最後かわせば優勝が決まる場面だった。
「1周目は付いていったのですが、“何か嫌だな”と思いました。自分らしい走りをしたかったので前に出ました」
1500mが苦手なシンコンを尻目に、その差をどんどんと広げていく。最後は「脚が回らないほど出し切った」結果、フィニッシュと同時に、4年前の仁川大会に続く2大会連続の金メダル、“アジアの王”の座に就いた。
フィニッシュ後はスタンドに向かって力強く拳を何度も突き上げ、インドネシアの観衆を沸かせた右代。
「日本一は7回取っていますが、アジアは1回。アジアのチャンピオンになれて、この4年間、君臨してきたと証明できたと思います」
そう胸を張った。
「日本選手権以降、気持ちを切らさずに一つずつ積み重ねた結果です。良い部分、悪い部分はあり、反省点も多い」
そう振り返るように、初日から「思ったより体は動いたが記録とのズレがあった」とバラつきが目立ち、シンコンに終始リードを許した。
2日目も得意の投てき種目でかみあわず、円盤投が45m37、やり投63m07。それでも、「勝負所で出せた」と練習中に足首を捻挫した棒高跳で「最後は気合で」4m90を跳ぶなど、さすがの勝負強さを見せた。
優勝記録こそ8000点に届かない7878点にとどまったが、そこには明確な違いもある。
2014年は5月に日本記録8308点をマークして勢いに乗り、海外日本人初の8000点超えでアジア制覇。今大会は“日本記録”という基準値を持ちながら、それ以上を目指しての結果だ。
「4年前はしびれましたが、今回は目指している場所が高い、位置づけが違うなかでの連覇。守りに入らず思い切って行くなど、挑戦しながらのミスがあった」とその違いを語る。
この4年、ケガと戦いながら、それでも“キング”としての力を誇示した右代。
「アジアの連覇をできたことですし、ずっと言っていることですが、やはり世界大会でメダル獲得、入賞をできるようにしていきたいですね。それができるまでやめなられないです」
もがき、苦しみ、それでも王座を守った右代。国内外の若手ライバルたちの挑戦は、まだまだ撥(は)ねつけそうだ。
前回3位だった中村明彦(スズキ浜松AC)は7738点で2大会連続の銅メダル。
「金メダルを取りたかった。力を出し切れなかったのが悔しいです」
投てきや棒高跳などある程度は手応えをつかんだ種目もあったが、「得意のスプリントが今一つ」と唇をかんだ。
それでも、「1500mの最後まで走り切る」という中村らしさも見せた。取りこぼしさえなくしていけば、再び大台突破も見えてくる。
十種競技は1日目:100m・走幅跳・砲丸投・走高跳・400m、2日目:110mH・円盤投・棒高跳・やり投・1500mと行われ、各種目の合計得点で順位を決める。
日本では知名度も、人気も注目種目と比べて高いとはいえない。だが、その超人的な肉体とパフォーマンスで、海外では“キング・オブ・アスリート”として尊敬される存在だ。
ここジャカルタでも、十種競技を戦い抜いた選手たちに送られた温かい歓声が、そのことを物語っていた。日本でもそうした光景が見られるようになれば、より一層のレベルアップが図られるはずだ。
28、29日には“クイーン・オブ・アスリート”を決める女子七種競技が行われる。日本からは山﨑有紀(スズキ浜松AC)とヘンプヒル恵(中大4年)の2人が出場。十種競技に続けるか注目したい。
文/向永拓史
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