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2018-05-30

円盤投・高校最強世代の一人 国士舘大 主将・松井俊樹 地元で初のビッグタイトル

関東インカレ最終日。1部男子円盤投で、松井俊樹(国士大4年)が優勝を果たした。高校時代に“最強”とうたわれた世代の一人として、ライバル対決を制して存在感を示した。

最後の関東インカレでタイトルを獲得した松井(写真/中野英聡)

誰よりも投げてきた競技場でV

地元・相模原で結果を残した松井(写真/中野英聡)

 投てきを中心に代表選手を数多く輩出している名門・国士舘大。今季、そのチームの主将を務めている松井俊樹が4年生の意地を見せた。

 男子1部円盤投は、連覇を狙った安藤夢(東海大4年)が2投目以降トップに立ち、4回目には53m58を投げていた。

「最初の3投が“クソ”みたいな投てきだった」と松井。50mに届かない記録が続いたが、「最後(の関東インカレ)だからと切り替えて」放った一投は、53m82の自己新で安藤を逆転。

「遠くからしっかり円盤を回して、最後まで力を加えられました。弾ける感覚があったので、“行った”という感触がありました」

 安藤の残り2投を「ソワソワして見ていた」松井だが、6回目を見終えるとすぐに勝利を確信した。

「(安藤)夢とは、中学の砲丸投からライバルとして戦ってきて、ずっと負けっぱなし。正直、“もう勝てないのかな”と思ったこともありました。もろ地元で開催された最後の関東インカレで勝ててよかった」

 今大会が開催されたのは相模原ギオンスタジアム。松井は地元・相模原市立大野南中出身で、瀬谷西高を経て国士大へ進んだ。

「この競技場で投げてきた数なら誰にも負けない。家族や中学・高校の恩師も観に来てくれていた。陸上競技を始めて10年目。やっと勝てました」

 トレードマークのオールバックが、少し大人っぽくなったのが印象的だった。

シニアでも“最強世代”の躍進なるか

山梨インターハイ円盤投の表彰式。1位・石山、2位・安藤、3位が松井だった(写真/中野英聡)

 この世代は投てきに有力選手がそろっていた。松井、安藤のほかに、インターハイ砲丸投3連覇、3年時円盤投と二冠の石山歩(現・中京大)、やり投の森秀(現・日大)、ハンマー投の木村友大(現・九州共立大)など、高校投てき“最強世代”とうたわれ、今も活躍を続けている選手たちだ。

 特に男子円盤投は、松井たちが高3時の2014年の投げ合いが驚異的だった。それまでの高校規格1.75㎏の高校記録は52m86。春先に安藤が52m51と迫ると、8月の甲府インターハイで石山が54m05の高校新。しかし、9月に松井が54m27と更新した。さらに、1学年下の幸長慎一(現・四国大)が先輩たちを追い越す。記録の応酬が続いた。

 その後、石山はやり投で苦しみながら世代トップに返り咲き、安藤も大学タイトルを獲得している。しかし、松井は1、2年時から「なかなか2㎏に対応できない」と漏らしていた。

「何回も挫折しましたし、2年のころは気持ちが切れたときもありました」

 松井は高校時代から投てき選手としてはかなり細みだったが、「ウェイトを強くしながらも、肩の柔らかさと腕の長さを生かす投げを消さないように」と取り組んできた。いまでも177㎝・92㎏と大きくないが、その投てきセンスを磨けば十分に記録は伸ばせる。

 国士大の岡田雅次先生の考えは、「1、2年のときは土台をつくり、3、4年で成果を出す」というもの。自己ベストを更新してきた先輩たちを目の当たりにし、松井自身もそれを体現した。

 中学・高校と“ヤンチャ”だった松井に、厳しくも温かな指導をしてくれたのが瀬谷西高時代の恩師・竹澤安博先生。会場で声援を送り、「ここまでよく我慢して頑張ったと思います」と愛弟子の活躍に目を細めていた。

 松井のオールバックは竹澤先生を真似して始めた。「あんな風になりたい。ずっと憧れの人です」。会場で松井を見届けた竹澤先生の髪もまた、あの頃と変わらずピシッと決まっていた。

「中学から日本一を目指してやってきて、関東ではありますがタイトルを取れました。支えてくださった方々に結果で恩返しをしていきたい」

 現在、松井の樹立した円盤投の高校記録は歴代5番目になった。それこそ、この世代が後輩たちに強い影響を与えた証し。最強世代の一人として、これからも自分の投げを追い求めていく。

文/向永拓史

勝利を確信し、喜びを爆発させた(写真/中野英聡)

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