※写真上=予選審査のファーストコール。ここに呼ばれた選手は表彰台がグッと近くなる
写真◎トレーニングマガジン
去る2018年10月7日、第64回男子日本ボディビル選手権大会が、メルパルク大阪ホール(大阪市淀川区)にて開催された。2010年以降は国内負けなし、2016年には世界の頂点にも立った鈴木雅選手の9連覇で幕を閉じた今大会。しかしながら、トップ選手の顔ぶれにも変化があっただけでなく、大会運営についても新たな試みが見られた。かつてこのステージに立ち、表彰台にあと一歩のところへと迫りながらも、2017年シーズンを最後に一線を退いた佐藤貴規氏が、9年ぶりに客席から見た同大会を振り返る。後編では、印象に残った選手をピックアップしたい。
決勝進出者の12名は、私が抜けた1枠に小松慎吾選手が入る形で、そのほか11名の顔ぶれは昨年と一緒でした。トップの牙城を崩す難しさを、改めて感じます。
優勝は鈴木雅選手。これで9連覇となりました。
今年は例年に比べて元気がなく、コンディションが万全ではないように感じましたが、それでもほかの選手に比べて筋量があり、バランスもよかったです。ポージングの技術、ステージングとトータルパッケージでは、他の追随を許さなかったと思います。地力が勝った結果といえるでしょう。
フリーポーズには、今回もこだわりを感じました。ここ数年にはない曲調でしたが、彼のキャラ的には、アップテンポのほうが合っている気がしています。
2位は横川尚隆選手で、初の表彰台となりました。
昨年、大幅なバルクアップを果たした横川選手ですが、さらにひと回りサイズアップし、それでいてメリハリも損なうことなく、とてもよかったです。非常に細いウエストから、上には広背筋が広がり、下へは大腿四頭筋が今大会随一の外側の膨らみを表現していました。
筋量でいうと、鈴木雅選手と五分五分で、見る場所によっては横川選手のほうがいい部分もあったように思います。
見ていてコンディションのよさが伝わってきたのが、5位の合戸孝二選手です。
ご本人いわく「(ポーズの取り方は)特段変えていない」とのことでしたが、今回はリラックスポーズでのVシェイプが際立っていました。バックダブルバイセプスも印象深かったですね。厚みがあり、細かなストリエーションも走っていました。
昨年の日本選手権後に行われたアマチュアオリンピア(香港)で、4位を獲得されたときの映像を見ましたが、その姿ともダブり、合戸選手本来の鬼気迫る仕上がりだったと思います。
前回の11位から大幅に順位を上げてきた、6位の木澤大祐選手は、今年一番のサプライズでした。とてもよかったです。
特筆すべきはポージングで、確実に修正されていました。ポージングを軽んじている選手は少なからずいると思いますが、筋肉をつけるほどではないにしろ、ポージングの習得にもやはり時間はかかります。そして、ポーズで体をよりよく見せることは、決して簡単ではありません。
それでも、「筋肉がデカければ結果はついてくる」わけではなく、ポージング(見せ方)も重要であることは、今回の結果が物語っているのではないでしょうか。
7位の加藤直之選手も、昨年の12位から順位を上げてきました。前回大会の前から体調を崩してしまい、今回もシーズンを通して満足のいくトレーニングができてはいなかったようです。
そんな彼にとって「本当の勝負は来年」とのことですが、今年も加藤選手の魅力である、筋肉の丸みや張り感が十分にあり、ピーキングもよかったです。バランスに優れており、よくまとまっている印象を受けました。
また、11位の山口裕選手も、今年は非常にサイズ感を感じました。昨年はケガで思うようにトレーニングができなかったようですが、今年はケガなくしっかりトレーニングができたとのことでした。その充実度が体にも表れていたのではないかと思います。
2回にわたって日本選手権について振り返ってきましたが、日本選手権は国内最高峰のボディビル大会であり、ステージに立つ誰もが国内トップクラスの選手たちです。そして、このステージに立つため、選手たちは日々想像を絶する努力をしていることを、最後にお伝えしておきたいと思います。関係各所の方々にはぜひ、愛情をもって選手を扱っていただきたいと願っています。
なお、『トレーニングマガジン』本誌では、決勝進出の12選手について詳細に述べています。また、決勝進出を逃してしまったものの、今後の活躍に期待したい選手についても触れました。ぜひ、そちらもご覧ください。
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