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2019-01-09

元ファイナリストが見た 日本ボディビル選手権(前編)

※写真上=鈴木雅選手が連勝記録を「9」に伸ばした
写真◎トレーニングマガジン

 去る2018年10月7日、第64回男子日本ボディビル選手権大会が、メルパルク大阪ホール(大阪市淀川区)にて開催された。2010年以降は国内負けなし、2016年には世界の頂点にも立った鈴木雅選手の9連覇で幕を閉じた今大会。しかしながら、トップ選手の顔ぶれにも変化があっただけでなく、大会運営についても新たな試みが見られた。かつてこのステージに立ち、表彰台にあと一歩のところへと迫りながらも、2017年シーズンを最後に一線を退いた佐藤貴規氏が、9年ぶりに客席から見た同大会を振り返る。

久々の“観る”立場は選手のときより緊張

 日本選手権を客観的に見るという経験は、実に9年ぶりとなりましたが、ボディビルファンの一人として純粋に楽しませてもらいました。
 ただ、自分が(大会に)出場するとき以上に緊張しました。というのも、出場選手にとって大会当日というのは、いわば受験生の合格発表みたいなものです。ステージに立つまでにやるべきことはやり切って、結果は審査員に委ねることになるため、「あとは野となれ山となれ」状態で気持ち的にスッキリしています。
 けれども観る側は、誰がどんなコンディションで出てくるか、わかりません。その点で、得も言われぬドキドキ感がありました。

今大会で見られた「変化」

今年の日本選手権では、いくつかの「変化」が見られました。

■予選審査での比較回数

 1次、そして2次ピックアップ審査を通過した12選手の順位をつけるために行われる予選審査。順位が近いと思われる選手を呼んで比較していくのですが、その回数が、昨年はわずか4回でしたが、今年は倍以上の9回でした。特に上位陣は、少しずつ選手を入れ替えながら、繰り返し比較されていました。
 充実した審査で観ている側も満足できましたし、選手にとっても納得のいくものだったのではないかと思います。

■カラーリング

 かつてはカラーリングやオイルの使用が認められていましたが、大会会場を汚してしまう、あるいはそれを防止する養生の大変さから、2010年以降は禁止となっていました。それが今年度から、公益社団法人日本ボディビル・フィットネス連盟(以下、JBBF)の主催大会において、JBBF指定のものに限り、カラー剤の使用が可能となりました。
 肌が白く「日本一日焼けの才能がない」ことを自称する私としても、日焼けには非常に多くの時間と労力、そして費用を費やしてきました。そのことを思うと、今回のカラー使用解禁で多くの負担が減り、より身体づくりに専念できる環境ができたと思います。
 タンニング(日焼け)に多くの時間を割くのが難しい選手、あるいは色白や肌の弱い選手には、朗報だったのではないでしょうか。
 ただ、カラー剤を使用した選手は肌のツヤがよくなり、質感は高まって見えるものの、地肌が白いとカラー剤がうまくのらない部分があったように思います。日に焼けた肌色というよりは、若干オレンジがかって見えるため、明らかに「塗ったんだな」という色味でした。その点に関しては今後、改善や対策が必要になると思います。

■舞台演出

 決勝審査のフリーポーズでは、これまでも、選手が登場する際にシルエットを映し出すスクリーンを配置したり、ジェットスモーク(CO2)を噴射したりする、あるいは神殿のような柱を配置するといった演出がなされてきました。しかしながらピックアップや予選審査では基本、上方に大会名の書かれた看板が吊るされるのみで、背景は黒い幕でした。
 それが今年は、紺地に大きな満月の描かれたものとレンガ調、2パターンの背景幕が用意されました。またその両サイドには、大会名やスポンサー名の入った垂れ幕が下がっていました。少しでも華やかなステージにしようという意気込みが感じられました。
 近年、トレーニングに励む方やコンテストに挑戦する方は増えてきており、そのような方々が「この舞台に立ちたい」と憧れる演出は大切だと思います。
 ただ、日本選手権でも使用された茶色いレンガ調の背景幕は、タンニングやカラーリングを行った選手たちの体と同系色であるため、アウトラインをぼやけさせ、見栄えを損なう懸念があるのではないかと感じました。こちらも来年以降どうしていくのか、気になるところです。

☆後編では、佐藤氏の印象に残った選手をピックアップしてご紹介いただきます。

さとう・たかのり◎22歳でボディビルデビュー。国内外の大会で活躍し、トップビルダーの一角を担った。2017年を最後に第一線を退くことを表明。株式会社THINKフィットネスに勤務し、プロテインやサプリメントの開発を担当している。

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