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2020-10-23

青山敏弘と考えるサッカーのポジショニング[前編]

2015年にJリーグ最優秀選手賞(MVP)を受賞したサンフレッチェ広島の青山敏弘



相手をあざむく目線

――戦術の中で自分がどう活きるのか、チームとしてどのように点をとるのか、そこからの逆算でいいポジショニングが生まれるのですね。

青山 サンフレッチェはワンタッチ縛りの練習が多いのですが、その中でリターンは禁止です。そうなると、3人目の選手にパスを出さなければいけないですし、3人目の選手は受けるポジションをとっておかなければいけません。その3人目のポジショニングを予測して、自分のポジションをとることが大事なんです。ボールホルダーと3人目のポジショニングを見て、自分のポジショニング、受ける角度、体の向きを決めていくというイメージです。

 例えば、センターバックからサイドバックに展開するときに、リターンなしの場合はサイドバックからセンターバックにボールが戻ることはありません。ボランチである僕か、同サイドのハーフなどが受けにいかなければいけません。そうなると、サイドバックにボールが渡ってから動くのではなく、センターバックがボールを出した時点で動き出さないといけないわけです。ボールの移動中に僕が3人目や4人目の動きと位置をパッと見て、どこで受けて縦パスを入れるのかを考えなければいけません。それを毎日のように練習の中で積み重ねてきました。意識だけでできるのではなく、やはり練習で体に染み込ませないといけません。

――首を振るのは、自分にパスが来る前のボールが移動しているタイミングになるのですね。

青山 はい。そこで周りの状況を把握して、ワンタッチで正確にパスできるようにしますが、そうする意図はもう一つあります。このタイミングで首を振って周りの状況を把握しておくと、頭の中で先のことをある程度予測することができて、僕のマーク、3人目や4人目についているマークをあざむけるんです。

 先ほどの例で言うと、サイドバックからパスを受けるときはサイドバックのほうを見ておきます。ボールの軌道をしっかりと見てボールを受けたり、パスを出したりするだけでなく、そこであざむくことができるんです。目線と体はサイドバックに向いているのに、パスは3人目や4人目に出るわけです。逆に3人目や4人目を見ながら蹴ると、相手に簡単に予測されて、インターセプトされたり、パスが通ってもそこでつぶされたりしてしまいます。先に見て、相手をあざむかなければいけません。自分のところでボールを滞らせないようにすること、連動性を生み出すことを意識しています。(後編に続く)

プロフィール
1986年2月22日生まれ、岡山県出身。岡山県作陽高校から2004年にサンフレッチェ広島入り。ボランチとして、12年、13年、15年とJリーグ優勝に貢献した。15年にはJリーグ最優秀選手賞(MVP)を受賞。11年、日本代表に初めて招集され、14年のブラジル・ワールドカップに出場。今年はクラブ生え抜きとして17年目のシーズンを戦っている。174cm、73kg

取材・構成/安藤隆人

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