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2020-11-13

【BBMカードコラム #2020-25 BBM Baseball cards Premium 2020「GENESIS/ジェネシス」】僕が上を見たとき、彼は下を見ていた。

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BBMカードの編集担当が自ら手がけたアイテムに込めた思いをお伝えする連載企画。今回は担当とデザイナーの熱い思いが詰まった「ジェネシス」です。


高橋由伸の伝説級ジャージー


BBMのメモラに初めてスーパーパッチ版が登場したのは、2005年のタッチ・ザ・ゲームだった。昔からのカードファンならご存じの、ジェネシスの前身にあたる高級版シリーズだが、そのラインアップは和田毅、江尻慎太郎、西岡剛、平野恵一、福盛和男、川上憲伸、青木宣親、小久保裕紀、藤川球児、新井貴浩、クルーンの11種。今年のジェネシスでは、スーパーパッチ版は全56種で合計303枚だから、当時とは隔世の感がある。

ジェネシスは2012年の初登場以来、常に進化を続けてきた。新型コロナウイルスの影響で10月発売となった2020年版も、カード内容はグレードアップさせたつもりだ。

企画の立ち上げは、6月中旬のこと。新型コロナによる緊急事態宣言も解除され、世の中も徐々に平穏を取り戻しつつあった時期だったのを思い出すが、ジェネシスを担当するグラフィックデザイナーのAさんと久々に会って、話をする機会を設けたのだ。

今年発売されたシャイニングヴィーナスジャイアンツカードなどでもお世話になっていたので、それらの反省をしながら、話題は自然とジェネシスに移っていった。

「ジェネシスについては、今年が勝負だと思っています」

いきなり、こう切り出された。話を促すと、「今年は、レギュラーにこだわっていきたいんです。構想もすでに固まっていて、かなりカッコいい仕上がりになると思いますよ」と、力強い言葉が続いた。「今年が勝負」という気持ちは、こちらも同じだった。昨年までのカード構成にマンネリを感じ始めていたので、何か新しい起爆剤が欲しいと、いくつかのアイデアを考えていたのだ。

そこで、前からあたためていた村上宗隆の直筆サイン入りジャージーのブックレットカードの構想を話してみたが、あまりピンときていない様子。ならばと、高橋由伸のスーパーパッチカードを30周年企画で制作するアイデアをぶつけると、さすがにこちらは響いたようだった。

これまでBBMは数々のメモラビリアカードを制作してきた。初めて制作されたのは、1997年のダイヤモンドヒーローズに封入された松井秀喜のジャージーカード。当時は本当に幻のような出現率で、カードファンにとっては、まさに夢のお宝カードだったと聞いている。

その翌年に、同じダイヤモンドヒーローズで制作されたのが、高橋由伸のジャージーカードだ。その年、巨人に入団したスーパールーキーは、カード業界にも一大センセーションを巻き起こしていた。そのジャージーカードということで、当時から注目度は抜群。今でも伝説の1枚として語り継がれているほどで、そのジャージーを使って、スーパーパッチカードを制作する。これはBBM30周年にふさわしい、インパクトのあるカードになるという確信があった。

BBMがこれまでに使用したメモラビリア素材は、新潟支社で今も大切に保管されている。30周年カードとジェネシスで使用するために、今年3月に支社を訪れ、すべての素材をチェックしてきた。その際、高橋由伸のジャージーを発見したときは、当時のフィーバーを知らない自分でも、ある種の感動を抑えられなかったほどだ。

実物を手にしてみて、素材感が今のユニフォームとはまったく違うことに、まず驚いた。最近のジャージーは素材も進化していて、非常に軽く、着ても動きやすそうなのだが、当時の素材は生地が厚く、布そのものという感じで、まさに「ジャージー」というにふさわしい手触りなのだ。

刺繍部分も胸番号の「24」の部分がしっかりと残されていた。最近のユニフォームのパッチ部分は昇華プリントになっているチームも多いが、こちらも重厚感のある作り。このコラムでは特別に、今回のジェネシスで再使用する前の実物ジャージーの写真も公開させていただきたい。素材感まで伝わるといいのだが、いかがだろうか。




レギュラーにも注目してほしい


BBM30周年のジェネシスでは、高橋由伸の他にも、松坂大輔、川﨑宗則、立浪和義、田中将大らレジェンドや現役スター選手たちの豪華なスーパーパッチカードを制作している。それ以外にも、直筆ボールサインカードや佐々木朗希と奥川恭伸の直書きクロスサインメモラ、さらに村上宗隆の直筆サイン入りジャージーで制作したブックレットカードなど、高級版シリーズにふさわしく、注目カードは盛りだくさんだ。

でも、ちょっと待ってほしい。確かに、スーパーパッチやボールサインがジェネシスの頂点であることに異論はない。ELITE OF NINEに代表されるハイグレードインサートも、昨年のコラムで書かせていただいたが、愛着を持って制作させてもらっている。それでも今年は、カードの基本である、レギュラーカードにも注目してほしいのだ。

7月下旬から本格的にジェネシスの制作が始まり、Aさんから見せてもらったレギュラーのデザイン案は、素晴らしいものだった。

背景は黒をベースにして、そこに光線のような数本のラインが走る。しかも、そのうちのいくつかは、球団を想起させるカラーだ。選手の足元には、スモークをたいたような霞が立ち込める。さらに、そのスモークを破るサーチライトのように、金箔が放射状に伸びていく。この箔のデザインは、箔の表面に施された直線的なエンボス柄をサンプルで見て、形を決めたという。

デザインに見とれながら、あの打ち合わせでの自信に満ちた言葉を思い出した。

スーパーパッチカードとレギュラーカードを比べてみれば、ジェネシスのカードにおけるヒエラルキーでは、両極と言っていいだろう。ともに「勝負の年にしたい」という出発点は同じでも、自分はコアなコレクター目線で上ばかり見ていたが、Aさんは自らの足元をしっかりと見つめ直していたのだ。

どちらが正しいということではないだろう。頂点のスーパーパッチカードがなければ商品としての訴求力は落ちるだろうし、土台で支えるレギュラーカードがなければアイテムとして成り立たない。スポーツカードの魅力とは、いったい何なのか? その答えは人それぞれだろうが、個人的には、一つの方向性を示してもらえたという気がしている。

先日、ジェネシスを買っていただいたお客さんからお手紙が届いた。送り主を確認してみると、この方は、確か昨年も手紙を頂戴していたはず。覚えていたのは、その住所が、自分の生まれた故郷の田舎町のすぐ近くだったからだ。

確か、去年の手紙は1ボックスでブックレットカードを引き当てた喜びの報告だったはず……と思い出しながら封筒を開けてみると、やはり同じ方だった。手紙によると、同じく1ボックスを開封した今年は、通常のジャージーカードが出たとのこと。ボールサインをねらっていたらしく、ちょっと残念そうではあったが、それでも、レギュラーカードの出来が素晴らしくて、とても満足しているという。

カードファンの皆さんにも、今年のレギュラーカードの良さは、しっかりと伝わっていたようだ。次にAさんに会ったときは、この手紙の内容を報告してあげよう。


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