BBMカードの編集担当が自ら手がけたアイテムに込めた思いをお伝えする連載企画。今回はみなさんお待ちかねの「2ndバージョン」です。その隠されたテーマとは?
当時は存在しなかった、夢のようなカード!
今年はBBMカード30周年。その歴史の中でも、一つのエポックメーキングとなったのが1999年だった。
この年、「平成の怪物」と呼ばれ、前年の夏の甲子園を沸かせた横浜高の松坂大輔がドラフト1位で西武入り。セ・リーグにも巨人に上原浩治が入団し、2人のシーズンでの大活躍が起爆剤となって、彼らのルーキーカードが収録された「1999BBMベースボールカード」は空前のヒットになったと聞いている。
かつてプライスガイドを掲載していた『スポーツカード・マガジン』で松坂のルーキーカードのプライスを見てみると、2016年5月号の時点で2000円。今回、2ndバージョンのバイバックサインでは、そのルーキーカードにも直筆サインを記入してもらっている。当時は存在しなかったルーキー直筆サインが、21年の時を経て、ついに実現したということで、当時からのカードファンにとって夢のようなカードになったのではないだろうか。
2ndバージョン恒例の始球式カードは、「始球式ヒストリー」と題して、90年代から昨年まで30年間の名シーンをカード化している。新型コロナの影響で開幕が延期され、しばらくは始球式も行われなかったことからの策だったが、90年代からは飯島直子さんと広末涼子さん、00年代は安藤美姫さんと福田沙紀さん、そして10年代は吉川晃司さんや松井珠理奈さんなど、13人にご登場していただいた。個人的には、かつて一世風靡セピアのメンバーだった柳葉敏郎さんと哀川翔さんを2人そろって収録できたことが、なかなか意義深いことだと思ったりもする。
今回、始球式ヒストリーを制作にするにあたり、過去の始球式を調べていると、興味深いことに気が付いた。現在では女性芸能人の始球式が話題を集め、始球式カードでも特に人気になっているが、そのブームのきっかけになったのは、どうやら92年に巨人の開幕戦で始球式に登板した宮沢りえさんのようなのだ。
当時、国民的アイドルの登板は大反響を呼び、巨人はこの年から毎年、開幕戦で積極的に女性芸能人を起用するようになる。93年は中山美穂さん、94年は西田ひかるさん、95年は内田有紀さん、96年には今回カードにもご協力いただいた飯島直子さん、97年は安室奈美恵さん、98年は吉川ひなのさん、99年は水野真紀さんと続いていく。
この流れが他球団にも波及するようになり、西武では94年に吉永小百合さん、96年には渡辺美里さんが開幕戦に登場していた。そして、これがさらに他球団にも広まっていき、現在まで続いていると思われるのである。
また、今回はこれまで始球式カードでは実現しなかったオールスターや日本シリーズの始球式もカード化している。現在ではオールスターの始球式は少年野球チームの選手が務めることが慣例になっているが、かつては芸能人が登板していた。調べてみると、その最後に登板したのが、97年オールスター第2戦の広末涼子さんだったのである。一方、日本シリーズの始球式は現在も芸能人が多く起用されており、2018年に登板した吉川晃司さんの雄姿はまだ記憶に新しい。
もちろん、始球式カード自体もパワーアップしている。今回からレギュラーとパラレル版で表面のデザインを変えているのに加え、直筆サイン版にもよりレアなシルバー版を加えてみたが、いかがだっただろうか。
ハイエンドなインサート「Phantom」は、すでに12球団のチームパックや30周年カードなどで封入されているので、カードファンはご存じのはず。99年のダイヤモンドヒーローズで制作されたインサート「Above average/Pitcher perfect」の読者プレゼント版で人気に火が付いた花火柄。その花火柄を30周年ということで、満を持して5年目の「Phantom」に投入したのだ。
ラインアップも12球団の人気選手に加えて、インサートとしては珍しい監督やコーチをラインアップ。昔懐かしい現役時代の写真を使用し、往年の姿を復活させた。その人選も、30周年カードとは変えてあるので、よりコレクションをお楽しみいただけるのではないかと思う。
テーマは「ヒストリー」
今年の2ndバージョンの3本柱とも言える「バイバックサイン」、「始球式カード」、「Phantom 」。もうすでにお気づきの方はいると思うが、この3つを貫いているテーマは「ヒストリー」なのだ。
小さいころから歴史が好きだった。大学でも日本史を専攻したほどで、古い資料や文献を探すことは苦にならず、そこからいろいろな考察をして、現在に発展させていくことは比較的得意。それは意外にカード作りにも活かされていて、BBM20周年カードの企画や復刻メモラビリアカードのアイデアに始まり、2013年から担当したBBMクラシックではバイバックサインや復刻インサートも実現することができた。今年の30周年カードでも、全体のカード構成の組み立てから、OBと現役のコンボメモラの企画、インサートの仕様、バイバックサインなど、楽しくお手伝いさせてもらった。
そして今、BBMカード30年の歴史を振り返るにあたり、91年にゼロから立ち上げた諸先輩方の苦労と、現在に至るまでの積み重ねの大切さを強く感じている。
自分たちが作ったカードも、いつか復刻インサートとして再び脚光を浴びたり、バイバックサインとして採用されることがあるかもしれない――。そんな未来に思いをはせ、歴史に関われる喜びにひたりながら、今このコラムを書いている。
雑誌や本であれば、読み終わったらいつか捨てられる運命が待っているに違いない。ウェブの記事に至っては、ページを閉じられたら、そこで終わりだろう。しかし、カードならば、形として後世に残すことができるはず。そして、その積み重ねが歴史になっていくのではないか。
「令和の怪物」、佐々木朗希のバイバックサインカードを、20年後、30年後に実現してもらえることを想像してみる。それが、今回のウルトラシークレット版だったならば――。今の自分にとって、これほどやりがいのある仕事はないと思うのだ。
バイバック直筆サインカード 松坂大輔(西)99BBM No.413
No.421 佐々木朗希(ロ)ウルトラシークレット版
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