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2020-12-07

【BBMカードコラム #2020-26 BBMルーキーエディションプレミアム2020】原石を見つける楽しみ

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BBMカードの編集担当が自ら手がけたアイテムに込めた思いをお伝えする連載企画。今回は原石を見つける楽しみがある「BBMルーキーエディションプレミアム2020」です。


今年の高卒ルーキーは逸材ぞろい


「語り継がれる伝説が、いま始まる。」

このキャッチコピーを考えたとき、まっさきに想起したのは、ロッテ・佐々木朗希の底知れぬ潜在能力だった。今シーズンは一軍帯同で英才教育を施され、二軍戦でも登板はなかったが、最速163キロを誇る「令和の怪物」の大物感は、まったく実戦で投げなかったことで逆に、いやまさった感すらある。

人気面でその佐々木と双璧をなしたヤクルト・奥川恭伸は、一軍デビュー戦でこそプロの壁に跳ね返されたものの、ファームでは7試合に19回2/3を投げ、18奪三振の防御率1.83をマーク。フェニックスリーグの阪神戦でも6回を1安打無失点と好投し、高津臣吾監督から来春キャンプでの一軍帯同を示唆されるなど、来季の飛躍が期待されている。


今年の高卒ルーキーで、この2人以上の結果を残したのが、オリックス・宮城大弥だろう。ウエスタン・リーグで6勝を挙げ、最多勝を獲得した左腕は、11月6日の日本ハム戦で5回7奪三振、3失点の力投でプロ初勝利をマーク。この1年間で最速は153キロまで伸び、新たな決め球となるフォークもマスターした。

宮城が初勝利を挙げた試合で決勝タイムリーを放ったのが、紅林弘太郎だ。春のキャンプで小谷野栄一コーチに素質を絶賛されたドラフト2位ルーキーは、高卒新人ながら二軍で遊撃のレギュラーに定着。ウエスタン・リーグ3位の68安打を放った打撃センスは、将来のクリーンアップ候補と高く評価されている。

ドラフト2位の高卒野手ということでは、阪神・井上広大と楽天・黒川史陽も見逃せない。ウエスタン戦で四番に起用された井上はリーグ2位タイの9本塁打を放って、和製大砲としての片鱗を見せ、浅村栄斗から「19歳には思えない。芯が通っている」と評価された黒川は、イースタン・リーグ6位の打率.297をマーク。2人とも一軍戦でプロ初安打を放っており、近い将来、紅林を含めたトリオが、チームを代表するスラッガーに成長している姿は容易に想像できる。

ドラフト下位で要チェックは、中日5位の岡林勇希と、ヤクルト6位の武岡龍世。岡林は入団時こそ同期入団の石川昂弥の陰に隠れた存在だったが、ウエスタン・リーグ3位の打率.285をマーク。一軍でも7月30日の広島戦に石川とともに安打を記録。同じチームの高卒新人2人によるダブル安打は、リーグ60年ぶりの快挙だった。

イースタン・リーグ2位の72試合に出場するなど、1年目から貴重な実戦経験を積んだ武岡は、一軍でも将来性を感じさせた。8月12日の巨人戦で菅野智之からプロ初安打を放つと、10月31日の同カードでも菅野と田口麗斗からプロ初のマルチ安打。一軍で記録した3安打のうち2本が内野安打で1本はバットを折られてのポテン安打だったが、強く振り切る姿勢が結果につながった。「打席での意思、何とかしてやろうという気持ちが伝わってくる」と、高津監督も19歳の若武者の躍動に目を細めていた。


そして、伝説が始まった。


高卒新人の名前をつらつらと並べてみたのには、わけがある。カードファンの多くは、佐々木、奥川、石川ら人気の高いドラフト1位ルーキーたちに熱い視線を送っているのだろうが、他の新人たちにももっと注目してほしいのだ。

あれは、2000年のことだ。当時は、まだ週刊ベースボールの近鉄担当をしていて、日向市のお倉が浜球場で行われていた秋季キャンプを取材で訪れた。誰の取材だったのかはまったく覚えていないのだが、今でも鮮烈に印象に残っていることがある。練習を見学していると、球団広報に声をかけられたのだ。

「ちょっと、ブルペンに行こうよ。すごいボールを投げるピッチャーがいるから」

ブルペンはメイングラウンドの左奥、うっそうとした松林の手前にあった。覗いてみると、担当ながらこれまで見たことのない、細身の投手がマウンドにいた。しなるような腕の振りから投じられたボールは、素晴らしい伸びで、甲高い捕球音が心地よく耳に響いた。一軍主力クラスの投手は秋季キャンプには参加しておらず、若手投手しかいないはず。しかし、これまでにこのブルペンで見てきた大塚晶文や高村祐といった当時の近鉄を代表した剛腕の投げる速球とそん色ないのだ。むしろ、伸びに関して言えば、上かもしれない。隣にいた広報(もちろん元プロ野球選手)に、「誰ですか?あのピッチャー」と尋ねると、「岩隈っていうんだけど、まだ二軍でも投げていないから知らないやろ。でも、すごいボールでしょ。腕の振りにしても、ちょっとモノが違うわ」と興奮気味に答えが返ってきた。正直、腕の振りに関しては素人にはよく分からなかったのだが、投げているボールの素晴らしさは強烈な印象を残した。

もう、お分かりだろう。その投手は、プロ1年目の岩隈久志だったのだ。東京の堀越高からドラフト5位で入団した岩隈は、甲子園出場経験もなかった。しかも、ドラフト1位が宮本大輔、2位が高木康成と、ともに注目の高卒投手だったこともあり、二軍でも登板しなかった細身の右腕が、それまで報道されたことはほとんどなかった。

そんなノーマークだったルーキーが、目の覚めるようなストレートを投げている。衝撃を受け、2001年のシーズンの開幕直後には、藤井寺球場で注目二軍選手を紹介する企画でインタビューをさせてもらったほどだ。その時点でも、一軍デビューはもう少し先だろうと予想していた。しかし、20歳のホープはチームが優勝争いを演じていた夏場以降にすい星のように現れ、プロ初完封を含む4勝をマークしたのである。

いまでこそ岩隈と言えば、コントロール抜群で安定感があり、総合力の高い投手というイメージが定着しているが、デビュー当時は、とにかく速球が素晴らしい本格派だったのだ。その後の活躍は、皆さんもご存じの通り。近鉄最後のエースに成長し、楽天では20勝を挙げ、MVPに。MLBのマリナーズでは、日本人投手史上2人目のノーヒットノーランも達成した。岩隈のようなケースは、そんなに多くはないだろう。それでも、今年ブレークした巨人・戸郷翔征の例もあるように、ドラフト下位からでも一気に飛躍する選手は確かにいる。

今回のルーキープレミアムでも、ドラフト1位以外に、彼らのような逸材が潜んでいる可能性は十分にあるのだ。そんな原石を自分の目で探し、見つけ出し、大切にコレクションにしていく。そういう楽しみ方も、このアイテムはできるはずだ。

皆さんも、語り継ぎたくなるような伝説をぜひ体感してください。

M_sasaki
直筆サインカード 直書き版 佐々木朗希(ロ)

直筆サインカード 直書き版 奥川恭伸(ヤ)
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