
投手のプロ入りが続いている九州産業大。遠投により腕を強く振れるフォームをつくるとともに、大きく進化するための土台となる体づくりをウエートトレーニングで行っている。そして、その先にあるのが自身のピッチングスタイルの構築だ。
「打者を攻める基本は早く追い込むこと。投手有利なカウントをつくって、自分が最も得意なボールで勝負するように指導しています。そのための1球目、2球目、3球目の組み立てを考えれば、追い込むまでのパターンが見つかるはずです。それが自分のピッチングスタイル。それを確立することが第一歩で、対戦する打者やチーム、状況によって柔軟に対応するのは応用としてできてくるものだと思います」
11年ドラフト4位で日本ハムに入団した榎下陽大は、鹿児島工高時代の球速は130㌔後半。それでも甲子園ベスト8まで進めたのは、高い制球力と投球術を擁していたからだ。そして大久保監督が投手のスカウティングで重視する「スピンの利いたボール」も申し分がなかった。そこに九産大で本格的にウエートトレーニングに取り組んだことで球速はコンスタントに140㌔超え。最速で150㌔超えもマークした。
「榎下はフォームにクセはありましたが、そこを指摘したことはありません。フォームを変えたのではなく、速いボールが投げられる体をつくったのです」

九産大ー日本ハムと進み、2017年限りで現役生活を終えた榎下陽大の鹿児島工高時代の投球フォーム
大久保監督がフォームについて細かく言わないのは、他者とは共有できないそれぞれの感覚があるから。腕を強く振るための形も選手それぞれで、それを探すのが投手の大事な練習だと考えている。だから日々の練習にキャッチボール、遠投、30㍍投、ブルペン投球を欠かさない。
最後に大久保監督の言葉に耳を傾ける。
「指導者目線ではフォームが良くなったことに満足しがちです。その末に打者との対戦で結果が残せなくなり、戦力として考えなくなることもよくあることです。そうしたことは打者を抑えるという投手の本質において本末転倒だと思いますので、私は選手の特徴を奪うようなフォームの修正は行いません。故障のリスクがある動作についても、そうさせないようにフィジカルを整える、鍛えることだと考えています」
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