7月14日、富士通スタジアム川崎であった、オービックシーガルズとアサヒビールシルバースターの合同練習。活気あふれるフィールドの片隅で、その男は黙々とリハビリに取り組んでいた。シルバースターのWR林雄太。この場で会えると思っていなかっただけに、その姿を見て心の底からホッとした。
リハビリの合間に笑顔を見せるシルバースターWR林雄太。「こんなに早くここへ戻って来れるとは思わなかった」。右のすねには手術の痕が残る=2019年7月14日、富士通スタジアム川崎で 撮影:小座野容斉
5月19日、林は重傷を負った。右足すねの開放性骨折。骨が折れて、皮膚を破って飛び出してしまう大怪我だ。試合はオービックとのパールボウルトーナメント1次リーグ戦。開始直後のシルバースターのオフェンスでその負傷は起きた。
倒れた林は「うがああ」とうなり声をあげていた。どんなに厳しい状況下でも、ひょうひょうとして笑顔を絶やさないタフな男が、フィールドに響くような声を上げていた。林の右足首が、膝とは違う方角を向いていた。容易ならない事態が起きているとわかった。
QB安藤和馬が右にロールするスクランブルで、林はブロッカーとしてプレー、複数の選手が右足に倒れ込んだ。筆者は、サイドラインを移動中でそのプレーを直接は見ていない。近くで見ていたリーグ関係者は「ボンというような破裂音のような大きな音がした」と話す。
「人生で最大の激痛」に耐えながら、台車で運び出される林=2019年5月19日、富士通スタジアム川崎で 撮影:小座野容斉
間もなく、スタンドのすぐ下に救急車が到着し、林は運ばれていった。負傷はつきもののスポーツとは言え、滅多に起きることのない大怪我。場合によっては選手生命が終わる可能性もある。その後がどうなったのか、気になっていた。7月14日、川崎に出向いた理由の一つは、林のその後について、情報を得られないかと考えたからだった。
林はシルバースターのオフェンスの柱だ。186センチ98キロと、日本人には少ない大型のレシーバーでありながら、スピードに溢れ球際に強い。日本大学時代からその存在は有名で、U-19世界選手権日本代表に選出、4年前の世界選手権(米オハイオ州)でも日本代表として活躍、米国との初戦ではタッチダウン(TD)パスもキャッチした。
今春の初戦、クレーンズとの一戦で、TDを決め笑顔を見せる林(83)=2019年5月5日、富士通スタジアム川崎で 撮影:小座野容斉
林は「こんなに早く、フィールドに戻って来られるとは思わなかった」と話す。もともと、感情を表に出すタイプではない林が、負傷の直後は、苦痛に満ちた絶叫を上げていた。「アメフットだけでなく、人生の中で最大の激痛だった」という。
シルバースターの藤縄大樹ゼネラルマネージャー(GM)によると、負傷後の処置がよく、細菌感染などがなかったため、早期に骨をつなぐ手術ができたという。体が大きく、体力のある林は、術後の回復も通常の人よりも早く、この日は松葉づえなどなしに歩行していた。
今年、29歳になる林は「医師から、(全力で)走れるようになるには1年くらいかかると言われた。今季プレーができずに、来シーズンの復帰ということになると30歳。正直にいえば、現役を続行するかどうか迷った部分もあった」という。
ただチームが復帰を待つという姿勢を明確にしたのに加え、(対戦相手だった)シーガルズのWR木下典明や、DT清家拓也から『大丈夫か』とメッセージを貰ったという。「特にノリさんからは『怪我をした選手は強くなって戻ってくる』という言葉をかけられて。怪我をしている時にしか見えない世界を見て、1年後違う自分になれる」と思い、選手生活を続けることを決めた。
Xリーグでは、富士通で活躍したRBジーノ・ゴードンも開放性骨折を経験した。林が入院した病院で、たまたま会った富士通WRの宜本潤平からは「ジーノも痛そうだったけれど、プレーを何とかやっていたよ」と励まされたことも、現役続行へのモチベーションになった。
選手だけではない。この日は、シーガルズの古庄直樹HCも、林がフィールドに来てリハビリをしていることを聞くと、近寄っていろいろと言葉を交わして励ましていた。
「フットボールはファミリー」。
そんなことを実感した。
シルバースターの有馬隼人HCは「林の回復力は凄い。歩けるようになるまでが早かった。体だけでなく、気持ちも強い男です」と話す。今季から始まる新リーグ初年度では、下位のX1エリアでのスタートとなったシルバースターだが、トップリーグのX1スーパーで戦い、名門の復権を果たすためには、林の活躍が欠かせない。味方も、敵も、ファンも、不死鳥の復活を待っている。【写真/文:小座野容斉】
自チームだけでなく、ライバルチームの選手からの励ましが、復帰を後押ししたという=2019年7月14日、富士通スタジアム川崎で 撮影:小座野容斉
黙々と地道なリハビリを続ける林 =2019年7月14日、富士通スタジアム川崎で 撮影:小座野容斉
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