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2021-03-31

「練習のレベルを上げた中で、 起用する選手を見極める」今年4人のJリーガーを生み出した昌平高校の藤島崇之監督インタビューPart1

ポジション決定とコーチング
成功する選手起用と選手を傷つけないコーチングを考える

全国屈指の強豪校の一つとなった埼玉県の昌平高校。選手育成でも成果を挙げており、2020年度の3年生から4人がJリーガーとなっている。育成に定評のある昌平では、どのような考えで選手起用が行なわれているのか? 藤島崇之監督に話を聞いた。

取材・構成/川端暁彦


藤島崇之(ふじしま・たかゆき)
昌平高校監督
1980年4月12日生まれ、千葉県出身。現役時代は、習志野高校で玉田圭司(現在はV・ファーレン長崎)らとともに全国高校サッカー選手権大会(以下、選手権)に出場した。2007年の創部と同時に昌平高校の監督に就任。高い技術をベースとした選手に考えさせるサッカーでチームを成長させ、14年度に選手権初出場を果たした。16年度と18年度のインターハイでベスト4、19年度、20年度の選手権でともにベスト8入りを果たした。



――チームビルディングについて、「昌平高校はこうしている」という話を聞かせてください。

「メンバーを固定したいという考えは基本的にまったくありません。競争心を持ちながらやってほしいですし、そうしているつもりです。ただ、その一方で、トレーニングレベルを一定の水準に上げると、そこに届く選手がどうしても限定されてきます。そのため、メンバーが自然と固まってくる部分はあります」

――2019年度の時点で、今年1月の選手権を戦った20年度のチーム構想がある程度できていたことと思います。

「19年度のチームでは、当時2年生だった選手が最終的に先発で4人出ていました。ですから、20年度のチームはその4人が中心になるということがある程度想定できました。その上で、どうやってチームパフォーマンスを上げていくかの話になります。選手の組み合わせがいろいろとありますし、チームとしての考え方もいろいろとあるわけです。チームによっては、フォワードには大きい選手を置きたい、サイドには速い選手を入れたいなどと考えるでしょうが、私はサイズのところはあまり気にしません。ただし、チームパフォーマンスを最大化するための組み合わせについては気にします。逆に、ほかの皆さんがどうやっているのかを知りたいですね(笑)」


今年1月の選手権での京都橘戦でセンターバックとして出場の唐木

――コンバートについても、前年度から考えるのでしょうか?

「20年度のチームで言うと、(2年生からレギュラーだった)小見洋太がフォワードにいたので、フォワードだった唐木晃(3年)をセンターバックにコンバートしてはどうかというアイディアが19年度の途中から出てきました。次のチーム構想に当てはめて考えていく中で、選手の新しい可能性を探るということはやります。小澤亮太(3年)というサイドバックもコンバート組です。元々はボランチでしたが、サイドバックへの転向がハマって、先発するようになりました」

――昌平はサイドバックにボランチ経験者を置くことが少なくありません。

「それが先ほど言った、チームによる部分ですよね。ウチのサイドバックはボランチをできるような選手が多いのですが、もっと大外からクロスを上げ切る選手やスピードで勝負できる選手を求めるチームもあると思います。ウチのサイドバックの話で言うと、シーズンの最初は左右の配置が逆でした。両方とも右利きの選手なので、どちらがよりやりやすいのかを試しながら、いまのバランスに落ち着いた感じです」


ボランチからサイドバックにコンバートされた小澤亮太②

――ずっとフォワードだった選手をディフェンスに回すと、本人としては抵抗感があるかもしれません。
 
「そうかもしれませんが、ウチのいまの選手たちは受け入れて前向きにやってくれます。良い意味でのこだわりのなさというか、やっぱり試合に出たいという目標があるからこそだと思いますし、選手たちは冷静に考えて受け止めてくれます。私自身も現役時代にいろいろなポジションを経験しましたが、それはサッカー選手としてプラスになることだと思います」

――大会で想定される相手を意識して先発を入れ替えるといったことはありますか?

「基本的には、相手どうこうというよりは、自分たちベースで考えていると思います。相手を見て判断を変える場合はありますが、人を入れ替えて対応することは基本的にはありません。監督によっては先発メンバーを毎回変える方がいますが、私にその勇気はありません」

――選手の「納得感」みたいな部分を尊重しているところはありますか?

「トレーニングレベルを一定の高さに設定しているので、パフォーマンスのレベルが上がって、自分が納得する練習ができるようになれば、試合出場のチャンスが自然に出てくるということはあると思います。試合よりもチームでの練習のほうが自分の思うようにいかないことが多いんです。対峙する相手はクセも弱点も知っていますから」


今年、昌平高から鹿島に入団した須藤直輝

――先ほど見たトレーニングが実際にそうでした。

「鹿島アントラーズ入りが内定している須藤直輝でさえ、ボールをほとんど持てないですし、得意のカットインもさせてもらえません。練習よりも試合のほうがずっと楽だと思います」

――非常に狭いフィールドで「11対11」(動画)を行なっていましたが、その中でも「やれる選手」でなければいけないということだと理解しました。そして、「やれる選手」がスタメンになっていくわけですね。

「トレーニングレベルを引き上げることで成長できますし、そういう環境が大事だというのが基本的な考え方です。選手の表情やそこでどれだけアクションを起こせるかといった部分を見るようにしています。良いプレーをしている選手を見るのもありますが、“そういう判断をするのか”といったところも見ています」

Training動画1
狭いフィールドでの11対11(動画)

進め方:スモールフィールドでゴールを設置し、GKを含めた「11対11」を行う。
ポイント:昌平高校におけるトレーニングレベルを引き上げるメニュー。選手起用の肝にもなっている

Part2に続く

※サッカークリニック2021年2月号掲載

写真◎BBM

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