close

2021-04-04

【女子ボクシング】クリーンな戦いに終始。長井が樽井退けV1

迫る樽井(左)を長井が左で迎える

全ての画像を見る
 4日、大阪・堺市産業振興センターで行われた日本アトム級タイトルマッチ6回戦は、王者・長井香織(31歳=真正)が、“小兵”樽井捺月(29歳=山木)に59対55、59対55、57対57の2-0判定で勝利。初防衛に成功した。

 前日計量でリミットの46.2kgだった長井に対し、挑戦者4位の樽井は1.9kgアンダーの44.3kg。これまでのキャリア(12戦4勝6敗2分)でも、樽井は技巧に優れながら体力勝負で潰される傾向があり、そこがひとつのポイントでもあった。

 ともにほとんど手を出さなかった初回から3回。身長で約10cm上回る長井が、樽井を中に入れなかったというよりも、挑戦者が敢えて入らなかったように見えた。近距離で、フィジカルを生かされて消耗させられるのを避けるためだ。長い間合いは、一見王者有利と思えるものの、樽井の外す技術が生き、手数で若干上回る長井は、明白なヒットを奪えず。数少ない樽井のブローは、上下に散らされ、浅くだが長井を捉えていた。スッと入り込みながら打ち込む右クロス、左フック、2回に決めた、死角から放つ右アッパーカットは、その後も何度も長井を驚かせた。

 ジャブ、右ストレート主体の長井にエンジンがかかりだしたのは4回。5回には樽井の入り際にそれらストレート系を当てて、明白にポイントを奪ったが、最終回は、ステップインを加速させた樽井が、右クロス、左フックを決めていき、こちらもはっきりと優位なラウンドを築いた。

樽井(左)の技術も光ったが、いかんせんアグレッシブさに欠けた
樽井(左)の技術も光ったが、いかんせんアグレッシブさに欠けた

 しかし、全体的に両者とも手数が少なかった。序盤の樽井の戦い方は、消極的とみなされ、若干パンチ数が上回った長井にポイントが流れたのだろう。長井の手数の合間に奪った樽井のヒットは、印象面で相殺されてしまったようだ。V1の長井の戦績は11戦6勝(2KO)2敗3分。

昨年7月に獲得した王座を守った長井
昨年7月に獲得した王座を守った長井

 長井は体格の優位を生かした戦いにシフトすることも考えたかった。樽井は仕掛けがあまりにも遅かった。2分6ラウンドは、あっという間に終わってしまう。より早い段階での決断が必要となる。

“俊才”山中が2勝目/総合からボクシングへ。赤林檎が豪快デビュー

山中の左がクリーンヒット

山中の左がクリーンヒット

 前座では、“異色”のふたりが躍動した。元WBO世界ミニマム級チャンピオン山中竜也さん(25歳)を兄に持つ菫(すみれ、19歳=真正)は、拓殖大学ボクシング部出身でこの日がプロデビュー戦となる山田夏冴(なつき、24歳=セレス)と2戦目(アトム級4回戦)。サウスポー同士の戦いは、ハイレベルな攻防に終始した。テンポよく、素早いイン&アウトから左ストレート、右フックで迫る山中を、長身の山田が打ち下ろしの左ストレートで迎え撃つ展開。能力が高く、クリーンヒットを奪い合えない中、山中が、多彩なフェイントを駆使しながら、こじ開けていった。最終4回、山田が左カウンターをヒットして山中を一瞬棒立ちにさせたが、そのまま試合終了。39対37、40対36、38対38の2ー0で山中が勝利した。ともにバランス感覚に優れているので、今後が楽しみだ。
兄に続き、世界チャンピオンを目指す山中。その可能性は極めて高い
兄に続き、世界チャンピオンを目指す山中。その可能性は極めて高い

勝利の瞬間、雄たけびを上げる赤林檎。今後が楽しみな逸材だ
勝利の瞬間、雄たけびを上げる赤林檎。今後が楽しみな逸材だ

 また、総合格闘技『DEEP』から転身してきた赤林檎(本名:中井麻美、26歳=真正)が、同じくこの日がデビューとなる柳尾美佳(26歳=花形)を、3回59秒TKO(スーパーバンタム級4回戦)。骨格のしっかりした体を生かし、上体を倒しながら突き込むように放つ左ジャブ、右強打が異才を放つ。右はナチュラルなカウンターのタイミングを持ち、これで柳尾を腰砕けにし、左をフォローしたところでレフェリーストップとなった。戦い慣れた闘争心も、実に魅力的だ。

写真_福地和男

タグ:

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事