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2021-04-09

【ボクシング】小原佳太、薄氷のV1。坂井の技巧に大苦戦

後半、小原の右ボディストレートがジャッジの心証を捉えた

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 日本ウェルター級タイトルマッチ10回戦が8日、後楽園ホールで行われ、王者の小原佳太(34歳=三迫)が苦しみながら挑戦者で同級4位の坂井祥紀(30歳=横浜光)を3-0(三者とも96対94)の判定勝ちで下し、初防衛に成功した。

文=杉園昌之 写真=小河原友信

 薄氷を踏む思いの勝利でチャンピオンベルトを守った小原は、リング上でホッとしたような表情を浮かべた。
「正直、勝って安心しています。坂井選手はうまくて、なかなかペースを取れずにこういう流れになってしまいました」

 序盤から苦しい内容となる。戦前に想定していたのは、インファイトの勝負。フタを開けてみれば、相手は強引に前へ出てこなかった。中間距離から飛んできた左ジャブを当てられ、ショートの右フックまでもらった。見栄えは決してよくない。

「予想外でペースを取りづらかったです」

 それでも、ポイントを手繰り寄せたのはチャンピオンである。的確にボディストレートを左脇腹にヒットさせたことが奏功した。5回終了後の途中採点は2-1で小原を支持。本人は「負けているかと思いました」と首をかしげたものの、後半も冷静に作戦を遂行。執拗に右ボディストレートを放ち、結果的にジャッジの心をつかんだ。
 ただ、本意ではない試合運びに苦い顔だった。

「自分自身にがっかりしている」
 小原が見据える先は世界である。IBFウェルター級5位にランクされており、世界王座挑戦者決定戦なども経験している。プロ29戦目の34歳。1年2ヵ月ぶりのリングで試合から遠ざかっていたことについては言い訳せず、国内での想定外の苦戦に反省しきりだった。

この日の坂井は、左ジャブが突出していた。小原のそれに打ち勝つこと再三だった
この日の坂井は、左ジャブが突出していた。小原のそれに打ち勝つこと再三だった

 一方、坂井は「ウェルター級では日本で一番強い」と認める王者をぎりぎりまで追い詰めながら、あとひと押しが足りずに微妙な判定に泣いた。鋭い左ジャブを当て、回転の早い右フックまでつなげたが、致命打となる一発がなかったのは惜しい。一度でもダウンを奪っていれば、結果は変わっていた。メキシコ、アメリカでプロキャリアを重ね、日本でリスタートしてまだ3戦目である。ひょうひょうとした表情でリングを降りたが、目には悔しさがにじんでいた。いま脂が乗っている30歳。はい上がるチャンスは、きっとあるはずだ。

国内デビューの保坂も福井の距離感に苦闘

保坂(右)は序盤、左ストレートで福井を何度も脅かしたのだが……
保坂(右)は序盤、左ストレートで福井を何度も脅かしたのだが……

文=本間 暁 写真=小河原友信

 東福岡高校時代、インターハイ・ライト級優勝。世界ユース選手権でも3位の実績を持つ保坂剛(24歳=三迫)は、フィリピンでプロデビューして4勝3KO無敗。国内所属に変えての初戦(60.0kg契約8回戦)を迎えたが、2018年西日本スーパーフェザー級新人王の福井貫太(27歳=寝屋川石田)に独特の距離感をキープされて苦戦。78対74、77対75、75対77の2-1判定勝利となった。

 初回、サウスポースタイルの保坂が、目と踏み出す足でボディにフェイントを入れながら、ツーステップからの左ストレートを炸裂すると、この一撃で福井の右目上がザックリと切れた。
 そのまま保坂が攻撃の圧を増して攻めていくが、ラウンドが進むごとに福井がそのパターンを掌握。連打の少ない保坂を、距離をキープしながらのカウンターで迎撃。特に入り際の右アッパーカットが良くヒットした。

福井(左)は独特の“間”から、右アッパーで保坂を迎え撃った
福井(左)は独特の“間”から、右アッパーで保坂を迎え撃った

 保坂は前後のステップで相手の攻撃をかわす能力に長けているが、いかんせん正面からの攻撃がワンパターン。一方の福井は、独特の間合いが冴えた。早い段階で見事に止血してみせたセコンドのファインプレーも評価したい。

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