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2021-04-18

【ボクシング】煮え切らないけど強い。アンドレイドが大差判定でタイトル守る

アンドレイドの強烈な右フックがヒット。しかし、倒しきれなかった(Photo:Ed Mulholland/Michelle Farsi/Matchroom)

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  WBO世界ミドル級チャンピオンのデメトリアス・アンドレイド(アメリカ)が4月17日(日本時間18日)、アメリカ・フロリダ州ハリウッドで同級2位の指名挑戦者リアム・ウィリアムス(イギリス)に判定勝ちを収め、4度目の防衛に成功した。

先制のダウンを奪うもいつものように仕留めきれず

 技巧派サウスポーの王者が、順当な王座防衛を果たした。元トップアマからプロで世界2階級制覇。その才能を見せつける出だしのよさと、徐々にペースが落ちて安全策に徹する展開も、いつものとおり。熱望し続ける“ビッグマッチ”の実現に明るい兆しが見えたかといえば、そうではない。

 昨年10月に予定していたスーパーミドル級のノンタイトル戦がキャンセルとなったため15か月ぶりの実戦だったアンドレイドだが、滑り出しから巧さが光った。愚直なファイター、ウィリアムスが闘志満々で前に出ると、アンドレイドは待ってましたとばかりにスピーディーなコンビネーションで迎え撃った。左ストレートで挑戦者のガードを破り、横に動いて死角から右アッパーを突き上げる。2回には左ストレート一発でダウンを奪った。しかし、チャンピオンの見せ場としてはそれがピークだった。

 総合格闘家のような頑丈な体躯をもつ“暴れん坊”ウィリアムスの粘りに遭い、4回に左フック、9回には右ストレートで脅かされた。防御技術の高さで知られるアンドレイドは、危険回避に全力を注いだ。ウィリアムスの強振を左右のステップとクリンチワークで封じ、あいだに右アッパーや左ストレートを差し込んでアピール。フルラウンドを乗り切り、116対111、118対109、118対109とジャッジ三者の支持を得た。

 指名試合をクリアしたアンドレイドは、これで30戦30勝18KO。「ウィリアムスはタフで勇敢な相手だったが、私は勝つために必要なことを実行した。チャンピオンとして、無敗のまま、この日を終えることができた。私はいつだって、これらの肩書を賭けて戦う気がある」、リング上でアンドレイドは、ビッグファイトが欲しいのだと訴える。2007年世界選手権ウェルター級優勝、北京オリンピック同級ベスト8からプロになって13年目。そのハイスペックを人気に繋げられないままここまできた。スーパーウェルター級時代にWBO、WBAのタイトルを獲得。2018年には大手興行主マッチルームと契約し、WBOミドル級王座を世界王座に就いたが、 いまだ、統一戦やビッグネームとのカードは決まらない。
ビッグマッチを求めるアンドレイドだが、「マッチメイクが難しい」とハーン(Photo:Ed Mulholland/Michelle Farsi/Matchroom)
ビッグマッチを求めるアンドレイドだが、「マッチメイクが難しい」とハーン(Photo:Ed Mulholland/Michelle Farsi/Matchroom)

プロモーターのハーンが「ゴロフキン対村田を12月に計画」と発言!

 それはこの無敗サウスポーが難攻不落の慎重スタイルの持ち主であることが最大の原因なのだろう。マッチルームを率いるエディ・ハーンは「契約選手で彼ほどマッチメイクが難しい選手はいない」とメディアに語っている。アンドレイドはスーパーミドル級、ミドル級の双方を視野に、世界4階級制覇者サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)をはじめWBC世界ミドル級王者ジャモール・チャーロ(アメリカ)、現IBF世界同級王者ゲンナディ・“GGG”・ゴロフキン(カザフスタン)、らの名を挙げて、対戦を求めている。よほどプロモートが難しいのだろう。

 リング上のインタビューでハーンは勢いこんなことまで口にした。「ゴロフキンは12月31日にムラタ(WBA世界同級王者の村田諒太=帝拳=)と戦う計画を立てている。まだ4月だ、ゴロフキンは“夏にアンドレイドと戦って、それから村田と日本で戦う”と言えばいいじゃないか」。

 現在、アルバレスを中心に動いている世界の中量級のトップシーン。誰もがビッグビジネスに絡みたい。アンドレイドがそこに分け入るには、肩書以上の決め手が必要だ。

文◎宮田有理子 Text by Yuriko Miyata

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