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2021-05-10

【ボクシング】カネロ・アルバレスがサンダースを撃破。スーパーミドル級3団体を統一

サンダース(左)の首をねじ切るように、アルバレスの右が強烈にヒットする(Getty Images)

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 WBAスーパー、WBC世界スーパーミドル級チャンピオンのサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)が、5月8日(日本時間9日)、アメリカ・テキサス州アーリントンのAT&TスタジアムでWBO同級チャンピオンのビリー・ジョー・サンダース(イギリス)を8回終了TKOに下した。右目付近の負傷で視界難を訴えるサンダースの陣営が棄権を申し出たもの。“カネロ”はこれで、この階級の3団体王座統一に成功した。

 主催者発表の観衆7万3126名。コロナ禍後のアメリカで行われた最大規模のスポーツイベントは、同国屋内会場におけるボクシング観客動員最高記録を打ち立てた。従来の記録が1978年にニューオーリンズのスーパードームで行われた世界ヘビー級タイトルマッチ、モハメド・アリ対レオン・スピンクス再戦での6万3352名だから、1万人近い大幅更新である。

 その大多数がカネロのサポーターであることは、はっきりと色分けされた声援とブーイングに明らかだった。

 2018年9月にゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)との再戦に勝って世界3団体統一ミドル級王者となり、ストリーミングサービスDAZNとの超巨額契約で“スーパースター”の座を手に入れたカネロ。目下の目標は、スーパーミドル級での世界4団体統一である。ラテン系として未踏の偉業にまた一歩近づくべく、今回、WBO王座を持つサンダースと対峙する。今年2月、萎縮しきったWBC指名挑戦者アブニ・イルディリム(トルコ)を3回KOに粉砕した前戦のような、イージーファイトにならないことは予想できた。

 小柄でも頑丈な体躯を持ち、作戦遂行能力に長けたカネロは現在最強の万能ファイター。だが、過去にスピードあるアウトボクサーを苦手とする傾向のあった。機動力ある曲者サウスポー、サンダースは厄介な相手だったはず。「思ったほど難しい試合にはならなかった」と試合後に語ったカネロだが、中盤、リズムに乗りきれずに苛立っているようにも見えた。

 コロナ禍の混乱がなければ1年前に計画されていたカード。「カネロには欠点がない」と謙虚にコメントしていたサンダースは、現地入りをしてから、「リングのサイズが小さい」と主張して“ヒール”役が確定。このクレームで自分自身を追い込んだWBOチャンピオンは、そのせいもあってか、動きが硬かった。脚を使うのか中間距離で対応するのか決まらない様子のサンダースに、カネロは力強い左ボディブロー、右ストレート、右アッパーでプレッシャーをかけていく。

 しかし、5回にサンダースがフットワークに乗せたコンビネーションとクリンチで攪乱しにかかった。対抗心むき出しに、力づくの攻めになりかけたカネロだが、8回の中盤、流れを一転させる。細かく手を出していたサンダースに右フックをクリーンヒット。正確な上下コンビネーションをまとめ上げる。左ボディブロー、左フック、右アッパー。凄まじい歓声にかき消されたゴングでラウンドが終わった時、サンダースの右目下は黒く腫れていた。

「まず、彼がこの試合を受けてくれたことに感謝している。1ラウンドずつ獲っていって、6、7回にペースを上げるつもりでいた。8回の後、彼がコーナーから出てこないと思った。拳の感覚で彼の頬骨が折れたことがわかったから」。笑顔を見せたアルバレスは、これで59戦56勝(38KO)1敗2分。初黒星のサンダースは31戦30勝(14KO)1敗。マッチルームのエディ・ハーン・プロモーターは、サンダースの状況について「彼は視界難に陥っていた」と話した。「いいボクシングをしていたのに。カネロは時間をかけて、最後はひねりつぶしたね」

 試合後、会見が行われ、チームカネロとともにハーン氏が檀上にあがった。マッチルームとカネロとの契約は今回の試合でひとまず終了、だが、「今後もカネロといい関係を続けていけたら」とハーン氏は言う。4団体統一を目指すカネロにとって残るターゲットは、IBF同級王座を持つカレブ・プラント(アメリカ)のみ。プラントは、PBC(プレミアムボクシング・チャンピオン)の傘下にいるが、ハーン・プロモーターは「カネロはフリーエージェント。特定のテレビ・放送プラットフォームを持たない状況だ。プラントとの試合を決めるにあたって、何の障壁もない」と語った。 

 今年9月のメキシコ独立記念日の週末が最有力候補だという。

文◎宮田有理子 Text by Yuriko Miyata

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