妙義龍(反則)照ノ富士全勝の照ノ富士を2差で追う遠藤、貴景勝が白星を挙げ、照ノ富士が土俵に上がった。対戦相手は妙義龍。過去の対戦成績は照ノ富士が12勝3敗と圧倒している。妙義龍が差してくるだけに、照ノ富士としては取りやすいのだろう。
立ち合い、当たってすぐに左を差した妙義龍。右も入ってモロ差しの体勢になったが、照ノ富士はすぐに左から抱えて小手投げ。粘る相手の頭を押さえつけて転がした。危なげなく全勝を守ったかに見えたが、物言いがついて協議。
スローで見ると、頭を押さえつけているだけでなく、マゲを引っ張っているようにも見える。照ノ富士の師匠である伊勢ケ濱審判長(元横綱旭富士)は苦渋の表情で、「照ノ富士がマゲをつかんで引っ張っており、反則とし妙義龍の勝ちといたします」と説明した。妙義龍は投げられた直後、つきそうな左手を引っ込めて粘ったことで5勝目。懸賞金14本も獲得した。
憮然とした表情で花道を引き揚げる照ノ富士。リモート取材を受けずに国技館をあとにした。勝った妙義龍はインタビュールームにも呼ばれ、うれし恥ずかしといったところ。
「頭を押さえつけられたのか、マゲをつかまれたのかはわからなかったです。負けた相撲だったんで……。いつもの負けるパターンだったので、もう少し考えていかないといけないなと(勝ち残りの)土俵下で思っていました。イメージはハズで押していこうと思っていたので、あまり差したくなかったんです」と振り返った。
これで優勝争いが面白くなってきた。しかも、明日12日目は照ノ富士が阿武咲と対戦する。照ノ富士にとっては髙安と並ぶ苦手力士で、過去の対戦は照ノ富士の1勝4敗。照ノ富士は勝っていた相撲を負けにされて、心中穏やかではないだろう。相撲は勝っていたと開き直ることが必要だ。
その差が1つになったことを受け、リモート取材に臨んだ貴景勝は、「とにかく一日一番に集中してやるしかないので、集中してやるだけです。一生懸命、やりたいと思います」と普段と同様のコメント。しかし、自力優勝の可能性が出てきて、俄然気合が入るだろう。2人の対戦は番付順に当てるならば、14日目に組まれる。
文=山口亜土